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詩の通販、ハジメマシタ。―文学フリマを終えて—
12月になりました。今月で2019年も終わってしまうのかと思うといろいろと思うところがありますね。ただ、この「2019年」のしめくくりにふさわしいものはできたように思います。
文学フリマ東京
先週のいまごろは「文学フリマ」に出店していました。
僕は詩のサロン「26時」という、簡単に言えば詩の同人サークルを運営しています。「文学フリマ」には何度も出店してはいるのですが、ここ数年は「物」を作ることはしていなかったので、本当に何年ぶりかの出店になりました。しかし、僕たちのために北は東北、南は九州からはるばるかけつけてくださったお客様もいらっしゃり、盛況のうちに終わることができました。
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久しぶりに出店しようとなったのは、noteやTwitterでの「詩」の活動で作品を発表することはありましたが、やはりネット空間で活動していれば、それはそれで思うところがあり、「物質」も必要だよねっていう話になりました。もともと「本」という「物質」が好きな僕がネットだけで我慢できるわけもなく。そこで、もう一人の同人コンノダイチと夜の代々木公園を歩きながら何をしようか話しました。
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連詩集「壁ノ画」ができるまで
かねてから「連詩」というものは二人で何度もやっていたことはありました。「連詩」とは、数人が順番に詩を書いていくものです。「連歌」の「詩」版だと思っていただければ結構です。お互いに、次にどんな詩が返ってくるのかを楽しみにしながら書いていくのでスリルがあります。なので、これまでも毎回毎回、興奮と驚きの連続でしたが、今回はお互いの作品を全力で読み、全力で書き、「連詩」とはいえ、一篇一篇を独立した「詩」としても読めるくらいに仕上げたものをまとめよう、という話になりました。
「26時」という活動をはじめてから何年も経ち、自分たちで言うのもなんですが、それなりに「力」はついてきたと思っています。ですから、いまの自分たちの「力」を、冊子にしてまとめてみようということではじまったのが今回作った「壁ノ画」という作品です。
7月の暑いころから書きはじめて、僕が一月ほどとめてしまったところもあるのですが、だいたい10月中旬ごろまで、ほぼ一週間に一度、作品を送り合いながら、毎週毎週頭を抱えながら書いていきましたら、全部で14篇の詩が集まり、なんと90ページをこえる大作になっていました。そして最後に、タイトルをつけようとなってコンノと二人で呪文のように言葉をつぶやきながら、ああでもないこうでもない……とたくさんの候補をあげていきました。
なかでも、今回の作品は古代エジプトの「死者の書」なども登場し、さらにはコンノダイチが書いた詩が壁画の模様のようであり、そもそも、僕の一篇目は家に飾ってある一枚の絵から発想されたものでしたので、最初に出てきたイメージが「壁画」でした。ただ、「壁画」では味気ない……といって、またもいろいろとあげていき、「カベノエ」と読みかえる案がでてきました。そして、つらつらとメモをしていたときに、「壁ノ画」の「ノ」、これ、僕の家に飾ってある一枚の絵と同じ模様だ……ということで、「壁ノ画」というタイトルになりました。
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そこからは、表紙のデザインを決めたり、題字は手書き……となったり、ここも相当な時間がかかりましたが、11月の頭にはなんとか完成しました。完成してみると、数々の引用と、2019年におきた事件や災害……などが無数に散りばめられ、一週間ごとに書いたというスピード感はもちろんありますが、この「2019年」を刻み込んだような出来になりました。そこから、古代エジプトの神話の世界と結びつくという壮大なスケールで、日常とリンクしていきます。生と死、再生や復活、複数を生きること、さまざまなモチーフが繰り返しあらわれていきます。「連詩」という扱いではありますが、一冊の「詩集」を読むような満足感があります。
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「壁ノ画」のご感想
お読みくださった方々からも、ご好評いただいております。
星屑の微瑕
— ほしかげ (@hoshi_kage) November 26, 2019
壁ノ画の序章たる力強い言葉で読者を壁ノ画の中へ、そして終章へ向けて突き動かす。ここから読者は宇宙の旅へと入り込む。読者は今から始まる世界を見過ごしてはならない。壁ノ画が、読者が、終章へと行き着くのはすでに必然なのだ。と思わせる素敵な詩でした。
「壁ノ画」
— ヤドリギ (@yadorigimtuketa) November 27, 2019
どんでもないものに出会ってしまった。どの詩も胸が苦しい。言葉にできない感情でちっそくしてしまいそう。私の心に言葉のハギビスが訪れたようだ。#読書好きと繋がりたい #全読 pic.twitter.com/jKW8vlIAH1
生と死
— Emma (@iamLeeEmma) November 25, 2019
愛と叫
誕生と喪失
幻想と現実
壁の破裂、そして、氾濫
命への祈りの讃歌
読後、そんなことを思いました。
使われる様々なモチーフが徐々に増え、終わりに向かってきちんと収縮していくお二人の連詩、素晴らしかったです!
素敵な作品をありがとうございました!
ご苦労様でした!
表紙、背表紙、一冊全てが作品
— 星詠 (@toko_asagiri) November 28, 2019
文字が生き物のようだ。と、思った
這うように、踊るように、歌うように…自由に生きている。文字を生かす、操るとはこういうことかと歯噛みする程に、圧倒的なものを見せつける
手にした時の感動は、読み終わってからも続いていて、いつの間にか数回繰り返し読んでいた
壁ノ画は、魅せるだけでも、研ぎ澄まされただけでもない
— 星詠 (@toko_asagiri) November 28, 2019
読み手に時間を忘れるほどの娯楽なんだ。現に、読みはじめてから何時間たったかわからない。感動を伝える言葉が見当たらないほどに、洗練された言葉たちが、悔しくもあり羨ましくもあり、大事にしたいと愛しくなった
一品頼んだらまさかのサービスでコースにしてくれた級の気前の良さ(本当にデザートが入っているよ…)(かわいい🍫✨)
— ハルナフリ (@harnafri) November 29, 2019
26時さん(@kikan_26)、たくさんありがとうございます! pic.twitter.com/U7uCvSM334
ただ『壁ノ画』『言葉の檻〜』装丁が想像以上にきれいで、やたら角度を変えて灯りにかざしたりカバー外したりして楽しんでいました。
— ハルナフリ (@harnafri) November 29, 2019
そして気付く、これが26時のファッショナブル戦法かっ👔🎃
#壁ノ画
— モルヒネ昼寝 (@6bBo5xg94knm0mv) December 8, 2019
終章まで読み終え、書を閉じる
裏表紙に漂う余韻!
そうか、この連詩はまだ終わっていないのだ
他ならぬ僕らが、この先を続けていかねばならないのだ
もう一度、表紙を見てみる
佐々木氏の手による「壁ノ画」の題字が、「生きろ」と語っているかのようだ https://t.co/QkYS1Sf6Zb
26時が物語った、生命という名の旅の詩
— モルヒネ昼寝 (@6bBo5xg94knm0mv) December 8, 2019
それは僕らが、生きるを続ける限り、生きるを繋ぐ限り、終わりはしないのだと
そして共に生きようと、共に詩を紡ぐ旅を続けていこうと、26時の二人は僕らに伝えようとしたのではないかと
一読してそんな印象を持ちました。
#壁ノ画 読了。
— MATTARI-NEKO@Roaming sheep昆布ver (@MATTARINEKOkob1) December 10, 2019
この言い方が正しいのかは分からないが「心地良い焦燥感」と、一頁一頁を咀嚼しろという「内なる諌言」の狭間で読み進めて行った。物書く者の在り方の一端、陳腐の謗り覚悟で言えば言の葉は無限に世界を表せると改めて知る。
そして夜空のサモエドに全部持ってかれた。
#26時 連詩集『壁ノ画』読了。
— 矢口れんと (@a_y_town) December 11, 2019
唐突に飛び出して迫り来る言葉の文様に胸を射抜かれる。と思ったら、優しく手を差し伸べてくる。緊張と緩和を繰り返す度に、胸の内から幾重もの「あたたかさ」が湧き上がってきた。
凄い。オススメ度マックス!#詩 #詩集 #壁ノ画 pic.twitter.com/VZGaIAVXgQ
僭越ながらお気に入り詩の感想m(__)m
— 矢口れんと (@a_y_town) December 11, 2019
コンノダイチさん( @D_8823_drive )
「檸檬樹」
業報輪廻のアンチテーゼにも嫌気が差した魂たち。離人感さえも見放されて。しかしそんな憤怒と悲哀も、ただ心地よいリズムの内へ、救いのように還っていく。
僭越ながらお気に入り詩の感想m(__)m
— 矢口れんと (@a_y_town) December 11, 2019
佐々木蒼馬さん( @ssk_aoma )
「ハギビスの夜」
我々は分断されてしまったのだろうか? 非常事態に両義的な姿を現す人と人。龍の到来に祭り騒ぐディオニューソス的人々。迎えたものは、守ったものは、そして……
ありがたいお言葉の数々……。まだまだ感想は受け付けておりますので、ぜひ感想をお知らせくださるとうれしいです!
詩のサロン 26時 公式オンラインストア.
さて、「文学フリマ」は終わってしまいましたが、現在は通販サイトBASEにて「壁ノ画」を販売しております。いまならフリーペーパーや短歌や短詩が書いてあるかわいいチョコレートが特典としてついてきます。
他にも、noteで連載した「言葉の檻のなかで吼えている獣 中島敦の詩的遍歴」というエッセイも大幅に加筆訂正をし、「山月記」論も付け加えた中島敦論の本も作りました!こちらも多くの方に買っていただけました。
「壁ノ画」に出てくるコンノダイチの詩も、なんとTシャツになりました!
早速届きました。本はじっくり読みたかったので、ひとまず着ています。#26時 #文フリ pic.twitter.com/XqsdWFRsKv
— 矢口れんと (@a_y_town) November 28, 2019
来たぞー!\(( °ω° ))/ンパ!@kikan_26 ありがとう。
— TAKE -刺草- IRAKUSA (@Take_irakusa) November 29, 2019
ここに宣言しましょう。
壁ノ画全ての詩作品を読解します。
間緩い歩みになるでしょうが、友(勝手に言ってます)として、詩人として最高にクールな二人に言葉で恩を返して行きたいと思います。
(`ω´)グフフ
食い散らかすぜぇ!!
(大切に読むよ) pic.twitter.com/IV3EfRZc4q
帰ったら26時T届いてた!手書きメッセージも!感動! pic.twitter.com/i7Gkf3Hylz
— 片桐慶一 (@keiichikatakiri) December 1, 2019
はやくもたくさんの方に着ていただいてます。
通販をはじめてから多くのご注文をいただいております。在庫も少なくなってまいりましたので、ぜひお早めにお求めください。
最後に
いろいろと宣伝をしてきましたが、文学フリマ後には、遠方から来て下った方々や、他のサークルの方も交えて懇親会を新橋の中華料理店で行いました。はじめて顔を合わせますが、それぞれのお話が聞けてとても充実した日になりました。
noteやTwitterでの活動を本格的にはじめてだいたい一年。こうして、多くの読者に出会えたこと、あるいはまた、多くの素晴らしい作品の読者になれたことに感謝しています。まだまだ青さはたくさんありますが、「詩」のために、僕たちはまだまだ活動していこうと思います。
「詩」は、さまざまな場所で、媒体で、起こっています。僕は「詩集」という紙の本が大好きですが、そこだけで起こってくるものが「詩」ではありません。硬派なふりしてそういうさまざまなところで起こってくる「詩」を無視することは、「詩」のための活動とは言えません。
また、次の機会に向けて、いろんな企画を考えて実行していきたいと思います。もちろん、僕たちの「詩集」も作っていかなければなりません。これからも、応援やご支援、どうぞよろしくお願いいたします。
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