白雨と黄色い家。
あぁそうだった、梅雨だった。
久しぶりに、朝から本格的な雨。
半袖の腕が冷たすぎて、片付けたばかりの長袖をまたひっぱり出して着た。
今朝はみんなが家を出てひとりになったあと、ひと息ついて考えることもせず、身体を動かす。
キッチンのカウンターや棚を拭きあげ、二階の部屋から階段までの拭き掃除をした。
そのあと、先日初めて訪れてとても気に入ったコーヒー屋さんまで車を走らせる。
こんなに短いスパンで二度め、ってなかなかないかも。
今日は、新しくメニューに加わっていた夏のブレンドコーヒーと、クラシックショコラを選ぶ。
(前回食べて惚れ込んだチーズケーキと迷ったけど、こちらも好みだった。)
白雨、という名前のついたコーヒー。
爽やかな風味の中にもしっとりとした落ち着きのある味わいで、思わず、確かめるように何度も繰り返し口に運んだ。
白雨とは、夕立、明るい空から降る雨のことらしい。
私は、コーヒーを仕事として扱ってはいるけれど、美味しいコーヒーを求めて店を選ぶということはほとんどなくて、だからこそ居心地のいいお店のコーヒーが美味しいと、とても幸運な気持ちになるのです。
今日は、グループの先客も数組いたけれど、それでも不思議と落ち着いて自分の世界にいられた。
そう、昨日の夜から川上未映子さんの『黄色い家』を読んでいる。
早朝からの仕事を終えて眠かったけれど、寝る前にベッドの上で読んだあと、また朝目が覚めてそのまま少し読んで、そしてそれを持ち出してコーヒーを飲みながら一時間ほど読んで、店を出た。
『夏物語』にも通ずるような、どうしようもない絶望と悲しみ、どこまでも沈みそうな重さを持つ物語なのだけど、やはり私は、この川上さんの文章が持つ、深く濃い影とその中に差す透明な光を探してしまうような、そんな独特な空気にすっぽりのまれてしまうのです。
夕方ここまで書いていたのだけれど。
今日は雨で子どもたちの夜練も中止になった。
そして結局、さっき全部読み終えてしまった。
息するの、忘れそうだった。
私のいる世界って、日常って、一体なんなのだろう。
静かになったリビングで、余韻の中ひとり呆然としてしまうけど。
きっとまた明日になれば、当たりまえのように日々を過ごしていくのだろう。