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その『休学』ちょっと待って!~意外と知らない高校卒業要件~
ご覧いただきありがとうございます。
年末の時期、直接の問い合わせが少しだけ増えます。
全日制高校から通信制高校への転校についてが90%以上
今回のテーマは、”高校卒業要件”について
‐‐‐‐‐読み始める前に‐‐‐‐‐
「高校卒業要件」については、多くの児童・生徒、保護者から、
「もっと早い段階で正確に知りたかった」という声をいただいた内容です。
教育相談時にも色々な可能性を検討しながら話すことが多く、全てを網羅して記載することは極めて困難です。不登校が増加している現在。
今だからこそ、困っている人(特に、生徒・保護者、そして指導教員の方)の一助になればとの想いで書きます。
もし現在の困りごとで知りたい!相談してほしい!ということがあれば、お知らせください。
義務教育のように「高校に入学して卒業する」のは当たりまえのこと。
こうした考え方が一般的なので、卒業要件を知る機会は、
知らなければいけない状態が差し迫っているときくらいしかないでしょう。
そのため、現役の教員で知らない人もいます。
🔴そもそも「休学」とは
学校を休む状況が続いているときには、
「休学」するという選択肢も1つに入ってくることと思います。
あるいは、在籍している学校から提示されることもあります。
しかし、この「休学」する決断に至る前に、
「高校の進級や、卒業はどうなってしまうのか…」というような
不安や心配は出てきて当然です。
私の相談事例の経験でいうと、
直面したタイミングでないと、知る機会がないということと、
他にも考えなければならないことが多すぎて、上手く整理できない
という生徒・保護者が大多数を占めます。
不登校生の増加などがニュースで取り上げられることは多いですが、
何事も、いざ自分がその場面に直面しないとわからないものですよね。
そこで1つずつ整理しながら、話を進めていきます。
まず私が感じていることの1つは、
「休学」とはどういうことかが、あまり知られていないということです。
まず確認してほしいことは「休学」という言葉の認識です。
この認識に間違いがあると、
のちに「え?そうだったんですね…それなら別の方法を選んだのに…」
という事態が発生することもあります。
まず「休学」について整理していきましょう。
休学とは、学校に在籍する児童・生徒・学生が、病気その他の理由により、校長の許可をうけて、ある期間授業を受けない状態である。
休学は、在籍している学校長の許可が必要になります。
一般的には、その許可を得るために「休学届(願)」を申請し、
学校側に受理され、そして休学許可が下りて(「休学許可証(書)」など)
はじめて「休学」となります。
簡単にまとめると、
申請(本人) → 受理(学校) → 許可(学校長) → 休学
ですね。
つまり、「休学」というのは
在籍している学校から許可された休みの期間
と考えることができるわけです。
🔴高等学校の卒業要件(共通内容)
さて、ここから「高校の進級や、卒業はどうなるのか…」という不安や心配のために必要な知識・情報を整理していきます。
まずは高校の卒業要件に関する文言を確認しておきましょう。
高等学校の修業年限は、全日制の課程については、3年とし、定時制の課程及び通信制の課程については、3年以上とする。
校長は、生徒の高等学校の全課程の修了を認めるに当たつては、高等学校学習指導要領の定めるところにより、七十四単位以上を修得した者について行わなければならない。
簡単にまとめると
✅ 3年間(36ヵ月)以上の【在籍期間】
✅ 74以上の【単位数の修得】
が必要になるということです。これは大前提になりますので、要確認です。
🔴【休学】で注意するのは【在籍期間】
休学を申請をして学校より許可をもらい、「休学」となった時、
その期間の扱いはどうなるのかということを確認する必要があります。
一般的に、休学期間は、その高等学校に在籍している期間に含まれない。
先ほど記載した高校の卒業要件の1つの
✅ 3年間(36ヵ月)以上の【在籍期間】
と合わせて考えると、
🔴休学した段階で、高等学校3年間での卒業は延期になる可能性が高い
ということになります。
例えば、
Aさん【2024年11月段階】〇〇高校(全日制) 休学中
高校1年生:4~8月まで登校出席、9月から休学。12月1日から転校予定。
という場合、9月~11月の3ヵ月間は、現在籍校での在籍期間が認められず、
【在籍期間】今後の見通し
1年時 〇〇高校:5ヵ月(4~8月)
△△高校:4ヵ月(12~3月)在籍
2・3年時 △△高校:24ヵ月
合計:5+4+24=33ヵ月在籍(3ヵ月不足のため、卒業延期)
となるということです。
これを認識したうえで、休学という選択をするかどうか
は、非常に重要なポイントになります。
🔴【休学】は卒業だけでなく、進級も厳しい
先ほどは転学することを想定したパターンで考えましたが、
「休学」して改めて復学するということも当然1つの選択肢です。
結論から言うと
🔴休学した段階で、進級は難しく原級留置(留年)になる可能性が高い
これは高校卒業要件の2つ目
✅ 74以上の【単位数の修得】
が関わってきます。
全日制・定時制高校での単位修得の条件は概ね
✅ 全体の授業出席日数の2/3以上の出席
✅ 試験(中間・期末)のクリア
などが一般的です。ここの出席日数がハードルになるのです。
一定期間の休学は、授業出席の分母から考えても、出席日数の不足となり、複数科目の単位が不認定になる可能性が充分にあります。
こうした観点からも進級は難しいものと考えるのが妥当と言えます。
※この出席日数カウントの分母は学校によって異なります。また休学をした時点で単位不認定という学校もあるようですので、いずれにせよ、復学後の同年での進級については難しいと考えたほうがよいでしょう。
ここで一つ疑問が出てくるかもしれないのは、
先程紹介した事例について。
高校1年段階で、3ヶ月既に休学してるのに、
転校先で高2・3生になれてるのはなぜ?
これは転学先が、単位制通信制高校だからです。
※ただし各学校によってどのような扱いとするかは異なります。
一般的に単位制高校の場合、
1学年時で修得予定の科目を仮に不認定になってしまったとしても、次の学年で再履修をすることが可能です。そのため進級(次の学年に進むこと)自体は出来ていますが、不認定になってしまった科目の再履修が必要になることがあります。
※高校卒業要件シリーズは定期的に連載していこうと思いますので、別記事で紹介します(もしご要望があれば、コメントをお願いします)
🔴制度を踏まえての考え方(提案)
今までの要点をまとめると
●休学は学校側から認められた休みの期間。
●しかし、在籍期間にならないので、高校卒業は延期になる可能性が高い。
●同様に単位修得が難しくなり、復学後の進級もズレる可能性が高い。
ということになります。ですので、
●同年代の子たちと、同学年の時期に一緒に、進級・卒業をしたい!
という想いが強い場合は、
その休学、ちょっと待って!
なのです。
もちろん、休学にもメリットはあります。
休学のメリット例
●休学期間中の学費・授業料が免除対象となる(学校判断による)
●学校から許可された休み期間なので、その期間の学校との関わりはほぼ無くなる(欠席連絡等は必要なし)→安心して休むことができる
しかし、この『同学年・同時期での進級・卒業ができない』ことを
生徒・保護者の方にお話をすると、ほぼ9割近くの方が、
休学という選択をしない方向性になる傾向があります。
私から提案するのは、よほどの事由がない限りは
休学の選択はしない
です。
制度上だけの話をすれば、
欠席は、学校で行われている授業などへの出席がない状態なので、
在籍期間とは、基本的に関係ありません。
ですので、長期欠席になったとしても、
「在籍期間が不足するので、卒業延期」ということは基本的にありません。※例外はあり得ます。
【休学】は、した段階で、卒業延期がほぼ確定する可能性が高い。
【欠席】は、その期間の長さによっては、卒業延期になる可能性がある
この違いは、生徒自身にとっても、保護者にとってもかなり大きいはずです。であれば休学をすることは、現状の制度を踏まえると、リスキーでしょう。
【単位修得】とは関連しますので、長期的な欠席となると
単位不認定になるため、進級が出来ず、卒業が延期になる
ことはあり得ます。
🔴最後に
一度、とある全日制高校の若い先生方を対象に、通信制高校の現状等も含めた勉強会・研修会を行ったことがありました。
その際に、長欠生関連の対応については、
一度も経験したことのない内容が突然きて、どう道筋を立てていけばよいかわからなった。
とのことでした。
当事者の生徒・保護者にとっても同様です。
そして相談を受ける私も、100名いれば100名異なるもので、何かしら立ち止まることもあります。
※個人的に一番難しいのは「学校独自の内規」ですね。
不登校になって、もう学校へ通学するのは難しい状態だから『休学』
となってしまう程、冷静でいるのが難しいものですので、
その一歩目に対して、今回は警鐘を鳴らしました。
大事なことは、
本人も含めたご家庭にとって、いかに負担を軽減させられるか
そして、
後悔のない選択をすることができるか
です。
一緒に考えていきましょう!
‐‐‐‐‐余談‐‐‐‐‐
通信制高校への転学に来る生徒・保護者で、本当によくあるケースは、自分自身がすでに「休学」しているものと思い込んでることです。
よくよく話を聞くと、それは「長期欠席」です、というのが本当に多い。
つまりそれだけ、学校を休む=休学という言葉に引っ張られるのでしょうね。
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ここまでご覧いただき、ありがとうございました。
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