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【写真日記】飛騨国分寺の大イチョウ・母と子の祈り

先日の木曜日、飛騨国分寺に行ってきました。
境内の大イチョウが紅葉し、今その葉が散り始めている…という噂を耳にしたからです。

高山駅から徒歩5分。駅前のアーケード通りの一角に、飛騨国分寺があります。

741年(天平13年)、聖武天皇により「国分寺建立のみことのり」が発せられ、全国に国分寺と尼寺が建立されましたが、この飛騨の地にも、757年頃に行基によって建立されました。それが、この飛騨国分寺です。1200年以上の歴史を有する古刹です。

山門をくぐってみましょう。

門をくぐると、手前に鐘楼堂、左手には三重塔が見えます。

更に、鐘楼堂の奥へ進むと、目の前に大きなイチョウの木が立っていました。

この大イチョウ、樹齢は1250年以上と言われています。国の天然記念物に指定されています。

風が吹くごとに葉がハラハラと散っています。辺りは黄色い絨毯を敷いたようです。

そう、私はこのイチョウを見に来たのですよ。

根元には、落ちた葉がたっぷり積もっていました。毎日、葉を掃いて集めているそうですが、それでもこの量。

この大イチョウには、こんな伝説があります。

天平の昔、初めてここに七重の塔が建てられた時のこと、 どうしたことか、大工の棟梁が柱を間違って短く切ってしまったその時、棟梁の一人娘八重菊はいたって孝心深く、父の心配事を知り、色々考えた末、 「柱の上に枡組を作って補えば、却つて装飾になって美しいでしょ」と父に教えた。 塔は立派に完成し、その出来栄えは国中の評判となった。
そこで父の棟梁は自分の名誉を守るため八重菊を殺して境内に埋めてしまった。孝心深い八重菊は父の為に深く死を諦め 「願わくば十方の諸仏、わが亡き後永くこの寺を護って諸人を利益し、諸菩薩わが願いによって必ず女人の心願を満たされん事を」と祈って、自ら悲願の人柱となったのである。 八重菊の塚の上に一本のイチョウを植えられたが、今は根元に石の親子地蔵がまつられ古来、乳の出ない婦人が願かけをするので、「乳イチョウ」と呼ばれている。
昔から、国分寺のイチョウの葉が落ちれば雪が降る、とも言い慣らされている。
なお、国分寺のイチョウは雄(オス)の木なのでギンナンの実はできません。         【飛騨国分寺】公式サイトより抜粋

大イチョウの根元の窪みに、大小二体の地蔵さまが祀られています。これが親子地蔵です。今は柵が張り巡らされていますが、はるか昔には、若い母親が根元にひざまずき、このお地蔵さまに「乳が出ますように…」とお祈りしたのでしょう。

鐘楼堂と大イチョウ。大樹の奥にあるのが本堂です。

鐘楼堂は、昔、江戸時代に飛騨が天領直轄地となった際、高山城が取り壊されたのですが、その時、城の一部をここに移築したものだと言われています。戦国時代の風格を残す建築物です。

この鐘楼堂は、高山市指定文化財に指定されています。


こちらは本堂。室町時代に建築。国の重要文化財に指定されています。

今も現存している国分寺の中で、創立当初の建築を保存するものは一つもなく、国宝・重文の建築物を有しているのは、わずかに東大寺と讃岐、土佐、信濃、飛騨の四寺のみだそうです。(飛騨国分寺公式サイトより)

大イチョウの左奥に、三重塔が見えます。

昔、ここに国分寺が創建された天平時代には大塔があったそうですが、平安時代には五重塔が建てられていたそうです。やがて時代が過ぎて、江戸時代になってから、国分寺を再興すべく新たに建立されたのが今の三重塔です。

三重塔を近くで見てみると…。「飛騨の匠」の技術の高さに圧倒されます。

この三重塔は、岐阜県の重要文化財に指定されています。

凛として美しいです。

境内を散策していると、おや、こんなところにもイチョウの葉が…。

ちなみに、境内の一角に「悲母観世音菩薩像」が祀られてあります。

この観音様を立てたのは、中村久子さんという女性です。

明治30年(1897年)に高山市に生まれた女性で、幼少期に突発性脱疸(だっそ)」(高熱のため肉が焼け、骨が腐っていく病気)となって手足を失い、以後、過酷な人生を歩まれた方です。昭和43年(1968年)没。

彼女が書いた自伝がこちらです。

実は、実家にこの本(初版のもの)があり、私は中学生の頃にこの本を読みました。

苦労が続き心も荒んでいくなか、久子さんは親鸞聖人の教えに出会い、仏によって心が救われていきます。その様子が、まるで泥の中から美しい花を咲かせる蓮のごとく…崇高で清々しくて、読後は胸がいっぱいになりました。

そんな久子さんが、自分を生み育ててくれた母親への感謝の気持ちと、「世の中の多くの人々に生きる力を与えてほしい」という願いを込めて建てられたのが、この観音さまなのです。

山門をくぐって少し歩いて、右手にあります。

飛騨国分寺を参拝されたら、大イチョウの親子地蔵とともに、この悲母観世音菩薩像もご覧になってくださいね。

こうして境内を歩いている間も、さらさらとイチョウの葉が落ちていきます。

国分寺のイチョウ葉が全部落ちた時、高山に初雪が降る

と昔から言われています。

ですので、今も高山市民は、このイチョウの落葉具合を見て「まだ雪は大丈夫やな」とか「こりゃあ、もうすぐ降るなぁ…」と話しているんですよ。

市民から愛され続けた国分寺。

秋から冬へ。

もうすぐ飛騨路に雪が降るのでしょう。

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