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巨大物流倉庫を舞台にしたミステリー映画 『ラストマイル』

8月23日(金)公開 全国ロードショー

■あらすじ

 世界最大のショッピングサイト「DAILY FAST(デリファス)」の配送センターは、年間通して最大の繁忙期となるブラックフライデーを迎え、臨時の派遣謝意を含む大勢の従業員と出入りの配送業者でごった返していた。

 そんな中に飛び込んできたのが、デリファスの配達した商品が爆発して、死者が出たという知らせ。同様の事件が立て続けに起きたことで、センターには警察が乗り込んでくる。この危機に対処したのが、新センター長の舟渡エレナだ。彼女はセンターの配荷機能を落とすことなく、爆弾事件の解決にも対応することになる。

 セキュリティチェックが厳格な配送センターに、外部から爆弾を持ち込むことは不可能だ。しかしLCから配送された荷物が爆発していることは間違いない。SNSで配信された偽広告によって、犯人はデリファスの荷物に全部で12個の爆弾を混入させることを予告。だがこの広告を発注した人物こそ、犯人かその関係者だ。

■感想・レビュー

 タイトルの『ラストマイル』とは、物流において倉庫から客先に荷物を運び届ける最終工程のこと。注文の受付や発注手続きはITで自動化できても、商品を客の手に届ける最後の部分は自動化できず、人の手を介さざるを得ない。このラストマイルこそが、今や物流の最前線であり急所になっている。

 世界規模の超巨大ショッピングサイト「デリファス」は、どう見てもAmazonをモデルにしたとしか思えない。Amazonの荷物が現在の物流の何割を占めているのかは知らないが、都心のマンションなどでは配達員の運ぶ荷物の大半がAmazonからの商品で占められているのではないだろうか。

 この映画はそんな現代人に身近な世界を、爆弾探しのミステリーによって解剖していく。徹底的に機械化と自動化が進められた倉庫の様子を見ると、ここでは機械ができることはすべて機械まかせであることがわかる。人間は機械にできないことを、止むを得ず行っているだけだ。

 ここでは機械が人間を補助しているのではなく、機械にできないことや苦手なことを、人間が補助している。人間が機械の下位に置かれ、機械に使役されているのだ。

 こうした現代物流システムの非人間性は、映画のテーマや犯行動機に関わるものだと思う。しかし映画はそのテーマを、アクションとサスペンス、観客をイライラさせる登場人物たちの大げさな芝居でぶち壊しにしてしまった。他のドラマ作品とのコラボは余計な雑音でしかない。

 物流システムの非人間性によって、犠牲にされた人々。だがその復讐を企む人間は、無差別に爆弾を送りつけるという犯行に手を染めることで、やはり人間性を失っているのだ。

 IT化された合理的システムに飲み込まれ、そこに最適化されることで生じる人間性の欠落と心の闇。そんな現代文明批判も含めた作品だったように思うが、なんだかんだでドラマのヒューマンな落とし所を探して右往左往してしまったのは残念だ。

ユナイテッド・シネマ豊洲(1スクリーン)にて 
配給:東宝 
2024年|2時間8分|日本|カラー 
公式HP:https://last-mile-movie.jp/
IMDb:https://www.imdb.com/title/tt32253416/

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