おかずが盛り沢山のワンプレートランチ 『フォールガイ』
■あらすじ
ハリウッドの有名スターには、それぞれ専属のスタントダブルがいる。ドル箱スター、トム・ライダー専属のスタントダブルと言えば、コルト・シーバス。堅実な仕事ぶりで現場スタッフからも信頼される彼は、カメラオペレーターのジョディ・モレノの恋人でもある。
撮影も恋も順調なコルトの人生。だがそれは、ひとつの事故で暗転した。落下スタントで大ケガを負い、身も心も傷ついた彼は映画の世界から行方をくらましたのだ。
1年半後。レストランの駐車場係をしていた彼は、トムの映画のプロデューサー、ゲイル・メイヤーに呼び出される。オーストラリアで撮影しているトムの新作『メタルストーム』に、ぜひ参加して欲しいというのだ。
監督はジュディで念願のデビュー作。だがこの撮影が失敗したら、彼女はこの1本きりで業界から干されるだろう。コルトはオーストラリアへ飛ぶ。だがそこでコルトを待っていたのは、失踪した主役を探す秘密の仕事だった。
■感想・レビュー
1980年代のテレビドラマ「俺たち賞金稼ぎ!! フォール・ガイ」の映画化。しかし何しろ40年前の作品で、僕はこの原作ドラマをまったく知らなかった。あるいはどこかで見ても、忘れてしまったのかもしれない。今回の映画は予備知識なしに観た。
Wikipediaなどを見る限り、テレビ版と映画版はあまり関連性がないようにも思う。仮に映画版の続編などが作られるなら、テレビ版に寄っていくのかもしれない。先に言ってしまうと、この映画は面白かったので、続編ができてもいいと思う。
スタントマンの世界を描いた映画は何本も作られているが、この映画もそうした映画の1本だ。スタントマンの話は、必然的に映画撮影の裏側を描くバックスクリーンものになる。となればこのジャンルの古典には『雨に唄えば』(1952)があるわけで、大スターと吹き替えの裏方役者という関係性で、2本の映画はリンクしていく。
物語としては、架空のSF超大作映画『メタルストーム』の撮影メイキングがあり、それと平行して、現場から行方不明になった主演スター、トム・ライダーの捜索がある。この映画ではそこに、主人公コルト・シーバスと監督ジョディ・モレノのロマンスがからむ。
割と欲張りな内容なのだが、脚本はこのあたりを上手く捌いて、ラストの大団円までグイグイと引っ張っていく。正直、アクション映画としても、ミステリー映画としても、ロマンス映画としてもA級品とは言えない作品だと思うが、それらの要素を手際よく少しずつ2時間の尺に盛り込んだ、インスタ映えするワンプレートランチみたいな佇まい。楽しいのだ。
監督のデヴィッド・リーチは前作『ブレット・トレイン』(2022)が僕にはイマイチだったが、今回の映画はすごく良い。Wikipediaでこの監督の経歴を見ると、監督自身がスタントマン出身で、長年ブラッド・ピットのスタントダブルを務めてきたらしい。なるほどなぁ。
(原題:The Fall Guy)
TOHOシネマズ日比谷(スクリーン5)にて
配給:東宝東和
2024年|2時間7分|アメリカ|カラー|サイズ|サウンド
公式HP:https://fallguy-movie.jp/
IMDb:https://www.imdb.com/title/tt1684562/