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【読書感想文】岡田暁生・片山杜秀著『ごまかさないクラシック音楽』新潮選書

この本もまた、夫に勧められて読んだ。私は中学生までピアノと、高校生までバイオリンを習っていただけで、音楽とは対して深いかかわりを持ってこなかった人間である。あえていえば、社会人になってから、嵐に目覚め、最近では三浦大知にはまっているくらいか。それくらい音楽には疎い人間である。しかし、一般教養として、クラシック音楽については知っておきたかったということもあるし、今でもたまにぽろぽろと娘の習っている曲を弾いてみたりして、いつかまたピアノを習ってみたいと思うくらいの気持ちはあるのだ。そんな中途半端な人間にとって、この本は新鮮な驚きに満ちたものだった。岡田氏も片山氏も熱すぎる。そして、「音楽は素晴らしいものですね」などと決して無条件に褒めちぎったりしないところが、まあ、インテリだからかもしれないが、ニヒルで興味深い。音楽、特にクラシック音楽は、門外漢にとっては、退屈極まりないものかもしれない。だが、こんなに好きな人たちがいることも確かだ。その膨大な知識と熱量には頭が下がる。そして、音楽と政治が深くかかわっているという考え方は、目の覚める思いがした。バッハは宗教で、ベートーベンは市民の教養主義、ロマン派は女子供の物、それ以降はクラシック音楽は崩壊してしまったという音楽史観。第一次世界大戦以降の現代音楽については、政治とのかかわりから切り離せないという指摘は、何も知らないで現代の音楽シーンを享受している者にとっては、目からうろこである。今のJーPOPなどはどうとらえたらよいのだろうか。ジャズやポップスについても言及があったので、気になった。私は、音楽好きの夫の影響で、ウォークマンをもらって、それに一杯の音楽を取り込んで、全部聞いたくらいのことはしたことがあるが、深く音楽についてつきつめて考えて見たことがなかった。また、音楽はいいものという「お花畑」の考え方から抜け出たことはなかった。あまり知識偏重にはなりたくないものだが、この本はいい刺激になった。教養書としてはとてもいい本だと思う。毒も含んでいるが、そこには愛がある。それが大事だと思う。


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