水野蛍

文学少女の成れの果て。絵本と刺し子を愛する一児の母。絵本評論のうちの絵本箱という連載を書籍化するのが夢で、絵本のエッセイという分野の開拓を試みています。ちなみに、今年の秋中に本名で鳥影社から出版予定です。乞うご期待!

水野蛍

文学少女の成れの果て。絵本と刺し子を愛する一児の母。絵本評論のうちの絵本箱という連載を書籍化するのが夢で、絵本のエッセイという分野の開拓を試みています。ちなみに、今年の秋中に本名で鳥影社から出版予定です。乞うご期待!

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【絵本エッセイ】うちの絵本箱#2『「スイミー」の魅力』【絵本くんたちとの一期一会:絵本を真面目に読む大人による絵本本格評論】

第二回 レオ・レオニ作、谷川俊太郎訳『スイミー』の魅力 0.はじめに 第一回を書き終えたと思ったら、もう第二回となりました。おかげさまで、第一回はそれなりに充実した内容に仕上がり、皆様にも喜んでいただけたのではないかと、安堵しております。さて、引き続き第二回では、レオ・レオニ作、谷川俊太郎訳『スイミー』を取り上げます。個人的な話になりますが、『スイミー』は、私の母がとても大切にしていた絵本で、確か私の妹が小さいころに母が買いました。私自身は、『スイミー』とは、小学校の教科書

    • 『週刊読書人』11月22号に記事が掲載されました!

      これは宣伝ですが、本日発売された、『週刊読書人』11月22号の「著者から読者へ」へというコラムで、拙著『うちの絵本箱:絵本くんたちとの一期一会』に関する自薦文が掲載されました!拙著がどんな本なのか、熱く語っております。ぜひ興味のある方は、御覧になってください。紀伊國屋新宿店など大手の書店ではおいてありますし、小さな書店では、注文が可能だそうです。私も先ほど、地元の書店で注文してきました。早く届かないかなと楽しみです。よろしくお願いいたします。

      • 【読書感想文】ルドルフ・シュタイナー著、高橋巖訳『ゲーテ主義:霊学の生命の思想』春秋社

        いよいよ私のゲーテ自然学趣味も高じ、ルドルフ・シュタイナーの領域に入ってきた。シュタイナーの言うことは難しい。霊の領域に踏み入っていることもあるし、抽象的なことを言っているからだ。だが、ゲーテの自然学に関して言っていることは、割とわかりやすくて、悪しきプラトン主義が、理念と経験の領域を切り離してしまった。ゲーテはそこにかけ橋しようとした。そう言っているように見える。あまりにも身もふたもない言いようかもしれないが。私自身は、霊ということになると、個人の内面は自由だから、個人の信

        • 【読書感想文】フリードリヒ・シラー『群盗』

          二つの版で読んだ。一つは、初版及び再版に基づいている、久保栄訳の岩波文庫、もう一つは、マンハイム宮廷劇場での初演時の上演台本に基づいている、内垣啓一訳の白水社「シラー名作集」の一部。かなり中身も違っていたし、訳者による文体の違いも大きかった。ただ、かつてはゲーテと並び称され、今では埋もれがちな、シラーの天才が良くわかる、大変ドラマチックな、シュトルム・ウント・ドラングの傑作だった。弟の姦計によって、父親と切り離され、絶望から盗賊に身を落としたカール・モールの勇猛さと絶望とが、

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        【絵本エッセイ】うちの絵本箱#2『「スイミー」の魅力』【絵本くんたちとの一期一会:絵本を真面目に読む大人による絵本本格評論】

        • 『週刊読書人』11月22号に記事が掲載されました!

        • 【読書感想文】ルドルフ・シュタイナー著、高橋巖訳『ゲーテ主義:霊学の生命の思想』春秋社

        • 【読書感想文】フリードリヒ・シラー『群盗』

          「うちの絵本箱」遂に発売となります!

          いよいよきたる9月18日、鳥影社より、本名の山田陽子名義で、『うちの絵本箱:絵本くんたちとの一期一会』が発売となります。 これまでアップしてきた内容に付け加えて、noteでは書けなかった、第一部の絵本論と、第二部の第十四回以降、第三十回分までの各絵本評論と合わせて、お楽しみいただけます。 ぐりとぐら スイミー てぶくろ もりのなか しろいうさぎとくろいうさぎ もぐらとずぼん ねないこだれだ はらぺこあおむし ちいさなうさこちゃん 100万回生きたねこ どろんこハリー しょ

          「うちの絵本箱」遂に発売となります!

          【読書感想文】石原あえか『科学する詩人ゲーテ』

          2010年度のサントリー学芸賞受賞作品で、私が師匠とを仰ぐ先生の出世作である。今は東大の先生をしていらっしゃるが、まだ慶応にいらっしゃったころの作品である。一言。文献学の泰斗でいらっしゃる。調べたことばかりというあらずもがなの不満もあるが、等身大のゲーテの姿が、当時のあらゆる社会状況をくまなく執拗に調べ上げることで、自然といきいきと浮かび上がってくる構図になっている。こんないかめしくもなく、オリュンポスの神として祭り上げられているのでもない、身近なゲーテは初めてだ。私自身は、

          【読書感想文】石原あえか『科学する詩人ゲーテ』

          【読書感想文】さとうみつろう『神さまとのおしゃべり』

          Amazonのお勧めで、タイトルに惹かれたのと、絵をテレビの名作君というアニメで目にしたことがあったので、つい買ってみた。一読して、ちょっとお花畑的かと思った。すべてを受け入れろ、肯定しろ、感謝しろというのは、大変立派だとは思う。だが、批判的精神がなければ、物事は少しずつでも進歩することがないのでないかと疑念がわいた。もっと哲学的な、それも、東洋哲学的な、禅仏教的な話なのかもしれない。だが、出典も引用も銘記されていないので、どこまでがオリジナルなのかがわからない。まるで新興宗

          【読書感想文】さとうみつろう『神さまとのおしゃべり』

          【読書感想文】織田雪世『髪を装う女性たち:ガーナ都市部におけるジェンダーと女性の経済活動』京都大学アフリカ研究シリーズ002、2011年

          私の大学時代、サークルで一時期ご一緒させていただいていた旧友の著作である。私は、最近までその存在を知らなかったのだが、最近夢を見て、友達が出てきて懐かしくなって、ネット検索したところ、かなり活躍されていて、著書もおありだということで、早速手に入れて一読した。友達だからというのではないが、名著だ!理論的にもフィールドワーク的にも完全だ!冒頭の問題提起では、バトラーという人の行為遂行性という概念を念頭に、「既存のジェンダー体制を前提としつつ、日々の営みの中でその体制を少しずつずら

          【読書感想文】織田雪世『髪を装う女性たち:ガーナ都市部におけるジェンダーと女性の経済活動』京都大学アフリカ研究シリーズ002、2011年

          【読書感想文】S・スマイルズ著/竹内均訳『自助論』知的生きかた文庫、三笠書房

          元東大物理学教授、『ニュートン』の編集長、竹内均先生の手で訳された、18世紀のイギリスの思想家サミュエル・スマイルズの代表作『セルプヘルプ』である。夫が是非読めと私に手渡した。一言、あまりに高潔で立派すぎて、脱帽である。最初は努力を惜しむな、と、何を当たり前のことを言っているのかとあまり興味が持てなかったが、最後のほうで、人格者であることが大切であると説かれていた部分について、私はそんなに人格者になれないよ、この方は本当に立派な方だったのだなと、若いころ放埓にふけって道を誤っ

          【読書感想文】S・スマイルズ著/竹内均訳『自助論』知的生きかた文庫、三笠書房

          【読書感想文】宮崎尊『メキメキ力がつく受験英語の集中講義』草思社、1987年

          夫がその昔愛用した参考書だそうだ。受験期になると、毎年高騰して、とても手に入らない値段になるそうなので、端境期にそこそこのところで手を打ったと、私と娘にプレゼントしてくれた。一読、確かに、受験英語のプロである。英語と日本語の構造の読み解きから始まって、いかに70点を取る基礎力を身に着けるかが、懇切丁寧に説明してある。しかも、わかりやすい。だが、本当にそうだろうか。かなり高度なテクニックを要求していやしないか?もう受験から30年経とうとしている私からすると、まだまだ難しいと感じ

          【読書感想文】宮崎尊『メキメキ力がつく受験英語の集中講義』草思社、1987年

          【読書感想文】浅井健二郎『経験体の時間:カフカ・ベンヤミン・ベルリン』高科書店、1994年

          大学院時代にお世話になった先生の主著である。私が学生時代にはもう上梓されていたのに、不勉強のため、これまで手に取ったことがなかった。しかし、人生ももう半分を過ぎた今、これだけは読んでおきたいと思い、本当は入手したかったのだが、高価だったため、市立図書館で借りてきて読んだ。難しかった。師といってもよい方のご著書であるが、謹厳なご表情が思い出されて、冷や汗が出た。ただ、文体は熱く、大変読み応えのある、一気に引き込まれるものであった。カフカを扱った前編は、カフカの作品を前にしながら

          【読書感想文】浅井健二郎『経験体の時間:カフカ・ベンヤミン・ベルリン』高科書店、1994年

          【読書感想文】宮崎尊『モリモリ受験勉強の集中講義』草思社

          夫がそろえている、夫の高校から浪人時代の英語の師、宮崎尊先生の著書の一つである。初版は1990年。もはや30年余を経ているわけだが、今読んでも遜色はない。確かに、お勧めの問題集・参考書の部分は、時代とともに古くなっているのかもしれないが、受験生の心の持ち方、道具の選び方、スケジュール管理など、いつまでも古びない立派な書きぶりである。そして、読んでいて、読み物として圧倒的に読みやすく、面白い。しかも、受験生ならずとも、受験生の親にも勇気を与えてくれる書である。娘の大学受験までは

          【読書感想文】宮崎尊『モリモリ受験勉強の集中講義』草思社

          【読書感想文】ヘーゲル『精神現象学』長谷川宏訳、作品社

          ドイツ観念論の大成者ヘーゲルの処女作『精神現象学』を長谷川宏訳で読んだ。はっきり言って、私には抽象的過ぎて、一語も理解できなかった。カントの『判断力批判』は、表現が難しくて理解できなかったが、この本は、逆に訳がこなれすぎて、頭に引っかからず、言葉がすべてスルーしてしまうので、記憶に残らないのである。目次と各章のタイトルを見て、次第に精神が高昇していく様が描かれているのはわかったが、外化という常識的な理解以外に、何も理解が深まらなかった。それでも、最後まで目を通せば、いつかは何

          【読書感想文】ヘーゲル『精神現象学』長谷川宏訳、作品社

          【読書感想文】鳥嶋和彦『Dr.マシリト最強漫画術』

          夫が昨年のクリスマスにプレゼントしてくれた本だが、毎日一ページずつ読んで、やっと読み終えた。夫の意図としては、私が自費出版を考えているので、出版界の動向を抑えておいたほうがいいということで、買ってくれたそうだ。ただ、実際に読んでみると、出版界というよりは、漫画界、さらには週刊少年ジャンプについての本だった。あくまで、鳥嶋編集長の長年の業績と経験から、いかにして週刊少年ジャンプの漫画家になれるかというお話が中心だった。ただ、少女期がそのままドラゴンボールの時代で、電影少女もダイ

          【読書感想文】鳥嶋和彦『Dr.マシリト最強漫画術』

          自費出版決定!「うちの絵本箱:絵本くんたちとの一期一会」

          ついに自費出版が決定しそうです。本当は商業出版したかったのですが、実力不足でした。ともあれ、どんな形であれ、本として形にしたいという、長年の夢がかないそうで、大変うれしいです。半年くらいで出来上がりそうですが、どうか応援のほどよろしくお願いいたします。

          自費出版決定!「うちの絵本箱:絵本くんたちとの一期一会」

          【読書感想文】宮崎尊『スイスイ英単語の集中講義』草思社

          英語の堪能な夫が、昔受験生の頃に読んで大変役立ったと、娘のために買ってきた本を私が借りて読んだ。前半は動詞、後半は名詞で、3000を超える単語が網羅されている。覚え方が合理的で、語源や豆知識と共に覚えるというものである。ほとんど知っている単語であったが、宮崎先生の思い出話と共に読んでいると、ぼんやりとアメリカ合衆国の文化というものが、カルチャーショックとともに浮かび上がってくるのである。単なる単語の本ではない。一種の文化論とも読めると思った。これを読めば、機械的に覚える受験テ

          【読書感想文】宮崎尊『スイスイ英単語の集中講義』草思社