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アンティフォナ "O Clavis David" (グレゴリオ聖歌逐語訳シリーズ65)

ANTIPHONALE MONASTICUM I (2005) p. 50; ANTIPHONALE MONASTICUM (1934) p. 210; LIBER USUALIS p. 341.
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 4番めのオー・アンティフォナ (O-Antiphona) で,12月20日に歌われる
 オー・アンティフォナ全般についての解説,各アンティフォナの全訳と関連聖書箇所はカトリック中央協議会のサイトにある。最重要の基本事項だけ繰り返すと,オー・アンティフォナにおいてさまざまな言葉 (今回なら「ダビデの鍵,イスラエルの家の王笏」) で呼びかけられ,「来てください」と願われているのは,イエス・キリストである
 

【テキストと全体訳】

O Clavis David et sceptrum domus Israel, qui aperis, et nemo claudit, claudis, et nemo aperit: veni et educ vinctum de domo carceris, sedentem in tenebris et umbra mortis.
おおダビデの鍵にしてイスラエルの家の王笏である方よ,あなたがければ誰も閉じることはなく,あなたが閉じれば誰もけることはありません。来てください,そして牢屋につながれている者,闇の中・死のかげの中に座っている者を (外へ/明るいところへ) 引き出してください。

 "vinctum (縛られている者を。上では「つながれている者 (を)」と訳した)" と "sedentem (座っている者を)" とはいずれも単数形なのだが,Codex Hartkerを含むいくつかの写本では複数形 ("vinctos", "sedentes") になっている。

 

【対訳】

O Clavis David et sceptrum domus Israel,
おお,ダビデの鍵でありイスラエルの家の王笏である方よ

  •  ここから "veni" の前までは,イザヤ書第22章第22節をもとにしている。

qui aperis, et nemo claudit,
(ダビデの鍵でありイスラエルの家の王笏である) あなたがければ誰も閉じることはなく,
直訳:
(ダビデの鍵でありイスラエルの家の王笏である) あなたが開ける,すると誰も閉じない,

  •  関係代名詞 "qui" の性 (男性) は "Clavis" (女性) とも "sceptrum" (中性) とも一致していない。単にイエス・キリストが男性であることに合わせていると考えられる。

  •  主格の関係代名詞があるのでこれを主語とする関係詞節かと思いきや,すぐに別の主語 ("nemo") が現れる。なんとも訳しづらい。言わんとしていること自体は,もとの聖書箇所 (イザヤ書第22章第22節) からしても上の訳の通りで間違いないだろうが。

claudis, et nemo aperit:
(ダビデの鍵でありイスラエルの家の王笏である) あなたが閉じれば誰もけることはない。
直訳:
(ダビデの鍵でありイスラエルの家の王笏である) あなたが閉じる,すると誰も開けない。

veni
来てください,

et educ
そして引き出してください,

vinctum de domo carceris,
牢屋につながれている者を,

sedentem in tenebris et umbra mortis.
闇の中・死のかげの中に座っている者を。

  •  "et educ" からここまでは,イザヤ書第42章第7節 (イザヤ書第42~53章に4つある「主のしもべ」の歌のうち第1のものに含まれる) に基づいている。昨日の「苦難の僕」の箇所 (これは「主の僕」の第4の歌) に続いて「主の僕」のモティーフが用いられていることが注目される。
     なお,この「主の僕」の第1の歌は,現行「通常形式」のローマ典礼 (現在のカトリック教会で最も普通に行われている典礼) では主の洗礼の祝日 (イエスが洗礼者ヨハネから洗礼を受けたことを記念する) に朗読される。
     

【逐語訳】

おお (間投詞)

Clavis 鍵よ

David ダビデの

et (英:and)

sceptrum 支配者の杖よ,王笏よ,王杖よ

domus Israel イスラエルの家の (domus:家の)

qui (関係代名詞,男性・単数・主格)

aperis (あなたが) ける (動詞aperio, aperireの直説法・能動態・現在時制・2人称・単数の形)

et (英:and)

nemo 誰も~ない (英:nobody, no one)

claudit 閉める (動詞claudo, claudereの直説法・能動態・現在時制・3人称・単数の形)

claudis (あなたが) 閉める (動詞claudo, claudereの直説法・能動態・現在時制・2人称・単数の形)

et (英:and)

nemo 誰も~ない (英:nobody, no one)

aperit ける (動詞aperio, aperireの直説法・能動態・現在時制・3人称・単数の形)

veni 来てください (動詞venio, venireの命令法・能動態・現在時制・2人称・単数の形)

et (英:and)

educ 引っ張り出してください,外へ出してください (動詞educo, educereの命令法・能動態・現在時制・2人称・単数の形)

  •   「育てる,教育する」という意味のeduco, educareとは別の動詞。

vinctum (縄や鎖で) 縛られている者を (動詞vincio, vincireをもとにした完了受動分詞を名詞化して用いているもの,男性・単数・対格)

de domo 家から (domo:家 [奪格])

carceris 牢の

  •  直前の "domo" にかかる。

sedentem 座っている者を (動詞sedeo, sedereをもとにした現在能動分詞を名詞化して用いているもの,男性・単数・対格)

in tenebris 闇の中に (tenebris:闇 [奪格])

et (英:and)

umbra かげ (陰,影) (奪格)

mortis 死の


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