先端技術の教育利用 ① ICT導入で教育はどのように変化するのか。
(2020年7月10日記事の再投稿です)Society5.0時代が到来し、社会構造や雇用環境の変革とともに子供たちに求められる能力も変わってきている。
そして私たちに求められる教育活動もまた大きく変化しようとしている。そうした中、多様な子供たちを誰一人取り残すことのない、公正に個別最適化された学びの実現のために、GIGAスクール構想やICTを基盤とした先端技術や教育ビッグデータの効果的な活用の大きな可能性が注目されている。
文部科学省も、教育ビッグデータの活用が目指すべき次世代の学校・教育現場に効果的としており、様々なシーンでの活用を想定している。
新時代の学びを支える先端技術活用推進方策 文部科学省
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/other/detail/__icsFiles/afieldfile/2019/06/24/1418387_01.pdf
しかし、教育用コンピュータやネットワーク整備などハード上の課題や、実証的な検証の少なさ、地域間格差などの利活用上の課題もあり、まずはこのような課題を解決し着実に推進していくための体制づくりが急がれている。
その第一歩として文科省では「教育データの標準化」とその利活用(学習履歴(スタディ・ログ)等)に関する検討を行っている。なぜなら教育ビッグデータを効果的に活用するためには、収集するデータの種類や単位(データの意味)が、サービス提供者や使用者ごとに異なるのではなく、相互に交換、蓄積、分析が可能となるように、収集するデータの意味を揃えることが必要不可欠だからだ。
そうした検討を踏まえ、こちらで先端技術の学習利用を模索し、その活用例としてVRを紹介していきたい。
VRとは「Virtual Reality」の略で、コンピュータ・モデルとシミュレーション技術を用いてつくられた三次元空間を、視覚やその他の感覚を通じて疑似体験できる仮想現実のこと。
VRゴーグルなどの専用デバイスを装着することで、視界の360°が覆われ、限りなく現実に近い世界に没入し、リアルな体験が得られる。
ゲームやエンターテイメント分野でのイメージが強いが、現在では職業トレーニングや不動産の内見、避難訓練やスポーツ観戦などでも活用されている。
学習へ期待される効果
・子供たちが能動的に学習に参加できる
・場所に依存せずどこにいても同じ授業が受けられる
・地球のプレートの動きなど、観察が難しい部分も繊細に再現される
・没入感が高く、脳を刺激するためモチベーションが維持できる
・現実に近いシミュレーションにより即時対応力が身につく
・先生個々の経験に依存しない圴一な情報提供やスキルアップ
どういうものがあるの?
VRには大きく分けて3つの種類がある。①VRゴーグルにスマートフォンをセットして使用する。②VRゴーグルとパソコンを繋いで使用する。③VRゴーグルのみで使用する。の3つだ。それぞれの特徴は後ほど詳しく紹介するが、まずは自分がどういった使用方法をしたいのかを考えて欲しい。その中で必要な解像度や没入感、装着性や重さなどを比較して最適なものを選んでみよう。
①スマートフォンとVRゴーグル
VRゴーグルにスマートフォンをセットして使用するタイプ。スマートフォンのディスプレイに出力されたVR用映像をゴーグルのレンズを通してみることで左右の目に視差の異なる像を映し出し、立体視することができる。画像のクオリティは落ちるが、スマートフォンがあればどこでもVRを楽しむことができ、また2000円〜3000円と比較的安価なのでVR初心者にもおすすめ。
「もっと手軽にVRを体験してもらいたい」という思いから生まれたこちらはハコスコ社のダンボール製VRゴーグル。組み立てたゴーグルにスマートフォンをセットし、レンズを覗けばバーチャル世界が広がる。ゴーグルのデザインや映像制作のサービスもあるので、イベントやノベルティでも人気。
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②パソコンとVRゴーグル
パソコンとVRゴーグルをHDMI端子やUSBケーブルで接続し使用するタイプ。スマートフォン向けに比べ、コンテンツの種類が多く、質も高い。画面の細かいところまできれいに再現でき、没入感は他のタイプとは比較にならないが価格も3万円〜最高級のもので17万円と高めの設定となる。また購入前に、必要となるパソコンのスペックや希望の解像度、視野角の確認も重要。VRによっては新たにパソコンの購入も必要となってくるだろう。
③VRゴーグルのみ
VRゴーグルを装着するだけで映像を楽しめるタイプ。高性能のパソコンや面倒な接続、設定が不要なので、すぐに始めたい、気軽に始めたいという方はこちらがおすすめ。パソコン向けに比べると映像のクオリティは劣るが、ケーブルレスなので機動性が高く、持ち運びも便利。空間を自由に動き回れるのでよりVRの世界を楽しめる。一般化、普及という点でこれからのVRゴーグルの主流になるとも言われており、価格も2〜5万円と比較的始めやすい設定となっている。
こちらはLenovo社の「Mirage Solo」VRゴーグルだけで楽しめるスタンドアロン型だが高性能のトラッキングを採用し、プレイヤーが体を反らしたりかがんだりする動きや移動も高精度で把握してくれる。また110度の広い視野角と最適化された解像度で美しい映像と今までに無い没入感を楽しむことができる。GoogleのVR専用プラットフォーム「Daydream」対応で、250以上のアプリを利用可能。
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こちらはPico Technology社の「Pico G2 4K」4K解像度ディスプレイの高画質と軽量化を実現しており、スタンドアローン型VRとしての基本性能が非常に高い。ボディは長時間の使用を想定しわずか276グラムで、肌触りなど素材にもこだわっている。また、眼鏡をつけたままの装着も可能。ブルーライトカット機能も搭載されている。
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どういう画像が見れるの?
VRでは文字通り、360°の作られたVirtual(立体的)な映像を見ていると分かっていても、触れるのではないかと錯覚するほどReality(現実感)を味わうことが出来る。医療用や商用、エンターテインメント向けのものなど様々な用途があるが、ここでは授業に活用できるVR動画をいくつか紹介していきたい。
①様々な地形や風景
地理の授業では、実際に学習している土地にいるかのような体験をすることで、その気候や特徴をより身近に感じ理解を深めることができる。こちらの動画は万里の長城を航空撮影したものだが、他にもグリーンランドの氷山やインドネシアの島々なども授業に活用できるだろう。
地理に関する動画集はこちらをご覧ください。
②宇宙や太陽
理科の時間では、宇宙や太陽を具体的にイメージできずそのため興味を失ってしまう生徒も多いだろう。VRを使うことで脳を刺激し、生徒たちのモチベーションを維持してほしい。
宇宙や太陽に関する動画集はこちらをご覧ください。
③細胞や体のしくみ
生物の授業では、細胞や体のしくみなど実際に目で見ることが難しい学習場面が多々あるだろう。VRではそのような観察が難しい部分も繊細に再現してくれる。
生物に関する動画集はこちらをご覧ください。
このようにVRは今や手軽に始められ、今後使用される場面が増えることが予想される。生徒たちの理解を深め、また先端技術に触れる機会を増やすためにもぜひ教育現場で活用してほしい。次回の記事では、具体的な授業への導入例を紹介していきたいと思う。
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