編集Lily

書籍編集者。大阪生まれ、大阪育ち、京都、ロンドン経由、東京在住。現在、CCCメディアハウス所属。my rap gods:ルイ=フェルディナン・セリーヌ、ヴェルベット・アンダーグラウンド、エミネム。書籍と人生を編集する日々。

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書籍編集者。大阪生まれ、大阪育ち、京都、ロンドン経由、東京在住。現在、CCCメディアハウス所属。my rap gods:ルイ=フェルディナン・セリーヌ、ヴェルベット・アンダーグラウンド、エミネム。書籍と人生を編集する日々。

マガジン

  • MARGINAL NOTES:周辺から考えたこと

    五人の名文家と一人の編集者の Web ZINE。お題は月替わり。あなたも、私も、生きている。

  • Tokyo Story:編集者の生活|編集Lily

    • 8本

    編集Lilyの日記のようなもの

  • 絵画レッスン交換日記:目を凝らせば世界は甘美

    画家仙石裕美と編集者Lilyの交換日記のようなもの。絵のレッスンを通じて考えたことを記録しています。

  • 【THANKS】話題にしてくださり。|編集Lily拝

    担当本や私のことを取り上げてくださった皆様の記事を蒐集しております。本当にありがとうございます。

最近の記事

【祝10刷】編集者が本気を出すということ:わたしにしか、編めない本は、ある

■ 万感の祝10刷 重版はいつも嬉しいが、今回は特別な感慨がある。 近藤康太郎さんの著書で私の担当書『三行で撃つ 〈善く、生きる〉ための文章塾』の10刷が決まった。2020年12月の発売以来、勢い衰えることなく売れ、ここまで来た。プロのライターや、日常的に書いている人たちから特にご高評をいただき、SNS、note、Amazonでは数えきれないレビューが並ぶ。立派なロングセラーに育ってくれた。嬉しい。 げに、テクストが、よく肥えてくれました。 ここからは『三行で撃つ』を

    • 「書きたいことを書く」というエゴを自覚することについて

      「書きたいことがある。でも、書いたら人を傷つけるかもしれない」 よく受ける相談だ。あんまりよく受けるから、よく考えた。いま製作が進行している、エッセイストで翻訳家の著者の仕事論にも、「エッセイを書く」という文脈で出てくる話なので、少しメモしておきたい。 逡巡はよくわかる。だから、よく自問してみてはどうかと思うのだ。自分の「(書きたい)欲望」の本質を突き詰めて考えてみたらどうか? という話である。 問い:書きたいことを書いた結果、傷つくと嫌なのは「果たして誰」なのか?

      • 読書の恩人のこと:叶わぬ恋のはなし

        三砂慶明さんと読書の原体験の話になった。そのとき、両親が本を読まなかったことだと答えた。じつはあの話には、加えてもう一つ、大切なファクターがある。ずいぶん昔に書いた日記が出てきたから、貼っておく。 大阪ミナミ宗右衛門町の雑居ビルに、父や母が独身のころから行きつけている小さなクラブがあって、この店で開店当時からボーイをしていたTちゃんには、物心つかないうちから可愛がってもらった。 父より少し年上のTちゃんは古きよき時代からの松竹歌劇団ファンだった。母の古巣である。「おまえさ

        • 物件は、はずみで買い、はずみで借りる

          ある物件の内覧に行くことにした。はずみ、である。前から部屋を借りようと計画していたわけではない。住む場所はあり、愛している。余分に部屋が必要というわけではない。場所は関西だし、引っ越すつもりはない。 ある物件の情報は偶然見かけた。必要ではないのだが、私は「その物件を」「その物件だから」借りたいと思った。必要ではないが、必然の気配があった。 私にとって物件は、はずみで買い、はずみで借りるものだ。はずませてくれるほどの強い何かがない場所に、自分の身を置きたくない。もちろん、い

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        • MARGINAL NOTES:周辺から考えたこと
          6本
        • Tokyo Story:編集者の生活|編集Lily
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        • 絵画レッスン交換日記:目を凝らせば世界は甘美
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        • 【THANKS】話題にしてくださり。|編集Lily拝
          19本

        記事

          供述によると編集者は……死にかけの自我を救いたい

          Lilyの供述によると、ある番組の収録が終わったあと、バカリャウのコロッケをつまみに冷えた白ワインで乾杯した私たちはご機嫌だった、という。外はしつこく雨が降っていて、東京の夏特有のアスファルトから立ちのぼる湿気が邪魔をし、とてもポルトガルの様というわけにはいかなかった。 『供述によるとペレイラは……』(アントニオ・タブッキ著/須賀敦子訳)のポルトガルらしい陽光降り注ぐ暑い広場で、ペレイラが食事を取るあまたの場面の微細な描写が好きな私たちは、少し残念に感じてはいたが、それより

          供述によると編集者は……死にかけの自我を救いたい

          あなたの本をつくるとしたら

          生まれも育ちも大阪女の私が、大阪で自分の話をすることになった。 とはいえ、考え込んだ。自分の仕事の話、人生の話と言われても、そんなんほんまに聴きたいですか??? と。 そこで、いつもみたいに手を動かしてみることにした。これが、おもしろかった。みんなもやってみると発見があるんじゃないかな。 何をしたか? “あなたという人で一冊つくると想定した場合の目次を書き出す” これ。 どんな人生も壮大だから、インパクトでかめのイベントを書き出すのには困らない。困らないどころかキ

          あなたの本をつくるとしたら

          「書く」のは嫌いだが、しばらく書いてみようと思う

          リスペクトする思想家で作家の近藤康太郎さんが言った。 「Lilyの本ならおれが書いてやるよ。もう自分のことしか書かないと決めてるけど、一冊だけ特別。おれが書く」 ほんまかいな、ご冗談を。というわけでもないのである。私たちはいつも、仕事と関係ない話ばかりしてきた。近藤さんはなぜかよく私の考えをおもしろがって、そのたび「それ、ちゃんと書いたほうがいいよ。おれが読みたい」と言うのである。さりげない、しかし、もう何年も続いていることだから助言なのだろう。「それはいややな」なんて言

          「書く」のは嫌いだが、しばらく書いてみようと思う

          創造をあきらめない人の世界は無限

          いちばん好きな芍薬の季節が終わり、それでも意外と寂しくないのは、すかさず百合が美しい7月だからだろう。 芍薬は思い切りがいい花だ。五月から六月の花屋に芍薬が並ぶ時期、私は繰り返しそれを買い、家に飾る。嬉しい。とりわけ好きなのは八重の白い品種。まだ硬い蕾のものを選んでくる。頑なに握りしめたこぶしのように丸くて、ちゃんと開いてくれるのか心配になるものだけれど、扱いかたさえ心得ていれば、存外素直に威勢よく開いてくれる。 長年親しんできた芍薬の見かたが大きく変わる機会が昨年あった

          創造をあきらめない人の世界は無限

          意味も価値も求めないでほしい

          書店にいくと、うんざりする。書店に行くことが嬉しくて仕方がないというかつてはあった気分を失って久しい。原因ははっきりしている。書店が悪いのでも、本が悪いのでもない。これは自分の問題である。かつてのサンクチュアリの捉え方がネガティブ転換したのは私自身の問題だ。 仕事で本をつくっていると、担当書が書店でどう展開されているか気になる。企画会議に出そうと目論んでいる企画の「類書」(大嫌いな言葉だ)がどう展開されているのか、否が応でも気になってしまう。 ジェンガみたく巧みなバランス

          意味も価値も求めないでほしい