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[書評]自分を見失わず生きていくには?第一線で輝く女性たちの物語

こんにちは。エディマートの松永です。
まだまだ暑い日々が続いていますが、暦の上では立秋も過ぎ、いよいよ季節の変わり目を感じる時期に差し掛かってきました。

ビジネス上では9月には上半期も終わりを迎え、この時期に転職を考える人も多いのではないでしょうか?実は私自身、去年の夏に転職してエディマートに入社した一人です。

転職をはじめ、自分の生き方を変えるのにはかなりの勇気が必要ですよね。そんなときに、成功した人たちの前例を聞いて、背中を押された経験はないでしょうか?

そこで今回の『エディマート読書部』のブックレビューでは、著名な女性たちの半生についてジェーン・スーさんが綴るインタビューエッセイ『闘いの庭  咲く女 彼女がそこにいる理由』を紹介します。


書籍情報

闘いの庭  咲く女 彼女がそこにいる理由
著者:ジェーン・スー
出版社:文藝春秋
発行:2023年3月

この本を手に取ったきっかけ

私がこの本と出会ったきっかけは、転職を決めたタイミングで友人から贈られたことでした。かねてより、コラムニストのジェーン・スーさん好きを公言していた彼女は、まごうことなき“互助会員”なのです(※ジェーン・スーさんと堀井美香さんがパーソナリティを務めるPodcast番組「OVER THE SUN」のリスナーの呼び名)。

私自身はジェーン・スーさんの熱心な読者やリスナーではないのですが、女性の生き方について飾らず発信するスタンスや、そんな彼女を敬愛する友人のことを「いいなぁ」と思っていました。

退職を決めたことをランチしながら友人に報告していた日、「最近買った本なんだけど…もう読んだし、今のあなたにぴったりだから、あげるよ!」と渡してくれました。特別なラッピングはなく、ざっくばらんに手渡されたことも、かえってうれしかった記憶があります。

どんな本

「週刊文春WOMAN」にて足掛け6年にわたり連載された、ジェーン・スーさん初のインタビューエッセイを加筆・編集した内容になっています。

本編では女性をゲストに迎えますが、あくまで対談形式ではなく「インタビューエッセイ」の体裁。本人の言葉を交えながらも、ジェーン・スーさんの視点を通して綴られていくのがポイントです。対談相手との関係性が浮かび上がるような面白さもあります。

インタビュー対象となったのは、吉田羊(俳優)、野木亜紀子(脚本家)、辻希美(タレント)、田中みな実(俳優)、神崎恵(美容家)、北斗晶(タレント)などの13人。すべての人を知らなくとも、「どこかで見聞きしたことある名前だな」と感じたのではないでしょうか?

第一線で活躍する」と形容するにふさわしい彼女たちが、どのような歩みを経て、現在の場所で花を咲かせているのかを、ジェーン・スーさんが鋭く紐解いていきます。

わたしの感想

世の中には数々の伝記や社会的成功者のハウツー本が存在しますが、女性の功績が語られる例はまだ少ない。そんな現状こそが、女性が自分を信じることの足かせになっているのではないかというじれったさが、文面のそこかしこから感じられます。

私たちにはもっともっと、社会に求められ、功績を築いた女の物語が必要だ。前例が見えぬままでは、自分にも同じことが起こりうるとは思えないから。プロ野球がない世界には、プロ野球選手になろうと夢見る子どもは現れない。

本書「齋藤薫」より

また、こちらが持っていたイメージとは違う印象を抱くインタビュイーが少ないのも印象的です。以下に引用するのは、いずれもご本人たちの発言。

「尻に火がつかないとやらない。ただ、火がついたらやれちゃう。そういうネガティブな成功体験ばかり積み重ねてしまって。私は自分のだらしなさを知っているし、周りを見ればすごい人がたくさんいる」

本書「吉田洋」より

「結婚しても、女が仕事を続けられる世の中であってほしいと思っていました。若いころからずっと練習してきたことを、幸せをつかむと同時にやめなければいけないのはおかしい」

本書「北斗晶」より

思わぬ一面を垣間見ることで、華やかな世界に生きる彼女たちが決して順風満帆な道のりばかりではなかったことが伝わります。そして、それがジェーン・スーさんのフィルターを通して描写されると、本人の魅力がいっそう光を放つのも本書の特長です。

ステレオタイプからはみ出た、現実を生きる人々。彼ら/彼女らから搾取せず、存在の善悪をジャッジせずに描くことで存在を肯定し、玉虫色のリアルが映し出す希望や光を届ける。それが野木の「すっげぇ面白い」仕事なのかもしれない。

本書「野木亜紀子」より

本書で語られる言葉から、そのどれもがお膳立てされた物語やシンデレラストーリーではなく、自分のやりたいことを主観的に見つめ、そのために必要な手立てや段取りを客観的に考え、ときにはレールや慣習から外れ、思い切った決断をしてきたことがわかるはずです。

また、インタビュイーが30代~70代と幅広いこともあり、時代によって求められる「ふつう」に翻弄されながら、それぞれの年代で葛藤や戦いがあったことも興味深い点だと思います。

共感してもしなくてもいい、自分だけの地図と羅針盤を手に持って生きることが「自分らしさ」につながるということを教えてくれる一冊。人生の転機に立っている人も、自分の生き方に悩んでいる人も、ぜひ手に取ってみてくださいね!

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