保険会社が黒子役になると何が変わるのか
私の予想では、これからは生命保険会社が前面に出て保険を販売してゆく時代ではなくなってゆくと思っている。
すなわち、なんらかのサービスと合わせてお薦めされ、加入するのが主流になるということだ。
このような世の中が到来すると何が起きるのか。私見を述べてみたい。
代理店の世界観に入り込む
銀行窓販では、銀行を訪れた人たちに保険をお薦めするという構図だった。
この場合、商品の中身と銀行員の人たちへのサポートが競争のファクターだったが、異なる業界のサービス内で保険を勧めるとなると、様相は少し変わってゆく。
要するに相手側のサービスの世界観を壊さないように気をつけないといけないのだ。バリバリのIT企業が提供しているサービスなのに、画面のインターフェースが古臭くて使いづらかったら興醒めしてしまう。
「外部サイトへ遷移します」とことわりを入れていたとしても、サービス全体の印象に影響を及ぼす。
顧客体験のクオリティという軸で等しく競争をしなければいけないのだ。
私たちは生命保険に加入する人たちがどんな世界観を求めているか分かっているだろうか。
保険料を負担する財力のあり、家族を持っている30〜40代の人たちは、健康に対する意識が高く、予防医療の情報にもアンテナを貼っている。
病気予防にお金をかける中で、「これだけは生命保険じゃないとできない」といった要素はなんだろうか。
家族の中で、介護に備える必要性を切実に感じている人たちは誰だろうか。それは高齢者を親に持つ働き盛りの子供たち世代だ。
親本人はまだまだ自己認識が35歳ぐらいで、子供に言われないと自分が衰えた時のことはなかなか考えない。
保険周辺を取り巻く"物語の創造"をしてゆかないといけないのだ。
「本気の解説が聞きたい」というニーズ
流されるままに加入していると、「サービスのついでになんとなく入っていたけど、これって本当にいいんだろうか?」という疑問を持つ人はいるだろう。
最初のとっかかりを生命保険会社以外の人間が応対することが増えると、「生命保険のことだけを本当のプロにガッツリ質問したい」というニーズもまた生まれてくる。
これをやると「生保のガチなプロ」たちの希少価値が高まるので、実は生命保険会社にとって悪いことばかりではない。
ただし、真のプロ育成には自助努力も含めて膨大な時間がかかるので、人数は限られてくる。
生命保険会社で将来的に生き残れるのは、バックオフィス系だと商品開発と資産運用にまつわる人たち。あとは加入時の査定、支払時の査定、保全業務などにおける経験・知識共に豊富なプロな人たち。
営業方面は代理店との折衝に力を発揮するか、自身が真の保険のプロとして満足度の高いコンサルティングを提供できる人に限られてくるだろう。