読書記録:わたし、二番目の彼女でいいから。5 (電撃文庫) 著 西 条陽
【過去の悔恨ゆえに己を自戒せめども、恋は離してくれない】
悔恨ゆえに新たな大学生活を開始する物語。
数々の黒歴史に彩られた過去から逃れる為、京都の大学へ進学した桐島。
新たな環境で出逢う素敵な仲間達。
遠野と宮前というかけがえない女性と紡ぐ青春の1ページ。
新しい居場所で友人の恋にエールを送る桐島。しかし、キラキラするような大学生活も、蓋を開けてみれば相変わらずの欺瞞に満ちていた。
過去の教訓から今度こそ、真っ当な青春を生きようと足掻く桐島の想いとは裏腹に。
自らの業と呼ぶべき物と、橘さんと早川さんに追い立てられて。
新たな破滅の恋へと溺れる。
過去からいくら逃避せめども、桐島の受難は続く。この泥沼の関係の中で。
それはともかく我らがクズ、主人公である桐島は大学二回生となり、彼の姿は、京都にあった。
誰にも告げず京都の大学に入学し、灰色の季節を過ごしながら。
自罰的に沈み続ける所を、ボロアパートの隣人である福田くんに救われ、妙な方向性の愛に目覚めて。 気が付けば高下駄を履いて着流し姿、といういつの時代の人間だとツッコミたくなるような時代錯誤な風貌に変り果てる。
そんな彼は福田くんや、先人である大道寺さん、そして色々な縁で知り合った女学生、遠野と宮前と交友を結び。
新たな友人グループを形成し、もう今度は恋なんかしない、青春に全てを捧げると、心を殺しながらも生きていた。
しかし、その決意とは虚しく、人は何処までいっても幸せを求める生き物であり、一度味わった甘い汁を中々忘れる事は出来ない。
何故か腐れ縁と言わんばかりに、追いかけてきた浜波。
期せずして再会する、かつて事情を知る級友。
福田くんの思いを応援したい桐島に、彼が好きだと迫る遠野。
その思いを知ってか知らずか、危険な誘惑を醸し出す宮前。
そして、皆で親睦会を踏まえて訪れた海で。
そこで、まるで運命的に再会した早坂さん。
今でもまだ好きな想いを捨てきれない。
だからこそ、今は一緒に居ちゃいけない。
お互い別々に幸せになる道を歩むべきで。
知らぬ顔で、知った声音で。
様々な意味で成長した彼女に背を押され、桐島は遠野の元へ送り出される。
早川さんと橘さんと追い縋られて、この再会が意味する物とは一体何なのか?
輝かしい大学での青春が、どす黒く歪な物へと変わっていく。
時に過去が心を縛り付け、時に過去が背中を押してくれるが、こうも人生とはままならない物なのか?
人の愛を求めるのではなく、人に愛を与えるエーリッヒになることを決意した筈なのに。
忌避した恋愛依存へと堕ちていく。
恋愛から遠ざかり、禁欲生活を続けていたのに、状況が破滅的な恋に向かうしかなくなってきている。
周りから好意の矢印を受けて、その中で自分のベストを選択するが、尽く空回りで終わり、ますます人間関係が複雑に厄介になっていく。
新たな土地で心機一転に臨もうとも、危うい気持ちを孕んだ贖罪の気持ちは桐島の中からまだまだ消えそうにない。
どれだけ過去に苦しまされ続ければならないのか?
でも、苦しみを引きずり続けるのは、それだけ自分にとって大切だったからで。
橘さんと早川さんとの蜜月とトラウマがずっと心に残り続けて。
その傷を新しい恋で埋めれるほど、器用ではない。
贖いきれない罪を犯して、彼女らを傷つけた自分に大学生活を楽しむ資格が果たしてあるのか?
一筋縄ではいかない底なし沼に引きずり込まれて、
新たな青春を始めるにはどうしても避けては通れない過去のしがらみ。
世の中に偶然はなく、あるのは必然だけ。
無意識下で求めていたのか、運命を無理やり手繰り寄せたのか。
忘れられない彼女の面影が、本格的に絡み始める時、動乱の京都はどのような色に染まるのだろうか?
忘れたくても忘れられない想いを抱いて、集った彼女達。
変わると決意した桐島は同じ轍を踏まずに、自分にとっての拠り所を掴み取れるのか?
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?