読書記録:いっつも塩対応な幼なじみだけど、俺に片想いしているのがバレバレでかわいい。1 (HJ文庫) 著 六升六郎太
【君の心の声に応える為に、縛られたルールを越えよう】
素っ気ない態度を取る幼馴染の夢見ヶ崎綾乃 の心の声が猫を助けた事で聴こえるようになった二武幸太は、縛られたルールを越える物語。
告白されると死ぬ、嫌われ過ぎても死ぬというかなり無理難題なルールが、心の声が聴こえる代償として、のしかかってきた幸太。
意外な副作用に苦悩する彼だったが、前向きに考えれば、恋する綾乃のイニシアチブを握る事が出来る状態にあるという事で。
絶妙な縛りプレイの中で、過去の因縁を越えて、本音と建前を使い分ける。
猫神を助けたお礼に異性の心の声が聞こえる飴を貰う幸太。
心が読める代わりに告白されたら死ぬ呪いをかけられる。
せっかく手に入れた特殊能力を存分に活かしたい所だが。
幸太が話しかけてもつれない態度ばかり取る綾乃の繊細で天邪鬼な乙女心。
塩対応な彼女の心の声は、だだ漏れの砂糖菓子のように甘い物で。
好感度が下がりすぎても上がりすぎても駄目という絶妙な乙女心を垣間見る。
他人の声が聞こえるからこそ、綾乃の本当の気持ちを思い知った幸太。
気になる相手の気持ちが分かるのだから楽勝でハッピーエンドと思いきや。
その想いに是が非でも応えたい所だが、告白=デッドエンドという制約のせいで、恋仲になるのも一進一退の世知辛い物となる。
それでも、彼女の表面の塩対応とは裏腹の筒抜けのデレに戸惑いつつ、ギリギリのタイミングで告白を回避する戦略的対応が、何ともシニカルで面白い。
異性の心の声が聞こえる能力を活かして謎を解いてみたり、どうして綾乃が幸太の事が好きなのか、その真意を探っていく。
心の声が聞こえているから本来ならその場に応じた最適解の行動や言葉選び、選択肢を選んでいる筈なのに、本性が完全にストーカーな上に、妄念にとりつかれた変態という厄介な綾乃にことごとく駄目にされる。
呪いのせいで幸太にベタ惚れな綾乃や、親友のみずきの事情が幸太に筒抜けに聞こえてしまう。
彼女達が抱えるプライベート且つセンシティブな心の問題が否が応でも幸太の下へ辿り着いてしまう。
そんな彼女と関わる中で、妄想手帳を期せずして見てしまう事になる。
そこには、母親と娘の関係や家族の在り方としての想いがつまびらかに秘められていた。
幸太に課せられたのは激難度の綱渡り。
親子の確執を乗り越えて、綾乃の夢を叶える為に、背中を押して、問題解決に向けて奔走していく。
素直になれない幼馴染のギャップに振り回されながらも、自分が死ぬのを防ぐ為に告白を上手い具合に躱していく。
彼女の雄弁な心の声に振り回されつつも、綾乃の抱える問題を見事に解決してみせた幸太。
筒抜けになる恋心、躱し遊んだ先で、このルールの抜け道を見出す事が出来るのか?