読書記録:僕は、騎士学院のモニカ。 (ファンタジア文庫) 著 陸そうと
【君に貰った命を引き継ぎ、この世界で未来を叶える】
人類の天敵と相打ちになった伝説の騎士が、看取ってくれた少女として蘇り、世界を駆け抜ける物語。
一匹狼ながらも人知れず困っている人々を救い続けた最強の騎士として名を馳せ、人類にとって史上最凶の天敵である「ディザストロ」との決戦で、相打ちという形で、命を散らしたダレン。
しかし、自分を看取ってくれたモニカに魂が引き継がれる事で、彼女の意志を尊重しようと、騎士学院に入学する。
産まれて初めての学園生活に戸惑いながらも、衰えを知らぬ剣の技量を示して同級生に尊敬されながら。
学園に渦巻く闇を解決する中で、何故モニカは己に命を譲ってくれたのか。
モニカは女性で在りながら、何故、騎士を目指したのか。
一つの身体に二つの心を宿しながら、その想いを考察していく。
産まれながらの性別によって、男性は血液に含まれる「呼応力」を活かし身体能力を向上させて「騎士」として戦い、女性は心臓に宿った「内なる神」の力によって神奏術を駆使して、「神奏術士」として戦う。
性別によって、あらかじめ、生きる道を定められた世界で。
騎士が剣を振るい、神奏術士が譜面を奏でて、人類の敵である「ディソナンス」と戦っていく。
後衛で、譜面でバフをかける神奏術士と前衛で、剣を振るう騎士で役割分担されるのが本来の姿だが。
ダレンの記憶を持つモニカは一人で両方の役割をこなす事が出来る。
とある異世界唯一の国家、「シンフォニーアイランド」
「音」と共に発展を遂げたこの土地の秩序を守るのは、「騎士」と「神奏術士」と呼ばれる存在。
彼らが戦うのは、音に引き寄せられる謎の存在「ディソナンス」。
その幾多の「ディソナンス」を包括した「ディザストロ」と呼ばれる存在によって、辺境で引き起こされた大災害。
その大災害を解決したダレンは瀕死の身体で、モニカに葬送曲を送られて、慥かに死んだ筈だったが。
モニカの騎士になるという夢を叶える為に、教育機関であるトーンハウス学院にて、編入試験を突破して、史上初の女性騎士候補生として入学を果たす事が叶う。
入学早々、騎士学科のトップクラスの候補生、アルギュロスと神奏学科の実力者、ヘリオローズを相手にしながらも、剣術と神奏術を合わせた独自の剣技を見せつけて、あっという間に彼らを倒してしまう。
最強の騎士としての階段を歩み始めるかと思えば、独特のマイペースさとアウトローさで彼らの事を振り回して。
気が付けば、ヘリオローズの友人であるフィーネも加えて。
気心知れた仲良し四人組として、共に過ごす時間が増えていく。
だが、その安寧な日々に不穏な影が差しこんでくる。
学院に出現した人類の天敵、何者かに操られるような素振りを見せる敵。
その原因を探る為に、アルギュロス達と共に、学院に蔓延る闇を駆け抜けていく中で。
身近に潜んでいた黒幕がその思惑を現して、唐突に悲しき激突は巻き起こる。
友と戦う葛藤による躊躇もあった。
しかし、本当に友を想うのなら、その迷いと決別して、斬り捨てる。
自分の下した決断が正しいのかどうかなんて、終わってみないと分からない。
しかし、この選択が正解に近付くように、今を足掻く事は出来る。
黒幕によって明かされたのは、「モニカ」の抱える本当の願い。
精神世界で明かされたのは、モニカの屈折したダレンへの想い。
そんな想いを知っても尚、何処まで行っても、人は自分以外にはなれないという現実。
しかし、その現実さえも飛び越えて、前に進みたい。
今、やらなければいけない事があるから。
騎士として叶えたい願望があるから。
「モニカ」からの懇願を受けて、ダレンは再び、モニカとして立ち上がる。
今、自分達に刃を向ける、モニカの友である黒幕を救う為に。
アルギュロスの援護と魂の叫びを受けて、再び目覚めたのは限界を超越した力。
「ダレン」としての心に刻まれた、極限の極致に至る最強の剣。
その剣を使って、解決を手繰り寄せる。
また、「モニカ」として生きる道を歩み始める。
自分は誰にもなれない、それでも叶える。
二つの心を繫ぎ合わせて、未来を掴む。
他人の為に生きられる自分自身を肯定出来る。
モニカに貰ったこの命は彼女の為に使いたい。
騎士としての道はまだ、始まったばかりだから。
まだ、今のモニカは女性の身体なので、全力の剣技に耐えられないというアンバランスさもある。
不安定で、足りない事の方が多い。
だからこそ、仲間の力を借りて、困難を乗り越えていく。
世界に蔓延する不協和音を、優美で整った形へと調律していく。
果たして騎士は少女の心を伴って、何処へ進んでいくのか。
騎士として託された未来を守り抜いて、いつか彼女にちゃんと、返せられるのだろうか?
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