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読書記録:ミミクリー・ガールズII (電撃文庫) 著ひたき

【大人の都合で子供達が涙を流す未来を全力で変えたい】


【あらすじ】

四体の少女型人工素体《ミミック》からなる少女姿の特殊部隊『ミミクリー・ガールズ』。
大統領直轄の隠密として、活動を再開した彼女達に、上官であるメアリーから与えられた次なる任務とは。

「とにかく飛行機に乗って――次の舞台は日本よ」

それは札幌で謎の国際犯罪組織であるバル・ベルデのテロ工作から五輪オリンピックを守る事。
日本極東連合との合同首脳会談に臨むクリス達は、そこで邂逅するカグヤと名乗る可憐な美少女と、悪戦苦闘の連携を繰り広げながら、恐るべきテロを未然に防いでいく。

あらすじ要約


登場人物紹介

狙われた冬季札幌五輪を舞台に、極東連合との合同首脳会談に臨むクリス達が大暴れする物語。


和気藹々とキャッキャウフフなノリで少女としての青春を楽しむクリスやマーリン。
しかし、その中身は煙草と酒と硝煙が似合う渋いおっさんである。
大人だからこそ、子供達より長く人生を歩んできて、学んできた教訓と経験がある。
世界は子供達が考えているほどに、美しく清らかなものではなく。
自らが得をする為に、他者を蹴落として貶める、醜い弱肉強食の世界である。
弱者はいつだって強者にいいように搾取される。
逆らえば、淘汰される運命にある。
だからこそ、力を持つ者ほど、弱者に対して優しく接してあげるのが、ノブレスオブリージュである。
そんなクリスの美学を揺るがしかねない事件が勃発していく。

マイセルフなる悪党が、大統領の娘を拉致して、人工素体が入ったクリス達が、能力をフルに発揮して見事に奪還に成功した。
しかし、その光景は全世界にライブ中継されていたので、国の上層部は保身の為に、映画喧伝と銘打って、デマを流した。
つくづく自分本位で動く国に辟易としながらも、五輪を守る為に日本の北海道へと赴くクリス達。
爆薬入りのタブレットを持たされて、脅されれば行くしか他ない。

その京都の料亭で、思い知るデザイナーチルドレンの問題。
それは、コングロマリットにより裏から支配された、非人道的な実験。
デザイナーチルドレン達は、ミミックであるクリス達を自分達の同類だと認識していた。
戦争を積極的に行う事で、利潤を得る企業。
悪巧みを計画する敵組織と軍事産業の陰謀。
五輪へのテロ行為で世界に混乱をもたらしたい勢力と政府が立てたギガファーム構想を邪魔したい勢力。

涙を流すのはいつも無力な子供達。
その可能性に満ち溢れた未来を全力で守りたい。
クリスは、正義の味方ではなく、子供達の味方でありたいと願う。
この戦いは、けして金の為ではない。
大人としてのプライドの問題。
国家に兵士として、忠誠を誓いながらも、国という枠組みを越えて、子供達を守る為に、あくまでもプライベートな理由で銃を携える。

子供達はいくら特殊な生い立ちとは言えど、大人達の期待に応えるべく、身を削って戦っている。
少しでも世界を良くしたいと頑張っている少女達が悪い大人達の都合で虐げられていいはずがない。
努力しているのが勉学でなく、国家外交だとしても、哀しんでいる子供を救ってやれないのは、大人として、恥ずかしいし、失格である。
その信念に賛同してくれる者が現れた。

ロシアが三つに分かたれた一つである、日本極東連合との合同首脳会談で出会った、癖があまりにも強いが、腕がめっぽう立つ日本の為政者、カグヤ。
不穏な動きを見せる極東連邦を密偵する為に、双子のベルカとストレルカと仲良くなるべく、北海道観光へと繰り出すクリス。
思いのほか、フレンドリーな双子と急接近する中で。
突如、相まみえる英国のスパイであるJB。
どんな意図があって教えてくれたのかは、分からないが、襲撃の候補地は三か所あると宣告してくる。
そして、その予告通りに、セレモニー付近の競技場はテロに、次々と襲撃が発生する。
しかも、傍に潜んでいた内通者の手により、ストレルカが傷つけられてしまう最悪の事態に発展する。

この事件に政治的陰謀が絡んでいるのは、まず間違いない。
自分達の本来のミッションは、帰投して次の指令を待つ事。
しかし、巻き込まれていく子供達をむざむざと見過ごす事は、大人としての矜持が許さない。
子供達よりも、歴史を重ねてきた自分達の大人としてやるべき事はただ一つ。
至極、シンプルで単純な結論。
ムカつく奴らは全部まとめて、ぶっ飛ばしてやるだけ。

そんな結論の元で。敵組織との苛烈な硝煙漂う、ガンアクションとミリタリーバトルを繰り広げていく。
相手は通信を司る、データーサーバーを付け狙う巨大陸上戦艦。
対するクリス達が搭乗するのは50センチ砲を装備した超巨大戦車と、日本製新型戦車と10式を改造した無人戦車ビット群というあまりにも頼りない兵器。
タフで頑丈な戦艦さえも、機転を効かせた作戦で木っ端微塵に破壊する。
その勢いのままに、エネルギープラントへ突撃しようとする貨物船へと潜入して、銃と体術の目まぐるしい大立ち回りを繰り広げていく。

クリス達は見た目は可憐な美少女でも、中身はいぶし銀が光る、熟練のナイスガイ。
圧倒的な戦力差には、頭脳を使った抜け道と相手の隙を突く戦略と、鍛え上げられたパワーで押し壊してやるべき。
厄介な大人達の思惑など知った事ではない。
細かい道理なんていうのは、どうだっていい。
そんな事情さえも蹴っ飛ばして、突っ込んでいく。
その脳筋なマッチョイズムが子供達を笑顔にする。
そうして、醜悪な大人達を成敗していく中で、敵組織の中枢にも子供が担っている事が判明する。

果たして、敵組織にも子供達が自分達に立ち塞がった時に、クリス達の美学はどのようになってしまうのか。
その命題を考えさせられる事になる、「戦争屋」を名乗る謎の組織の存在。
その中には、クリスと同じ顔を持つ少女が現れた。
自らのコピーとされる人工義体と対峙する中で、この戦争の終結と、デザイナーチルドレンの問題を解決へと導く任務を背負うクリス達。 


全ての解決の糸口は子供達の秘密と謎にあると勘付いたクリス達は、どのように敵組織に抗っていくのだろうか?





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