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読書記録:七つの魔剣が支配するVIII (電撃文庫) 著 宇野朴人

【世界の理に反する願いだとしても、彼女との約束を果たす為に】


【あらすじ】

最上級生たちが登場し、さらに活気を見せる決闘リーグ。
しかしその裏で、ゴッドフレイの骨を奪還するため、ナナオたちはリヴァーモアを追って、地下迷宮の放棄区画へと突入を始める。

無数の死者が住まう王国で幕を開ける、決闘リーグでの三人一組に上級生を加えた編成での、リヴァーモアの骨の捜索。
数多の骨獣から古代の秘術によって作られた無貌の古人まで、リヴァーモアの使役する使い魔が、予断を与える事なく彼らに襲いかかってくる。
さらにはレオンシオ陣営も捜索の妨害が入って、自体は混迷を極めていく。
人間ひとり分の骨を蒐集したリヴァーモアの真の目的とは一体なんなのか。
そして、棺の真実に辿り着いたオリバーは、どんな選択をするのか。

あらすじ要約

ゴッドフレイの骨を奪還する為に死霊王国へと挑むオリバー達は、一人分の骨を蒐集するリヴァーモアの真の目的を知る物語。


魔道を極める行為には、別離は付きものである。
そして、魔法使い達の背負う業は孤独であり、誰にも理解されない苦しみがある。
しかし、それを理解しながらも、その信念を曲げる事なく魔道を探求していく彼らはかくも美しい。
彼らは魔術師といえど、人の心を持ち合わせている。
だが、魔道を極めるにつれ、そのプロセスで人の心がすり削られて、魔人と化していく。
そして、そうやって己の道を突き進みながらも、他人の心さえも慮る。
死んだ者を生き返らせる為に、生者の命を疎かにする。
それは、世界では冒涜的な間違った行い。
しかし、自らが禁忌を犯していようとも、成し遂げなくてはならないという使命がある。
そんな矛盾を抱えて生きていけば、どこかで自分の限界を越えてしまって、狂気に身を堕としても無理からぬ事である。

無数の死者が住まう王国にて、三人一組の壮絶な捜索戦。
学生統括ゴッドフレイの骨を奪い、死者の墓を暴く蛮行を働くリヴァーモアは、学園生徒達のヘイトを一身に集めていた。
表舞台の決闘リーグで、〈毒殺魔〉ティム=リントンやロッシやアンドリューズ達と鎬を削りながら。
裏の水面下でも、生徒達がそれぞれの思惑を抱えてバトルを繰り広げる。
迷宮に迫りくるアンデッド共を薙ぎ倒して、前生徒会の権謀術数を掻い潜っていく。
一筋縄ではいかない思惑が入り乱れて。
霊体の骨を読み取る事で、悲恋の棺の少女の願いが明かされる。
リヴァーモアの大切な少女、ファウは悲壮な最期を迎えた。
彼女を甦えさせる為には、ある儀式を執り行う必要がある。
死霊術を引き継ぐべく、千年もの間、棺の中で待ち続けたファウと、その棺を引き継ぎ続けた家系に産まれた者の悲願。 
少女とリヴァーモアの間にあった、恋愛という感情を越えた、宿命を分かち合うかのような約束。
その死霊術を行なうのは生者の名残り。
霊体を糊代わりに器に肉体を繋ぎ合わせる。
だからこそ、死者の骨を集める必要があった。
それこそが、死霊術師の凶行の目的の真相である。
オリバー達は、当初はリヴァーモアを討伐するはずの目的が、彼を救済するものにすり替わる。
それは、彼の目的があまりにも純粋無垢であったから。
彼は魔道に堕ちたのではなく、代々継がれてきた家系のしきたりを追い求めただけであり、一人の少女を救いたい想いから来るものであった。
千年もの間、狭い暗闇の中で一人きりだった少女に、リヴァーモアは広くて美しい海を見せてあげたかった。
それが、彼なりの彼女に対する愛の結晶。
彼は死者に対してどこまでも誠実であった。
彼は魔術師として死霊魔術の限界を理解して、その限界の中で彼の一族の願いを果たしたいという切実な想いがあった。
死者蘇生という間違った行いによって、リヴァーモアは随分と苦しんできた。
その蘇生は世界の禁忌とされる物だったが。
その禁忌の洗礼を嫌となるほどに受けようとも。 

最終的にはリヴァーモアはあらかじめ定めていた目的を成し遂げた。
悠久の時を経ても、失われなかった誓いと約束を果たした。
再生したファウと共に朽ちていく自らの身体を受け入れて、心から納得出来た。
彼の骨集めの目的を知った上で、彼にちゃんと引導を渡したオリバー達。

一つの妄執が巻き起こした事件を解決したオリバー達は、満を持して決戦リーグで勝ち抜けるのだろうか?




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