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読書記録:友達の後ろで君とこっそり手を繋ぐ。誰にも言えない恋をする。 (電撃文庫) 著真代屋秀晃 

【青春の定義とは何か?大人につれ歪んでいく僕達の答え】


【あらすじ】

「青春=彼女を作ること? 青春ってなにも、それがすべてじゃないだろ」

恋に心の傷を持つ高校生、古賀純也は恋愛よりも友達と和気藹々と騒いで友情を育む事こそが、青春だと思いこんでいた。

男女の親友五人組で綺麗な星空を見たり、ファミレスで朝まで駄弁っている今この時こそが、自分達の青春なのだと信じていた。

なのに、どうして俺達は相手が友達でも、恋をしてしまうんだろう。
今までどおりの関係じゃいられなくなるかもしれないのに。

グループ内の一人、成嶋夜瑠が隠していた本音。
純也の親友・宮渕青嵐が好きだと相談される事から。
純也と彼女の間に共犯関係が生まれ、意図せずお互いの傷に触れていく。

青春は恋愛だけではない。けど――。この恋だけは気づかれてはいけない。

友情と恋心が交差する、真っ直ぐな気持ちと歪んだ想いが混じり合っていく。

あらすじ要約
登場人物紹介

恋にトラウマを持つ純也は恋愛よりも友情を大切にするスタンスを貫くに見えたが、夜瑠の隠した秘密を知る事で、価値観が崩壊する物語。


青春の定義とはそれぞれだと思う。
恋愛に価値を見出す者も居れば、友情を大切にする者も居る。
部活動や勉強に精を出す者も居るだろう。
ただ、一つ確かに言えるのは学校での青春とは一度きりだという事。
一度きりだからこそ、悔いの残らないように、全てを出し切りたい。
その為には、取捨選択を強いられる。

高校生という青春真っただ中で、羞恥的な黒歴史を将来、大人になって笑い合う為に、友達を優先させるのか。
それとも、今しかできない恋に身を焦がす為に、恋愛を優先させるのか。
気の合うグループで過ごすのが至上の喜びだった純也。
中学時代からの友人である新太郎と青嵐、高校からの新たな友人である夜瑠と火乃子という仲良し5人グループで何気ないけれど、大切な日常を過ごしていた。

男女の友情を成立させる為には、恋は絡んではならない。
恋という劇薬は簡単に人間関係を破壊する。
大人になれば、それが顕著に現れる。
ならば、大人になんてなりたくないと子供は望むが。
現実は甘くなく、ネバーランドはおとぎ話であり、歳を重ねて、様々な経験が子供を否応なく大人にするのである。
そして、子供は未熟である為に、欠落と歪さを抱えている自分は大人になれないと諦観するが。
完璧でなくとも、大人になる資格はある。
世界は清濁併せ呑む、けして素敵な物ではないのだから。

何気ない日常はふとしたきっかけから、軋む音を漂わせ始める。
ひょんな事から夜瑠が隠していた本性と青嵐への恋心を知ってしまった純也。
彼女との間に秘密の共有が意図せず発生してしまう。 

純也は、過去とトラウマから友達が減るのが怖くて仕方がなかった。
だから、いつも同じ友達のメンバーで、同じ時間を過ごす事に安心感を抱いていた。
そして、夜瑠には家族以外に親しい存在がいなかった。
友達の存在を知らずに、大人の世界を知ってしまったが故に。
恋愛の世界に固執してしまった事で、友情をまやかしだと考える。

過去の恋愛の失敗を引きずって、彼女なんていらないと断言する純也。
普段は猫を被り、自身が探し求める恋の為にそれを優先させる夜瑠。
価値観がまるで違う二人の筈なのに、二人でいる時は素の自分を出す事が出来て、気持ちが楽になれる。
グループが崩壊の兆しを見せても。
せめて、もうしばらくは友情を大切にしたいと夏休みを満喫しようと計画を立てる純也達。
一方で、一人暮らしをする彼の隣に引っ越してきた夜瑠の密かに抱える過去を知ってしまう。

お互いに知り合った秘密を盾に、純也を振り回す夜瑠。
後ろめたさを孕み始める日常が始まる中で、純也は夜瑠の男性遍歴、彼女が隠していた秘密に触れる。
ろくでもない真実に触れながらも、自分の信念である「友情」に従って。
彼女を受け止める事を選び、彼女の生き方を肯定してしまう。

それは、「友情」という側面からすれば最高の選択肢であったのだろう。
しかし、それは諸刃の剣である。
夜瑠の心中は、狂おしいまでに「恋」を知りたいという感情であり。
二人の間で決定的に生まれる違いが、意図せずグループ崩壊の引き金を招いていく。

何も知らない関係から恋人になるのは難しいから、友達から始めようとはよく言うが。
友人から恋人になるにはまた別のハードルがある。 恋仲になれば周りは距離を取るし、面倒で遊びたい学生には敬遠される。
孤独に慣れた大人には決して味わえない青臭い気持ちがある。
勢いだけで繋がった秘密を抱えて、失敗と孤独を経験して子供は大人に成長する。
早く大人になって、自由な恋愛がしたいと望みながら。
不自由な思春期のままに、友情を永遠に閉じ込めておきたいとも思う。

「嫌いだけど、本当に好き」という二律背反した感情を持つ夜瑠の二面性に、散々と翻弄させられる純也。
恋愛は人を容易に変えて、友情よりも重きが置かれ、時には嫉妬心や独占欲を生みだしてしまう。
しかし、人との繋がりとはそんな物なのかもしれない。
死ぬほど愛し合って、結ばれた夫婦であっても、突然に離婚したり、誰もが羨むほどに仲が良かった仲間同士でも、疎遠になったりする。

恋も友情も青春には欠かせない物だが、別にそれがなくても生きていける。
学生の本分である勉強と部活に精を出して、自分の将来の糧にすべきだと考える人もいるだろう。


気心知れたグループであった筈なのに、決定的な価値観の相違を持つ者がいる事で、不安定にグラグラと揺れる人間関係。
夜瑠の過去と純也の過去。
似た経験をしてきた筈なのに、二人は全く違った答えを出した。
大切な仲間である新太郎への明確な裏切りであると理解しながらも。
夜瑠と不純愛を積み重ねてしまう。
親友達への罪悪感と、自分自身の自己嫌悪。
しかし、それを上回るほどの甘美で背徳的な恋。
これが猛毒だと分かっていても、自らを破滅へと誘うとしても。
罪の果実を口に含んでしまいたいと欲求には抗えない。

夜瑠は夜瑠で、純也に対して、「ありのままの自分を受け止めてくれた、男の魔の手から助けてくれた」という事実がある。
それは、初恋の相手だった筈の相手にも感じた事のない強烈な感情。
まるで、全身を蹂躙するかのような多幸感の中で。
目覚める嫉妬と言う名の怪物。

それこそが、本当に彼女が求めていた恋。
視野狭窄ではないと、彼に一方的に押し付けられた恋心。
渇きが潤った心が解き放つ、これでもかと純也を求める狂気。
そして、傲慢だと謗られようが、友情も恋もどちらとも手に入れたいと願う。

それは背徳的ながらも、相手を想う気持ちはどこまでもピュアである。
恋を遠ざけながらも、心の底では恋を渇望しており、そんな互いの本心を見抜いて、惹かれ合ってしまう。
友情を望む、けれど秘密に翻弄される。
それでも助け合ってしまう。
たとえ、仲間達との想い出を裏切る、最悪の引き金になったとしても。

果たして、夜瑠と純也は友人達を欺き続けられるのか?
二人で堕落した果てに救いはあるのか?

歪んだ答えを抱え持って、灰色の青春をどのように彩っていくのだろうか?








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