読書記録:もしもし?わたしスマホですがなにか?1 (ファンタジア文庫) 著 早月やたか
【あなたの味気ない青春を、電子的に彩ってあげる】
陰キャな少年の誕生日に最新型、超高性能な美少女型スマートフォンが送られてくる事で、奥手な少年に代わって様々な機能で学園生活を彩る物語。
現在の世の中でスマホを持っていない人はそうそういない。
社会で生きていく為の必需品になっているし、家族より恋人より、同じ時間を共有するものになっている。
そんな大切な相棒であるスマホ。
もしも、スマホが美少女になったらという、いかにもクール・ジャパンの発想で。
今作のスマホは近未来の最新機種であり、衝撃的な形状なのである。
自分のスマホが擬人化して、生活を支援してくれたら。
現実でも既にAIが様々な面倒事を人間以上の精度でやってのけてくれてる。
青春を薔薇色に謳歌したいという野望を持つも、性格のせいで、頓挫している為明。
陰キャでむっつりすけべでボッチであり、ナチュラルに思考がクズ。
そんな青春の陰の一面を煮詰めたような為明。彼の誕生日に送られてきたのは、ミシオンジャパンという企業が開発した人造人間スマートフォン、エクストラ。
機械ではなく人造人間。
DNAから設計され人工子宮で超速育成された、スマートフォンの機能を付与された元人間である。
うだつの上がらない彼の元へ、親から贈られた最新鋭の人型スマートフォン。
ID交換は歌いながらダンス、着信音はプルルルと自分で声を出すなど、ユニークな擬人化スマホエクストラがやって来る事で。
高性能な機能によって、学校生活が、華やいで楽しいものに変わっていく。
まるでおもちゃ箱をひっくり返したように賑やかに染まっていく。
交友関係やメッセージ、果てはフォルダの中身や検索履歴も把握される。
だから、身から離す訳にはいかない。
そんな彼女を制御する事も出来ず、頭を抱えながらも日常を乗り切っていくしかない為明。
高性能のはずなのに、ドジっ子っぷりを炸裂させる彼女のミスで、結果的にクラスの女の子達と仲良くなる事に成功する為明。
そんな激動の日々の中で、関西出身のクラスメイトの茶子からメッセージが送られてきた事で友達になる事が出来たり。
エクストラがわざと誤爆メッセージを送ってしまった事で、風貌や態度から怖がられるギャル系の扶姫とご飯に行く事に成功する。
少しずつ、閉じた彼の世界は広がっていく。
まだまだ、ナチュラルにクズな性格は抜けきらないけれど、それでも少しずつ、彼の世界は広がっていく中で。
憧れの存在である弓子に勇気を出して近づけるくらいには、原動力が湧いてきた。
彼女はスマホとしてはあまり役に立たないが、彼女のおかげでかけがえのない大切な仲間ができた。
そして、最新の高性能スマホ『πPhoneエクストラ』の出生を期せずして知っていく。
エクストラはいわゆる人造人間である。
人為的に生み出した人を改造してスマホ的な機能を備え付けて誰かに所有される存在として開発された。
デザインDNAの人工子宮での超速育成という人権や倫理的観点を徹底的にスルーした開発過程を知った為明は、それを上回るようなドン引きな発想と言動で、エクストラを使いこなしていく。
そう、為明自身がナチュラルボーンな畜生な少年だったのである。
スマホだからこそ常に一緒、それが生むのは騒動と転換。
為明の生活を慌ただしく変化させていく。
まだまだ始まったばかりの彼らの青春。
エクストラの奇想天外な行動に振り回され続ける中、次第に周囲と繋がっていく為明は青春は賑やかで彩りに満ちたものになっていくが。
この高性能な電子機器を使って、自らの陰キャな青春をどのように駆け抜けていくのか。