読書記録:デモンズ・クレスト1 現実∽侵食 (電撃文庫) 著 川原 礫
【現実がゲームに侵食された世界で生き残る為の戦いが始まる】
山梨県に新設したアルテアという施設で、VRMMOの試験プレイに招かれた少年達が予期せぬ事態に遭遇する物語。
小学生というのは、学校が閉鎖的に感じて、人間関係も複雑かつ流動的なしがらみがある。
新未来を予感させるAMで佑馬と妹の佐羽、幼馴染の健児と水凪で、束の間のゲームの冒険を楽しむ。
大規模アミューズメント施設「アルテラ」の接続ルームから「カリキュラス」と呼ばれる機器を使いゲームの世界に飛び込み。
全く未知の感覚に驚き、級友達と攻略スピードを競い。満足のままに、世界に別れを告げた筈だった。
何故か存在しないログアウトボタン。
突如巻き起こった謎の赤い光に包まれ現実世界に帰った佑馬が見た物。
現実から目覚めると、クラスのアイドル、すみかが化物の姿になっていた。
魔法も奇跡も無かった筈の世界での突然変異。
脱出不能の極限状態の中で。
冷静に動ける者もいれば、パニックに陥る者もいる。
大局的に事態を収集させようと動けども、皆が一致団結する訳ではなく、人間関係の摩擦や仲違いが局地的に起こっていく。
それでも、佑馬と妹の佐羽、幼馴染の健児と水凪の今まで築いてきた絆と信頼感は、どんな場面でも乗り越えてやろうという気概を感じられる。
これは、ゲームであっても遊びではない。
それはゲームであって現実であるという事。
現実とゲームの世界が混在しあう世界で。
訳も分からぬままに佐羽に促され操作をした途端、ゲームの力が彼の身体に宿り。
「魔物使い」としての力ですみかを止める事に成功する。
一難去ってまた一難とでも言うように、仲間の一員である幼馴染、水凪は何故か密室であった筈の「カリキュラス」の中から、痕跡も残さず失踪する。
彼女を探す為に動き出した佑馬たちが見たのは、謎の闇に覆われた「アルテラ」の姿と、その内部を闊歩するゲーム中の化物達であった。
化物と化した同級生やモンスターが襲い掛かる現実世界でアクチュアル・マジックで手にしたスキルを駆使して、先の読めない手探りな戦闘を始めていく。
一クラス全員が事態に巻き込まれているので、複雑な人間関係の動きがあり、皆で協力して脱出しようと動く者もいれば、他人の足を引っ張って、明確な悪意の元に動く者もいる、現実世界での人間関係の煩わしさがこれでもかと描かれている。
クラスという閉鎖されたクローズドサークルで行われる、腹の探りあいや各々の思惑の交錯。
小学生なので、思考に幼稚さも垣間見られ、判断の稚拙さや葛藤さえも当然、存在する。
現実世界にゲームのモンスターが現れるという過酷な世界で。
何が起きたのかも分からない事態の中で、少しずつ提示された謎をかき集めて、覚えたての戦い方や魔法で、子供ならではの衝動性や柔軟さでその場しのぎを乗り切っていく。
プレイ中だったアクチュアル・マジックのシステムが現実でも使えるようになり、クラスのメンバー達が各々のジョブを活用し生き延びていくが、一人また一人と脱落していく。
現実と融合を果たした未知に安寧はなくて、最初のゲームを謳歌していた時とは打って変わって、殺伐とした生き残りを賭けた戦いを続けていく。
しかし、まだまだ解決すべき課題が山積みで。
不信感を拭えないクラスメイトの対立、見つからない幼馴染の水凪の存在、佐羽の謎めいた言動。
そんな恐怖や不安が絶えず、心の中に侵食してくるが、閉鎖空間でサバイバルしていく中では、己の軸となる芯をしっかりと保たなければならない。
ひとまず、どうすべきかを考えた時に、佐羽の正体を隠しながら級友達と合流して、彼等にも力を授けるが。
クラスのリーダー的な立場である少年、光輝が佑馬 が指揮を執ることに反発して。
学級裁判を訳も分からぬままに起こされて、言いがかりのように有罪とされて。
罰として食料を探しに出発する物の、絶対に勝てないと思わせられる魔物に遭遇してしまう。
絶体絶命の窮地、それは期せずして打開される。
それを為したのは佐羽の力。
文字通り「悪魔」のように変貌した、彼女の強大な力。
何故、佐羽はそのような力を宿しているのか?
水凪は何処へ行ってしまったのか?
そもそも、世界は何故このように変貌してしまったのか?
途切れる事のない疑問符の中で、佑馬は一つずつ謎を背負いながら突き進んでいく。
小学生だからこそ、まだ世間の擦れを知らず、何物にも染まらず、真っ直ぐに事態を受け止めて変えていく力があるから。
ある意味、混在していく理解不能な事態にも純粋に対応していく力がある。
ゲームに侵食された世界。
そこでやり取りされる命の駆け引き。
闇に覆い隠された真実。
子供であるからこそ、素直に感情を吐露出来て、感受性の高さ故に、素直に適応していく事が出来る。
理解を超えた範疇の中で、絶望を乗り越える為に身に付けたスキルを駆使して。
果たして、佑馬達は闇に包まれた世界で、可能性と活路を見出だせるのだろうか?
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