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読書記録:隣の席のヤンキー清水さんが髪を黒く染めてきた (角川スニーカー文庫) 著 底花
【鈍感な君を振り向かせたくて、自分を変えていくアプローチ】
【あらすじ】
好きな人の為に、今までの自分をまったく変えてしまう覚悟。
しかし、それを想い人に気付いてもらえない落胆。
学校で一番怖いと噂の清水圭が、ある日突然一際目立つ金髪を黒く染めてきた。
一体どうしたのか?
僕はそれがどうしても気になり清水さんに声をかけた。
「お前のために髪を黒く染めたんだから…、気づけよな…」
本堂大輝の隣の席に座る金髪から黒髪に染めたヤンキー女子高生、圭はがっかりしたような切なけな声が少しずつ小さくなり、少し顔を赤らめて机に顔を伏せた。
その後も大輝が友人との恋バナで「女子と一緒に料理したい」と話すと、翌日、いつも授業をサボると圭と一緒に料理する事になったり、「女子の手料理食べてみたい」と話すと、なぜか二つあるお弁当を分けてくれたり、
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恋バナで盛り上がる少年の隣の席の金髪ヤンキーの少女が不器用に己を変える物語。
見た目が怖い人であるほど、実は他人に対して優しかったりする。
怖い見た目の人が、捨て犬や老人に優しく接しているのを見ると、良い意味でのギャップの差で好感度が上がる。
だけど、見た目がいかつい人ほど、自分の気持ちに不器用であり、他人にそういった弱さを見せる事を恥ずかしがってしまう。
しかし、どんな見た目の人であっても、誰を好きになってもいいはず。
意外な組み合わせのカップルが逆に長続きしていくように、人は自分が持ってないものを持っている人を見てしまうと、憧れの気持ちが湧き上がるものだ。
部活は帰宅部、素朴で飾り気のない性格以外は特筆すべきところがない。
平凡な少年である大輝はサッカー部所属の友人の俊と也恋バナで盛り上がる中で、親友からの「好きな異性のタイプは?」という直球な質問に対して、「清楚な子が好みかな」と深く考えずに受け答えする、何気ないやりとり。
それを盗み聞きしてしまった圭。
想い人の心に近付く為なら、今の自分を変える事も辞さない。
好きな相手の理想像は喉から手が出る程に欲しい情報で。
友人と恋バナで盛り上がっていた大輝の理想を期せずして知ってしまった圭。
彼の好みに合わせようと、長年染めていた金髪を黒髪に戻し、清純な女子高生に様変わりした。
こんなに分かりやすく変わったのだから、少しは自分の気持ちに気付いて欲しい。
しかし、何故か大輝は彼女の気持ちに思いを馳せない。
もともと、ヤンキーだった圭とお人好しな性格しか取り柄のない自分なんて接点がないからと思い込んでいるせいなのか。
大輝自身が、自らの中で生まれる謎の感情に困惑している。
だけど、せっかく劇的に変貌してみせたのだから、このくらいではめげはしない。
圭はヤンキーな見た目に反して、中身は健気で純粋な乙女であった。
二人には繋がるきっかけとなった中学時代のエピソードがあった。
大輝に惹かれたのも、自分のそんな不器用だけど、他人に優しく接するように心がけている姿勢を、率直に褒めてもらえて嬉しかったら。
ヤンキーな自分を色眼鏡をかけず見てくれたから。
だけど、肝心な好きな気持ちには気付いてもらえない歯がゆさ。
鈍感な彼に気付いて貰う為には、大げさなアプローチが丁度良い。
変化球は投げない、あくまでストレートに想いをぶつけていく。
ヤンキーな圭が次々と仕掛けていくアプローチ。
美術の授業で一緒にスケッチを描いてみれば、彼からの視線で赤くなったり。
好きな子と料理をしたい大が展望を語れば、いつもは参加しない調理実習に出席して、一緒に料理したり。
弁当を誰かからもらってみたいと理想を話せば、食べ盛りの大輝の為に余分にお弁当を作ってあげたり。
何度も何度もぶつけてみるが、暖簾に腕押しのように手応えのなさに、暗中模索な圭の恋路。
だけど、自分がしてあげる事に対しては、純朴に喜んでくれる。
無垢な大輝はそれを疑う事もなく受け止めていく。
交わす言葉は乱暴だけど、気付いて欲しいツンデレが溢れ出してきて、ピュアな可愛さがどんどん渋滞する。
あまりにもベタな展開だが、その分かりやすさが逆に楽しげに感じる。
失敗続きの圭を慰めてくれる豪快な性格をした、生徒会長である姉の愛の支援を受けて、企みを抱えて過ごす休日。
終始、想いはすれ違ってばかりでも、時たま噛み合う瞬間もあって。
その瞬間にどうしよもなくときめいてしまう圭。
何気ない日常の中で、少しずつ変えていく言葉遣いと態度。
そんな圭が陥ったピンチも、中学時代の頃のように颯爽と救ってみせた大輝。
「清水さんがもし傷つくことがあったら絶対後悔すると思う」
そんな言葉を軽やかに何気なくかけてくれる彼に、圭はますます惚れ込んでいく。