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読書記録:好きと嫌いのあいだにシャンプーを置く (メディアワークス文庫) 著 瀬那 和章

【人を好きになる事、一緒に暮らす中でその意味を考える】


【あらすじ】

恋は、いつだって、私たちの心をつんとさらっていく。


妻子ある男を好きになった長女、わがままな恋人に振り回される次女、ひたすら恋に臆病な三女。

神戸の街で一緒に暮らす三姉妹の恋を、三篇の短編で綴る、切なくて優しいラブストーリー。

Amazon引用

神戸の三姉妹の切ない恋の物語。


人と接する中で、どうしても好きと嫌いに分類してしまい、誰かに深く関わる事に怯える傾向がある。そういった感情を共に暮らす中で、共有し打開策を考える。
神戸に住む三姉妹はそれぞれ違う人を好きになった。
手の届かない相手ばかり好きになる長女。
ひどい恋ばかりしてきた次女。
傍から見ると恋愛に興味がなさそうな三女。

その恋愛は一筋縄ではいかない苦渋の選択。
相手の事を深く知る程に、恋にクーリングオフがあればと願う。
絶対に上手くいく恋愛など無く、時として痛みや傷として心に残る。
そんな時こそシチューを共に囲みながら。

同じ時間軸を過ごす中で、姉妹の行動がそれぞれの恋の行方に大きく影響して、相互の繋がりが優しく道を照らし出す。

食べ物の好みも物の例え方も、恋の仕方もバラバラな姉妹。
だけど、姉妹だからこそ分かる想いがあって、それに応えようと努力も出来る。

悲しさも苦しさも戸惑いも切なさも、当然あるけれど。
それを分かち合える関係がある事を幸せに思う。
彼女達のように自分を大切に想ってくれる人はいる筈で。
身近に居すぎるからこそ、どうしても言えない気持ちもある。

「どうして、そんな人が好きなの?」という問いに「…でも、好きなの」としか答えられない。

こんなにも辛くて報われないのに、好きだという気持ちを信じて、傍に居続ける。
それが幸せかどうかは本人にしか分からない。
ただ、好きだという気持ちで満足出来るほどに子供じゃないから、幸福の定義が複雑に絡まり合う。

好き嫌いがあっても、勝手にコンプレックスを感じていても、家族は友達のように離れる事は出来ない。
血の繋がりはやはり無視出来ない。
であるならば、一緒に居て楽しいと思えるように自分から働きかけた方が、物事は上手く回っていく。

まったく違う形で巡り合っていたら、こんなにも仲良くなれなかっただろう。
隠し事もする。
嘘もつく。
嫉妬や劣等感といった負の感情を抱く事すらある。
それらの焦燥感、憧れや尊敬は確かにあるけれど、人によって見え方が異なるのもまた事実。
そんなささやかな想いを抱いて、自分の身の丈に合った等身大の恋をしていく。

お互いの恋愛に過干渉するのではなく、冷静に見守り、時には助言し、辛い時には傍に居てあげる。

恋はジレンマであり、魔物でもあり、気付いたら堕ちていく物だからこそ。
その想いに決着をつける為に、想い出の地へと旅立つ。
姉妹が共有している事、秘密にしている事が明らかになる。
この三姉妹だからこそ辿り着いたそれぞれの恋物語の終着点で、改めて気付く絆の深さと恋に夢を見る意味。

ただ甘いだけではなく、痛みや切なさが伴う苦い恋。
偶然が願いを込めた必然へと変わって、遠いようで近かった、当たり前の幸福に気付く。

好きと嫌いの間に余白を置いてみる事。
恋愛をするに於いて、その一呼吸入れる余裕が実は大切で。

独りきりだった長い夜を越えて、恋が教えてくれた痛みと暖かさを分かち合うのだ。











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