11月:真冬の身体を丈夫に、免疫を高めるレシピの作り方〜暮らし編
クリスマスソングの音色が聴こえてくる頃、同時にインフルエンザなどの感染症のワクチン接種のお知らせがやってきます。乾燥し、気温が低くなる冬は、一般的に「免疫が落ちる」季節のイメージがあるようです。
免疫力は、アーユルヴェーダにおいて「体力」と同じ(消化力もです!)。そして、アーユルヴェーダでは真冬は「もっとも体力が高まる季節」とされています。
え、そうなの?と驚く方が多いかもしれないですが、気温と体力は反比例するもの。実は冬はもっとも元気で、長い運動にも耐えることができ、消化に重いものを食べても大丈夫な季節なんですね。
ただし、現代の暮らしはエアコンによる外との寒暖差が原因になって、自律神経が乱れている方が多いのが現実。毎年正月はインフルエンザで寝込んでます、という方。さらに今年はそれに加えてコロナの恐れもあるので、元気に冬を乗り越えるアーユルヴェーダの知恵を取り入れていきましょう。
初冬は体重が2-3kg増えても大丈夫な季節?!
新米、お鍋、脂の乗ったお肉にお魚。寒くなってくると、食欲がぐんぐんわいてきますね。気づいたらお腹にまでお肉が乗っていて、早くもギョッとしている方も多いのではないでしょうか。でも大丈夫。アーユルヴェーダにおいて初冬は体重が2-3kg増えても問題ない、むしろ少し太った方がその後の身体を丈夫にする時期なのです。
アーユルヴェーダでは、冬は初冬と厳冬に分かれています。だいたい11月〜12月が初冬、1月〜2月が厳冬です。
初冬から厳冬に向かっていくと、乾燥と冷えがさらに進みます。「乾」「冷」といえばアーユルヴェーダのドーシャでいうと「vata(風)」。vataはさらに、「軽」の性質もあり、木の種類でいえば柳の木のようなもの。強い風が吹いたらぽきっと折れてしまいそうなほど頼りないのです。
そのため、vataが増える季節には、風邪をひきやすくなったり、疲れやすくなったりする。そうならないように、あらかじめ「乾」に対して「油」を、「冷」に対して「温」を、それによって「軽」を「重」にして体を丈夫にする必要があります。しっとりしていて、温かくて、どっしりとしている。それは木でいえばガジュマルの木のようなイメージ。安心感があって、つい抱きつきたくなりますね。ガジュマルの木は実際に、触るととってもしっとりしています。樹脂です。
初冬のこの季節に「体重を2-3kg増やしてもいい」というのはやみくもに食べて太るというわけではなく、柳の木がガジュマルの木に変化するように、程よく安定感を持たせましょうという意味。滋養に良い食事を摂り「必要以上に重たいなあ」という感じにはならない体重の増え方です。
タマス注意報に気をつけて!
少し太っても大丈夫なのか...と安心してしまうのはまだ早い。初冬のこの季節は、クリスマス・忘年会・お正月とイベント続き。生活リズムが崩れ、師走に向けて仕事も忙しくなり、走りきった後のお正月は完全なる寝正月。そんな方も多いのではないでしょうか?
お正月はゆっくり、のんびり過ごしても良いと思います。こたつでぬくぬくしながら、出しっぱなしになっているお節をつまんだり、つままなかったり、しても良いでしょう。いつ寝たのか、いつ起きたのか、わからないような時期が一年に一度くらいあっても良い気がします。
でも、それを3日も繰り返すと身体はすっかりだるくなり「全く動く気がしない」そんな新年になってしまうことがありますよね。
「身体がとにかくだるくて、心も前に進む気がしない」こんな精神状態をアーユルヴェーダでは「タマス」と言います。人間全体の体質を「vata(風)」「pitta(火)」「kapha(水)」の3種類に分けるのに対して、心の性質も「タマス」「ラジャス」「サットヴァ」の3種類に分け、タマスはそのうちの1つ「停滞性」と訳されます。
タマスを増やす要因は次のような生活や食事です。
・自堕落な暮らし
・寝すぎ
・運動不足
・冷たい油分、消化に重いもの、時間の経った食べ物、保存食
これはまさに正月のことなのでは...!とはっとしますね。
タマスが心の中を大きく占めると、身体や心は次のような状態になります。
(心)
・寝ても寝ても眠い
・気持ちが停滞し、次のアクションが思いつかない
・過去や人、物の存在に執着する
(身体)
・舌ゴケができて、口臭がする
・便が臭い、トイレに便が張り付く
心の状態はともかく、身体の状態はわかりやすいですね。
タマスが増加する、つまりタマシックになるというのは「消化不良」未消化物が体内に増えてしまった時とほぼ同一なのです。
少しくらい太ってもいいかも?と思って油断してしまうと、増えた体重はほぼ未消化物で、身体を丈夫にするどころか不調の原因を増やしてしまうかもしれないのです。
アーユルヴェーダで「免疫力」は「体力」「消化力」と同じ
日本語では免疫力、体力、消化力と分けて使うこの3つの力を、アーユルヴェーダでは全て1つの「力(サンスクリット語でバラ)」と呼びます。つまり、ウィルスや細菌と戦い、身体を健康に守る免疫力は、体力や、消化する力と同じ物と捉えているんですね。
考えてみれば当たり前のことで、体力が十分にあるスポーツ選手は、風邪にかかっても回復が早く、真夏に焼肉を食べてもお腹を壊すことはありません。一方で、体力があまりなく運動も苦手なほっそりとした人は、繰り返し風邪をひくし、冬場でも重たいものを食べるとお腹が痛くなりがちです。
精神的にも、前者はいつも明るく安定している人が多く、後者は精神的に落ち込みがちで、様々な選択の前で手を止めてしまいがちではないでしょうか。
こうしたことからも、免疫力が高く、丈夫な身体を作るには、自身の消化力を見極めながら、消化できる程度の冬の食事で程よく体重を増やすことが大切、ということがわかると思います。
それでは、具体的にどんな風に暮らしていくと良いのか、今月もアーユルヴェーダの智慧からこの時期の生活法をシェアしていきましょう。
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【レシピの作り方】身体と心を整えるアーユルヴェーダ料理
eatreat.で月に1度開催する料理教室のオンライン版。「胃腸を休めるレシピの作り方」などテーマに沿って生活と食事のレシピを動画付きでお…
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