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夢が未来を予知する。心と物質が交わる瞬間。予知夢とウイルスに不思議な関係が?『不思議な世界を解き明かすユング心理学』

 夢や、虫の知らせのような意味のある偶然(シンクロニシティ)など、

科学では立証しにくいことをあえて理論づけようとした稀有な心理学者・医師・思想家に、C・G・ユングがいます。

 ユングは、「連想実験」という数値で実証できる科学的業績も残しているのですが、それ以外の多く業績については数値で実証できるようなものではありません。

 しかし、それでも、いやだからこそ、予知夢のような普通の科学者なら見向きもしないであろうようなことでも、ユング心理学では解きほぐそうとします。

 そんなユング心理学における予知夢のメカニズムに関する理論を概観していきたいと思います。

 まず、ユング心理学では、人間の心の構造を以下のように分類しています。

① 誰しもが生まれながらに持つ、先天的な心の習性である『元型

 元型は、意識できない『集合的無意識』という心の領域にあるとされています。

 ただ、同じ無意識的領域である「夢」でこの領域を垣間見ることがあり、その夢を覚えているという形で意識化することは可能です。

② 意識できる心の動きの習性である『自我

③ 実生活で得た後天的な「心の習性」なのですが、忘れてしまったり、抑圧したりして無意識の中に閉じ込めたものである『コンプレックス』。

 ここでいう、コンプレックスは劣等感を意味しません。

 このコンプレックスは『個人的無意識』という領域にあり、

個人的無意識』を詳しく研究したのが、フロイトなのですが、予知夢とはあまり関係がないので、ここではこれ以上は触れません。
(フロイトの心理学については以下をご参照ください)

 予知夢と関係が深いのは、上記①の元型や集合的無意識です。

 元型というのは本能的なものとか、あるいは物質的な部分と、いちばん底ではつながっている。その元型が物質的世界の物理的な世界とつながっている部分をユングは「プシコイド」と言っており、これは「類心的」と訳されている。(中略)
 元型的な世界とかあるいは類心的なところにいくと、時間や空間はゼロに近くなる。
 つまり、ニューヨークで起こっていることが、日本でも見えるということ。あるいは未来が予知できてしまうということは、時間や空間の隔たりを超えて見えてしまうことになる。(中略)
 要するに意識の立場では絶対に越えられないものが、深い無意識の部分ではできるということになる。そういう無意識の知恵が夢の中に現れることがありうる。

『無意識への扉をひらく ユング心理学入門Ⅰ』林道義著 PHP新書 2000年第1版第1刷 p212-214

 元東京女子大学教授の上記書籍著者・ユング心理学者の林先生の説によれば、予知夢のメカニズムは以上のとおりだとのことです。

 ユング心理学によれば心には、物質・物理的世界とつながっている部分(プシコイド)があるということですが、

似たような感じで、生物であるのか物質であるのかその境界があいまいなものがあります。

 それが『ウイルス』です。

 生物とは何かということについても定義が色々あるのですが、

遺伝子を持ち、その遺伝子情報を後世につたえるための増殖ができるものが生物だとすると、

ウイルスは自らの遺伝子を残そうとする振る舞いを見せ、生物的な面があるのですが、

ただ他の生物寄生しない限りは増殖できず、

また宿主細胞から離れると、ただの物質である鉱物のように結晶化させることさえ可能で、

何者にも依存せずに増殖可能な他生物とは特徴が著しく異なるので、

生物ではないとされる場合が多いものと思われます。

ですが、ただの石ころなどの鉱物は、遺伝子を持たず、増殖することはできないにも関わらず、

結晶化してもまた生物の細胞に入りこめば増殖可能となり、

遺伝子をコピーし続けることができるウイルスを、

物質だと言い切るのも難しく、

プシコイドのような、

生物のような物質のような不思議な境界的存在

と言わざるを得ないものなのかもしれません。

 そして、その不思議なウイルスですが、

生物細胞に入り込み、生物の遺伝子情報をウイルスが書き換える場合もあり、

私達を形作る設計図である人間のDNAは、約半分が太古に、

祖先の身体に入り込んだウイルスによって書き換えられたものだとのことです。

胎児が母親の免疫細胞によって攻撃されないための仕組みが胎盤にあるのですが、

この仕組みもウイルス由来のものであるという説もあり、

その説によれば、私達が母体の免疫細胞によって殲滅されずに、

無事生まれて来れたのは、そのウイルスのおかげだったということになります。

(この点に関する詳しい内容は以下をご参照ください)

 ただウイルス由来の設計図(遺伝子)は、

上記のようにはっきりと役立っているということがわかるものだけでなく、

なぜ、ウイルス由来DNAが残っているのかよくわからないものも多いとのことです。

 しかし、最近の研究によれば、それが生物の機能や進化にとても大切な役割を果たしていることが次々と明らかになっているとのことです。

 中には、普段は眠っているけれども、

ある時「心と物質的世界、物理的世界をつなげる役目を担う脳の箇所を活性化するウイルス由来の遺伝子」などもあって、

(ウイルス自体が物質と生物・生命との境界にある不可思議な存在であるのでそういう遺伝子を持っていても不思議でないような気がなんとなくします)

その活性化を無意識が感じた時に、プシコイドが発動し、予知夢などを見せるのかもしれません(完全に個人的な仮説ですが)。

 なお、そのような不思議なウイルスですが、生物より先に生まれたのか、

あるいは生物より後に生まれたのかも定かでなく、

後に生まれたという説によれば、

生物のDNAがなぜか細胞から家出し、

フラフラと外の世界を彷徨っているものだとしています。

 そして、ある時フラフラ戻ってきて生物に感染し、

先般の新型コロナウイルスによるパンデミックのように、困らせたりする場合もあれば、

生物の遺伝子を書き換えて、

意図的か、偶然かはわかりませんが、

生物のバージョンアップ(進化)に寄与したりする場合もあるとのことです。

 こうしたユング心理学の考え方や、

ウイルスの不思議な存在についての仮説は、

まだまだ科学的な解明がされていない部分が多いですが、

私たちの無意識や生命に対する理解を深める鍵となるかもしれません。

参考)

参考文献)




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