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経営者・投資家・資格受験者・学生必見。いくら売れば採算が取れるのかがすぐにわかる『フワッと、ふらっと、管理会計超入門講座』

『フワッと、ふらっと、管理会計超入門講座』

 例えば、ある人が、カフェを開店し起業することに決めたとします。

 様々な準備が必要だと思いますが、まず検討すべきは採算が取れるかどうかだと思います。

 カフェなら、コーヒーを何杯売れば、採算が取れるのか、その場合の売上高はいくらか、

また何杯売れば、いくら儲かるのか、その儲けで生活を成り立たせることができるのか、

できないなら、何杯売れば、生活を成り立たせるだけの儲け(利益)をあげることができるのか。

 このようなことがわかる手段が『管理会計』です。

 ですので、経営者や財務・経理担当者、マーケティング担当者等は知っておくべき知識ですし、また投資家にとっても有益な知識となります。

 さらに、管理会計は、日商簿記1級・2級、1級建設業経理士試験、全経簿記上級検定試験、中小企業診断士試験、公認会計士試験など多くの資格試験に出題され、

また大学商学部、経営学部等やビジネス系専門学校、商業高校等の授業科目ともなっています。

 よってそれらの資格試験の受験生や学生も知っておくべき知識となりますが、難解であるため苦手意識を持っている方も少なくないと思います。

 そこで、本稿では管理会計の入り口ともいえる損益分岐点分析(CVP分析)を、

どなたでも理解できるように、やさしく紐解き、その面白さ、実務での有益さを実感して頂きたいと思います。

 それでは、電卓をご用意頂いてお楽しみください。


1. 数式(公式)を使わなくても簡単に計算できる

 損益分岐点分析(Cost-Volume-Profit Analysis;CVP分析)とは、

ある期間(以下の例ではその期間を1か月とします)に、いくらの売上高があれば収支が取れるのか等を分析するものです。

 これが分かれば、ここまで売り上げれば収支が合い、それ以上売り上げれば利益が出るということがわかりますので、目標設定をすることができます。 

 損益分岐点分析は、計算原理が非常に簡単で、とりわけ数式を使わなくても、その原理がわかれば簡単に計算できるのですが、

一応、最初に計算式もご紹介いたしまして、

次に計算式(公式)を使わないで、簡単に計算する方法をご説明し、

一応参考までに、その公式の意味もご説明するという流れにしたいと思います。

 損益分岐点分析とは、次のような内容のものです。

 経費(会計学上は費用といいます)は、通常、短期的に見ると以下の2つに分類できます。

① 変動費

 お店等の稼働状況(会計学上は操業度といいます)の増減に比例して、変動する費用です。
 
 材料費、従業員に対する出来高払い賃金(歩合給)、仕入代金等などがそうです。

② 固定費 

 操業度の増減に影響を受けない費用で、毎月一定額かかる家賃、従業員に対する固定給、光熱費の基本料金などがそうです。

 なお、売上高から変動費を差し引いたものを、貢献利益(限界利益)といいます。

 売上高-変動費=貢献利益・・1式

 また、貢献利益を売上高で割り算したもの(除したもの)を貢献利益率といいます。

貢献利益÷売上高=貢献利益率・・2式

 そして、固定費をこの貢献利益率で除したものを損益分岐点売上高といいます。

固定費÷貢献利益率=損益分岐点売上高・・3式

 なお、この損益分岐点売上高においては、「売上高=総費用」となります。

 つまり、得(利益)も損(損失)もない、採算が合う状態、いわゆるトントン状態にあるということになります。

 そして、損益分岐点売上高を超えると、家賃等の固定費は全て回収した(支払いできた)上で、

 1単位販売する度に、1単位あたりの貢献利益が累積されていくということになります。

 数式だけを眺めていても、意味不明だと思いますので、具体例を用いて、どういう意味なのか確認していきたいと思います。

設例)甲さんという人が脱サラ(起業)し、カフェ(喫茶店)の経営者になることを考えています。

 開業をするにあたって調査を行った結果、カフェを経営するためには、以下のように変動費・固定費がかかることがわかりました。

固定費: 店舗家賃; 1ヶ月あたり12万円

変動費: 豆代; コーヒー一杯あたり80円

 説明を簡略化するために、その他の費用はかからないものとします。

 そして、仮に諸事情を考慮した上でコーヒー1杯あたりの売価を120円

以下、一杯あたりの単価を表す場合、価格の前に@をつけます

に決定したとすると、

コーヒー1杯あたりの貢献利益は、以下のように計算されます。

売上高@120円-変動費@80円=貢献利益@40円

 そして、この一杯あたり貢献利益@40円が、

販売するごとに、

積もり積もって、店舗家賃月額12万円と同額になれば、

その時点における販売数量が損益分岐点販売数量となり、

収支トントンとなります。

 では、その損益分岐点販売数量を求めるにはどうすればよいでしょうか。

 簡単です。

 固定費である1ヶ月分の店舗家賃額12万円を、

一杯あたりの貢献利益@40円で割るだけでOKです。

 電卓かエクセルで下記の計算をしてみてください。

(もちろん、筆算でも暗算でも結構です)

家賃12万円/月÷一杯あたりの貢献利益@40円=3,000杯

 この3,000杯損益分岐点販売数量といいます。

 では、この場合の売上高総額はいくらいになるでしょうか?
 
 これも簡単です。

 損益分岐点販売数量3,000杯に、コーヒー一杯あたりの売上高(単価)を掛ければいいだけですね。

損益分岐点売上高  3,000杯×単価売上高@120円=360,000円

  ですので、このケースの場合、月3,000杯コーヒーを販売し、月間36万円の売上高合計があれば、豆代も家賃も支払えて、収支トントンとなります。

 検算してみましょう。

売上から変動費を引いて貢献利益を求め、貢献利益から固定費を引いて営業利益を求めています。貢献利益から固定費を引いたものを営業利益と呼んでいます。

 3,001杯目からは、1杯販売するごとに、

売上高@120円-変動費@80円=貢献利益@40円

@40円の貢献利益が手元に残っていきます。

例えば、さらに3,000杯販売したとすると(合計6,000杯)、

3,000杯×@40円=120,000円

となって、12万円が手取収入となります。

(社会保険料や税金の控除については考慮外としています)

2. 公式を用いた計算 

 なお、最初にご紹介した数式(公式)を用いて計算しても同様の結果となります。

 今一度、公式の確認をしておきます。

売上高-変動費=貢献利益・・1式

先の事例では、

売上高@120円-変動費@80円=貢献利益@40円

となります。

貢献利益÷売上高=貢献利益率・・2式

先の事例では、

貢献利益@40円÷売上高@120円=0.333333・・・

となります。

(実際には、このように割り切れないケースがほとんどですので、あえて割り切れない形にしています)

固定費÷貢献利益率=損益分岐点売上高・・3式

先の事例では、(小数点以下は切り捨てます)

1ヶ月分の店舗家賃額12万円÷0.333333・・≒360,000円

となって、公式を使わないで計算した場合と同じ結果になっています。

 なお、この損益分岐点売上高を、一杯あたりのコーヒー単価@120円で割れば、損益分岐点販売数量を求めることができます。

損益分岐点売上高36万円÷@120円=3,000杯

 これも、公式を使わないで計算した場合と同様の結果となっています。

 なので、日商簿記検定試験(2級・1級)や公認会計士試験などの資格試験を受験するのではなく、

実務に活かしたいという場合は、わざわざ公式を覚える必要はないとは思います。

 が、受験生もご覧になっているかもしれませんし、より高度な管理会計を習得される場合は公式を理解しておく必要もあるので、その公式についても一応説明しておきたいと思います。

3. 公式の説明

 今一度、以下の公式を確認しておきます。

貢献利益÷売上高=貢献利益率

先の事例では、

貢献利益@40円÷売上高@120円=0.333333・・・

この0.333333・・・に100をかけて、

小数点以下第3位を四捨五入した、パーセント表示にすると、

0.333333・・・×100≒33.33%(貢献利益率)

となります。

 これは、貢献利益は売上高の何%であるか、この場合は、売上高の33.33%が貢献利益であるということを示す比率です。

 ですので、一か月あたりの売上高をXとすると、そのXに貢献利益率をかけると、貢献利益の月額が求まり、また損益分岐点上においては、その額が固定費と同額となります。

X×33.33%=120,000円/月(損益分岐点貢献利益額=家賃月額)

と、このようになります。

では、次にこの方程式を解いてXを求めてみたいと思います。

方程式?大丈夫です。やさしく紐解いてご説明いたします。

X×33.33%=120,000円/月

 上記Xを求める場合は、左辺の33.33%がまず邪魔なので、これを消します。左辺の33.33%を消すことができれば、X=解答となって解けます。

左辺をXだけとするために、両辺を33.33%で割り、

(両辺に、÷33.33%をつけないと、左右の釣り合いが取れない、=(イコール)にならないので、両辺に÷33.33%を書きます。天秤と同じです)

X×33.33%÷33.33%=120,000円÷33.33%

とします。すると、33.33%÷33.33%は1となるので、

1×X=120,000円÷33.33%

1×Xは、Xですので(1×4は、4と同じく)、

X=120,000円÷33.33%

となって、方程式を解いて解答を求めることができます。

この形(X=120,000円÷33.33%)は、元の式、

X×33.33%=120,000円/月

から、33.33%が右辺に移動(移項)したかのように見えますので、この操作を通常移項といいます。

 なお、移項させると、数値の前についている符号が逆になります。

 +であるなら-に×であるなら÷に-であるなら+に÷であるなら×に変ります。

 今一度、元の式を確認します。

X×33.33%=120,000円/月(損益分岐点売上高=固定費)

そして、×33.33%を右辺に移項し、符号を÷に変えて、100円未満を切り捨てると、

X=120,000円÷33.33%(貢献利益率)≒360,000円

 よって、損益分岐点売上高を求める公式は、

固定費(本事例の場合月額家賃)÷貢献利益率

となるわけです。

4. 希望利益を達成する売上高の計算

 ちなみに、希望利益を達成する売上高の計算は以下の公式によることになります。

(希望利益+固定費)÷貢献利益率=希望利益を達成する売上高

 例えば、本事例の場合(月額家賃12万円、単位売上高@120円、単位変動費@80円、貢献利益率33.33%)で、

500,000円の営業利益が欲しい場合の必要売上高は(千円未満切り捨て)、

(500,000円+120,000円)÷33.33%≒1,860,000円

となり、

その場合の販売個数は、

1,860,000円÷120円=15,500杯

となります。

 つまり、15,500杯販売すれば、

50万円の利益が得られるわけですが、そうとわかれば、

 15,500杯販売するには、どうすればよいのかを考えればよいということになります。

 25日稼動で15,500杯売ろうと思えば、

一日当りの販売数量は620杯15,500杯÷25日)、

一日10時間稼動するのであれば、

1時間当りの販売数量は、62杯620杯÷10時間)必要ということになります。

 ペアでの来店を考えると、31組62杯÷2人)の来店が、

1時間あたり必要であるということになります。

 このような分析を行えば、ではそのためにどういうマーケティング戦略、

どういうプロモーション戦略を採ればいいのか等の戦略を立てる上での道筋が見えてきます。

 もし、1時間あたり31組を来店させるのが、

戦略上難しいのであれば、

販売単価を上げるという戦略も考えられます。

 例えば、販売単価を1杯当り250円とし、

目標利益を同じく50万円と設定すれば、

必要販売数量は、以下のように計算されます。

貢献利益率 (販売単価250円-変動費単価80円)÷販売単価250円×100=0.68(68%)

希望利益を達成する売上高(小数点以下第一位四捨五入)

(500,000円(希望利益)+120,000円(月額家賃・固定費))÷0.68≒911,765円

希望利益を達成する販売数量(小数点以下第一位四捨五入)

911,765円÷250円≒3,647杯

一日当り必要売上数量  3,647杯÷25日≒146杯
(小数点以下第一位四捨五入)

一時間当り必要売上数量  146杯÷10時間=14.6杯≒15杯
(小数点以下第一位四捨五入)

 全ての顧客がペアで来店することを想定した場合の、

一時間当りの必要来店組数
(小数点以下第一位四捨五入)

15杯÷2=7.5組≒8組

 以上より、価格を単価250円に設定すると、

現実的な来店客数にて、

希望利益が得られることがわかり、

プロモーション戦略等も立て易くなるというのがわかります。

 損益分岐点分析が理解できれば、このような形で、経営戦略などに役立てることができます。

 いかがでしたでしょうか。

 このような経営管理に役立つ会計学を『管理会計学』といいます。

 管理会計学については、

日商簿記2級で初歩的なものが、

日商簿記1級・全経簿記上級・1級建設業経理士試験・公認会計士試験・中小企業診断士試験などで、

より高度で本格的なものが出題されます。

 これらの試験を受験されようとお考えの方、

さらに高度な管理会計を体系的に学んでみたいとお考えの、

経営者、

経理・財務担当者・その他のビジネスパーソン、

投資家の皆様は、よろしければ是非以下をご参照頂ければと思います。







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