小さな声で僕を呼ぶ闇へと手を伸ばす
梅雨時は、不安定になりやすく、北が心配する。
muuteのアカウントも教えて、いつでも見ていいよと言っているのだけど、結果があんまりだから、余計心配なのかもしれない。
優しい物語を読もうと思い、本棚やKindleを覗いて、久しぶりにハチクロを読もうと思う。
確か、北から初めて勧められたマンガ。
9年くらい前に初めて読んだのだと思う。
本屋に平積みされている時は、絵がダメで、読もうとも思ってなかった。
私はそれまで、創作物には必ず悪人が必要と思っていた。
その固定観念を完全に破壊された作品だった。
私は何の才能もない凡人だが、はぐの孤独が胸に刺さり、辛かった。
北は、その頃連載が始まっていた3月のライオンの方が好きらしく、はぐや森田には共感出来ないようだった。
でも1番好きだったのは、真山。
私はだから4巻がとても好きだ。
あと、理花さんとの事があり、スペインにいる彼女と電話している声で、山田が、
真山の声が深くなった
優しくしあうことを許されたのだ
というような事を思うシーンがあり、切なく綺麗だった。
だから、スカパーでアニメを放映した時は、北と楽しみに見た。
…オープニングが怖かった。
メトロポリタン美術館?
作画が安定せず、今日の修ちゃん若いねー、山田こないだより可愛くない?とか、変なところが気になった。
しかも、真山の名シーンで、二人してさらにいらないところに気がついてしまった。
「…キョンじゃない?」
声優が、涼宮ハルヒの憂鬱の登場人物と同じだった。
それから、もう真山がなにを言っても、キョンがコスプレ?しているようにしか見えなくなった。
でも、アニメにはマンガと違い、音楽がある。
OPが怖く、EDもそこまでハマれなかったが、挿入歌が好きだった。
スピッツのアルバム、ハチミツは持っていて、でも、私は愛のことばしか聴いてなかった。
Yを、マンガを読みながら繰り返し繰り返し聴いて、泣くことの少ない私は泣きはしなかったが、胸がしんと静まりつつざわめくようで、痛く苦しかった。
真山の恋に?
はぐの孤独に?
山田の失恋に?
誰も彼も愛おしく、どのエピソードも素敵だ。
ラストの、君を好きになってよかった、のセリフも、北には陳腐に感じられたようだが、私はとてもいい終わり方と思った。
グズつく天気に心が傷つくなら、きらめく物語の刃先で先に傷ついておこう。
ドラマは見たことない。
映画は見た。
…放火じゃん。