「大人になりたい」呟いていた僕たちは今
誰もまだ起きていない朝
真っ暗な庭から僕たちは
逃げ出したんだ痛みから
一番遠い世界を目指して
握った指先が冷たくても
吸った息肺を突き刺して
だけど走っても走っても
僕たちの未来は遠いまま
銀杏並木の見えた駅の前
君は怯えたように言った
逃げきることはできない
歯を食いしばる君の震え
僕はその手ただ握るしか
できなかったあの思い出
諦め上手な大人になれず
摂理と大人の矛楯を語る
殴られても罵倒されても
僕たちは真実を知る権利
あると信じていたあの頃
求めていたものはそれは
本当に小さな約束だった
父がいて母がいてそして
君が笑っている毎日だけ
離婚するから来月に僕は
父とこの街から出て行く
君は母と別の街に行って
振り出しに戻るんだろう
また他人だったあの頃に
君と兄弟になれて嬉しい
君と離れても僕は君の事
忘れないよずっと本当に
君の言葉が信じらないと
僕は握った手を離さない
新しいお父さんはきっと
僕を優しくしてくれるよ
母の再婚はこれで最後が
いいねと笑っていた君の
頬は朝の寒さに白く儚い
大人達に裏切られ続けて
それでもたった一駅でも
逃げることができないは
無邪気な子供だからなの
始発列車の走るだす音が
聞こえた明るくなる空を
僕たちは一緒に見上げて
もうすぐ両親が気がつく
時間が迫っているだから
僕は君を抱きしめたんだ
離れても僕はずっと君を
忘れないよ僕は君の兄だ
3ヶ月年上の兄さんだね
君は笑おうとしてだけど
言葉が転がり落ちる前に
頬に涙が流れて落ちてた
早朝の逃避行は呆気なく
見つかって引き離されて
大人の都合で引っ越した
今君は何をしているのか
幸せでいて欲しいとまだ
祈っているんだよ本当に
秋風があの日と似ている
指先を冷たくするそれを
愛しく感じ僕は手を見た
少年と呼ぶにも幼い頃の
思い出はまだ君の中にも
残っていて欲しいんだよ
今なら君を離しはしない
【自己お題】