おとうさんと呼ばれた日
天気の良い休日
定番となった近所の公園に出かける
ポップアップテントをひらいて、妻さんお手製のお弁当を食べたら娘とシャボン玉
そのうち飽きてきたようで、ボール遊びにかわる
一面に広がったシロツメクサを見て、妻さんが冠を作りはじめる
娘は興味津々で、妻さんの手元をみてシロツメクサをあつめるお手伝い
テントの中からそんな様子を見ていると、そよ風が心地よくおだやかな時間がながれる
しばらく眺めていると、妻さんと娘のところに、隣のテントからテコテコと男の子が近づいていく
「なにをしているの?」
「シロツメクサの冠を作っているんだよ」
「いいなー、ママのぶんもつくって」
お?ボクの分じゃなくて、ママの分をお願いするなんて、いじらしい
男の子のパパさんが呼び戻そうと声をかけるけど、妻さんと娘の周りをうろうろ
気が付けばテントのところまできて、娘のシャボン玉やボールに興味を示して話しかけてくる
「よし、一緒にやろうか」と、シャボン玉で遊ぶ
1歳くらいであろう男の子の弟くんも、よちよち歩きで参加してくる
うちの娘はというと、男の子のパパさんに一生懸命話しかけてる
初めて会うご家族でも、お互いの距離感が良いと、同じくらいの子供を育てているという安心感なのか、信頼関係ができてたりするから不思議。
その日、その場かぎりになるかもしれないけど、こういう縁は大事にしたい
うちの娘と同じ3歳のかずとくん(仮名)が、ボールをもってサッカーをしようと誘ってくるので応じる
3メートルくらいの距離で、ボールを蹴りっこしてみると、ちゃんと足元にボールが戻ってくる
「上手だね!すごいじゃん!」と声をかけて、少しずつ距離をとる
娘だと5分ほどで、違う遊びを始めるのだけど、かずとくんは楽しそうに辞める気配がない
(男の子らしいなぁ)
かずとくんの蹴ったボールが、あさっての方向に転がっていく
そのボールめがけて、走り出したのがきっかけで、追いかけっこがはじまる
とうぜん、加減をして数回に1回負けてあげる
これが楽しかったようで、けたけたけたっと笑って、ずーっと走りまわってる
(やっぱり男の子らしいな、体力がある)
汗だくになりながら娘を見ると、
かずとくんのパパさんとシャボン玉で遊んでる
妻さんは、かずとくんのママさんと談笑しながら、弟くんをあやしてる
だけど、お互いのパパママは、どの子が誰と何をしているかにも意識を置いていて、まかせっきりにしていない連帯感
同じように汗だくになっているかずとくんに、少し休憩して、水分補給しようかと声をかける
お茶を飲む姿を確認してから、自分もテントで水分補給していると、目の前にかずとくん。
ボールをもって、もっと遊ぼうとアピールしている
(お、おう。やっぱり男の子だから、体力あるなぁ)
よし。じゃあ、もう一回ボール遊びするか。と立ち上がる。
かずとくんのパパさんも「ありがとうございます」と笑いながら声をかけてくれる
10分ほど、ボール遊びをすると体力の限界を感じてきて、かずとくんに休憩を申し出る
かずとくんにも水分補給を促して、レジャーシートに倒れこむ
呼吸が落ち着いてきたころに起き上がると、ボールをもって笑顔のかずとくん。
(お、おう。無尽蔵か?無尽蔵なのか?)
かずとくんのパパさんも気を利かせて、「かずくん、パパとシャボン玉やろうか」と声をかけるも
「パパはひとりでやってて。おとうさんとあそぶの!」
(お、おとうさん?おとうさんって呼ばれたぞ?)
うちの娘は、「ちょっとデートしてくる」といって、かずとくんのパパさんと手を繋いであるいていく
よし。じゃあ、かずとくんとボール遊びをしよう
結局、娘がデートから帰ってくるまでの10分程度、かずとくんと走り回った
ちなみにかずとくんは、まだ遊ぶと言っているが、もう無理です。勘弁してください。
デートから帰ってきたかずとくんのパパさんは
"手を繋いで、同じペースで歩けることが感動"と言っていた。
いつも待つか追いかけるか、どっちからしい。
なるほど。普段、当たり前のように手を繋いで歩いていたけど、そうじゃないんだな。
◇
翌日、しっかりと筋肉痛になった足を引きずって、買い物に出かける
妻さんが用事を済ませている間に、娘を連れて駄菓子屋さんへ
レジ横にあるおもちゃのアクセサリーコーナーで、キラキラの指輪を買ってあげる
娘は嬉しそうに指にはめて、「ぱぱぁ!ありがとう!」とご満悦
その様子を見て、
あぁ、昨日デートしてくるって手をつないで歩いていった後ろ姿に、
ちょっとダメージを受けていたのかもしれないと気づく
そういえば、かずとくんには、おとうさんと呼ばれたな・・・。
こんなことでダメージを受けてて、大丈夫かオレ!?
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