良い塾とは
個別指導塾を中心に、良い塾の条件を挙げます。
塾選びのご参考などに、お役立てください。
1 結局、勉強させられるか
まずは、これが基本です。
個別、集団、オンライン、AI、自立型・・と差別化という目的(企業都合)のため、実に多くの塾が存在しています(「誰一人教えない(生徒同士が教え合う)塾」が流行するのも、まもなくでしょう)。
もちろん、その子に合った「型」はあります。
ですが、人は成長しますし、学力の向上具合や教科によっても違います。
「形態」よりも、勉強させ(続け)られるかがほとんどの保護者のペインポイントです。
その仕組みがあるか、子どもが「勉強する」と言うかどうか。
或いは、教室長や講師が、前向きな発言を生徒から引き出すアサーティブな関係性を早期に築けているかどうか、まずはシンプルにそれが大事だと思います。
2 教室長の人間性
教室長が、保護者対応の窓口になります。
また、教室長は売上や揉め事、成績や合格などあらゆる教室における責任をとる唯一の人物です。
それがゆえに分厚く仮面を被ってしまったり、精神状態が不安定になりがちです。
多くの年下に囲まれる中で、「大人としての振る舞や冷静さ」をセルフで保つ必要があります。
教室内では、白黒のつかない問題がいくつもあり、教室長は都度細かいジャッジを行います。
例えば、講師が生徒の態度に対して注意をしたところ生徒にはそれが気に入らず、親から講師の言動に対するクレームがあったりします。
どういう理由、価値観でジャッジし、それをどの程度言語化して誰に説明責任を果たすことができるか。正解のない問いへの答えとジャッジは教室長の感性を周囲に伝え、暗黙のうちに広がり、時間をかけて文化になります。
塾は属人化しやすいので、同じ看板でも教室長によって様々違うのはこのためです。
加えてどの講師を抜擢するか、活躍させるかも、教室長のカラーによるかもしれません。
一人ひとりを大切に、平等に接することができるか、そういった高い人間性も求められます。
また、所謂「起業都合」で不要なコンテンツを強引に売りつけてくる教室長も、未成熟で危険といえるでしょう。
万一ときほど、人間は本性を表します。
生徒同士のトラブルが起きたときの対応など、事前確認を行うことでできるだけ本性を見分けましょう。
3 講師の指導力
実際に指導する講師選びも、もちろん大事です。
まず「講師の指名ができるのか」は、ポイントです。
「体験時に担当を約束した講師が、いざ授業がスタートすると違う」ということはよくあります。
講師にも、教育を行うだけの人間的成熟度が求められます。
例えば生徒が言うことをきかなくても、冷静に相手の思いを先読みし(或いは仮説を立て)て解決する必要があります。
思う通りにいかないからといって怒鳴るという行為は、それそのものの未熟さもさることながら、相手を一人の人間として認めず見下しているといえます。
学習指導の面では、子供にとって異空間である「塾」という場所の力を借りて、出来るという体験、感覚をインパクトをもって味わせられるかが大事です(人間は、誰しも良い印象が残るからです)。
塾でのインパクトや良い印象を帰宅後や学校生活、最終的には入試のときに活かせるかが大きな価値となります。
図や絵にして示すと印象に残るので、そういった工夫ができることもポイントとなります。
生徒のアウトプットが、インプットになります。
ですから、例えば生徒がふざけて「織田ノブナカ」とアウトプットすると、それが知識としてインプットされます(テストのときに、その響きが優先的に浮かんでしまいます)。
その効果がわかり、生徒にアドレナリンを出させ、冷静さと高揚感をうまく使い分けて生徒に印象を残す、そういった要諦がわかっている講師が良い講師です。
また、生徒にアウトプットしてもらうことで自分(講師)の伝えたかったことが何割伝わっているか確認できるのも、デキる講師の条件です。
そして、これらの基礎にあたる「生徒が思ったことを自由に発信できる関係性と環境」を早期に築けるかも、デキる講師の条件となります。
どの問題(内容)をその日の授業で強調するか、その見極めも大事です。
生徒には、その子が①解ける問題、②解けない問題、③(受験やテストに)必要な問題、④必要でない問題があります。
また、①と②はそれぞれ「余裕で解ける」「まったく解けない」など、「解けるライン」との距離も異なります。
講師としては、②の中で最も「解けるライン」に近い問題をチョイスし、それを解くためのインプットに最も力を入れるべきです。
間違っても講師自身の都合で教えたいものを教えたり、すでに余裕で解ける問題を何度もやらせるのはいけません、生徒のやる気は下がります。
なお、生徒が「これを教えて」と持ち込む問題を最優先に指導するのも、一考の必要があるとお分かりいただけることでしょう。
残念なことに、コロナを境に学習塾の指導クオリティは激下がりしました。
コロナ最初のころ、「学びを止めない」という大義名分のもとどの塾も強引にオンライン授業を推し進めました。
結果、準備不足のため「まずやってみて→合ってるねor間違ってるね→じゃあ次これをやってみよう」という手抜き授業がスタンダードになってしまいました。
たまに口を開いたかと思えば教科書や解説を読んでいるだけの授業となり、生徒は「それは家でもできる」と感じました。
この流れをアフターコロナでも断ち切れなかった多くの塾が、講師の質の低下と講師不足、生徒不足に悩んでいます。
4 通塾1から2か月程度で何かしらの成果を出し、生徒と保護者に報告書がある
例えば、薄毛が気になり発毛剤を使い始めます。
使用後1から2か月で「何も変化がない」と、使用をやめませんか?
逆に例えば「子どもが自分の机で勉強するようになった」などの変化があると、その後にも期待できます。
テストや入試などがすぐにあれば成果を測ることはできますが、そうでなければ特に「塾に通い始めたからこその変化」に注目ください。
親は子の変化やアウトプットを最優先し、子も子の変化やアウトプットを最優先します。
なお、その後も変化や成果を出し続け、苦手を克服させた上で第一志望校に合格させる塾は、最強です。
5 高いレベルでバランスの良い塾
塾(教室)は、ラーメン屋みたいなものです。
教室は店舗、教室長は店長、講師は麺、テキストはスープ、ペンは箸のようなものです。
一昔前なら「店内が不潔で店長は無愛想でも、麺とスープは絶品!」というラーメン屋が流行ることもありましたが、今は違います。
「室内はきれいで教室長、講師ともレベルの高い塾」が時代に合った良い塾でしょう。
6 教室に文化はあるか、それに馴染めるか
教室は、お風呂にも例えられます。
35度の湯船が心地よいのか、45度が好みなのか。
35度というのは、例えば宿題をやってこない生徒がいた場合、誰一人注意をしない教室です。
そんなところに、しっかり勉強したい生徒は馴染みません。
教室の雰囲気や文化は、多感な子どもたちに多大な影響を与えます。
「同じ学年の子の様子」をみれば、それが入塾後のお子さんをだいたい反映しています。
「通塾生徒が多い」ということは、それだけその教室の文化が尖っているということです。
「じゃあ、生徒数の少ない教室がいい」となりますが、それはそれで統一感がなく「指導者がそれぞれ違うことを言う」「私は知らない」が多発し、何より活気に欠けます。
また、統一感がないがゆえに「一人一人の価値観に合わせる」こととなり、各自に負担がかかり、じわじわとレベルダウンします。
7 その他
個別指導塾というのは、野球の守備陣形と似ています。
生徒をボール(打球)に例えると、それぞれの守備位置(授業ブース)に飛ぶ打球(生徒)をそれぞれの講師がきちんと捕球(惹きつけて)してくれれば、教室長は事前に思い描いた計画通りの1日を過ごすことができます。
それによって、教室は少しずつパワーアップしていきます。
ですが、一人がエラーする(生徒を惹きつけれない)と、教室長はそこをカバーしなくてはいけなくなります。
それによりバランスを崩した教室は、それ自体誰にも気づかれないまま、少しずつレベルダウンしていくのです。
私は、塾はもう少しテクノロジーを活用すべきだと思います。例えばChatGPTを使って小テストを作成するとか、アインシュタインのアバターがメタバース内で物理学を指導するなどです。
学校教員の長時間労働に代表されるように、教育業界は古い体質です。
それが多くの既得権益をもたらし、新技術の導入スピードを下げています。
いずれにしても「子供がどういうアウトプットをし、変化を見せるか」を注視し、それが良いものであれば良い塾を選び通っていると思って良いでしょう。
そして「良い学びの場」と思ったら、知り合いや兄弟に自身を持って勧めてください。