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【小説風エッセイ】割れた〜ありがとう、美濃焼のカレー皿〜[ものを愛でる](1516文字)

2023年8月5日の夜のことでした。

私はいつもどおりに、台所の流しで洗いものをしていました。

油ものではない食器から洗い始めて、次々と洗い上げ、油ものの美濃焼の磁器のカレー皿の番になりました。

2023年の正月早々に我が家に来て、毎日のように活躍してくれた皿です。

元日に、夫がオンラインショップでみつけて、「夫婦でお揃い」で買ってくれました。

その美濃焼のカレー皿は、だいたい円形で心地よく歪んでいて、全体が茶白色っぽく、端のほうから中央に向かって薄赤茶色っぽい大きな渦巻き模様が入っていて、全体的につるんとして光沢があり、点々と薄い小さな白い斑点があり、裏側には段々があり、ところどころ小さな穴が空いている、美濃焼の良さの出ている器で、食器棚に収納していても温かみがありました。

とにかく気に入っていて、見るだけでも嬉しく、料理を盛り付けるたびに幸せな気持ちになっていたものです。

一つだけ困っていたのが、私の手の大きさに対して、その美濃焼のカレー皿が大きすぎて、洗いにくかったということでした。

油ものを乗せることが多く、食器洗い石けんで洗う時には、いつも気を遣いました。

皿の裏にある高台と皿の端の口縁に指をかけて、慎重に洗いましたが、美濃焼のカレー皿の底から口縁にかけての丸みが絶妙に、その美濃焼のカレー皿を持った時の私の手の曲がり具合と合ってしまい、力が入りにくかったのです。

だから、いつも、その美濃焼のカレー皿を洗う時には、鼻歌もやめて、意識を集中して、流しの底に、その美濃焼のカレー皿の口縁を押し付けながら、静かに丁寧に洗っていました。

それが、失敗してしまったのです。

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