骨量減少は30代すでにから始まっている?!骨粗鬆症のリスクファクターは? #2
前回のおさらい
高齢者にとって股関節骨折がどれほど致命的なのかを
論文で紹介し、前回は”変えられない”リスクファクター;
年齢>50歳以上、女性である、アジア人である、骨折の家族歴がある
をご紹介しました。
はじめに
一般的に骨量や骨密度は20代後半までは
成長期を過ぎた後でもゆっくりと増加します。
個人的にとても大事だと思うのでもう1回書きます。
骨量や骨密度は20代後半までは増加します!
10代20代の方はぜひ今のうちにできることを!
と大声で伝えたいです。
そして30代以上の方はまず、前回と今回2回にわたって
紹介するリスクファクターがいくつあるかチェックしてみてください。
そして、今後BMD(骨密度)と運動についてや
BMDとサプリに関してもご紹介する予定ですので
よろしければ読んでみてください!
今回は”変えることができる”リスクファクターです。
主に、ライフスタイルに関係することです。
ということで、
テーマ:骨粗鬆症のRisk factorsを知る
①喫煙
喫煙は、ホルモンレベルに影響を与えるため、
骨折のリスクファクターとなります。
また、喫煙する女性は一般的に閉経年齢が早くなります。
National Institute of Arthritis and Musculoskeletal and Skin Diseases
によると、喫煙は20年以上前に骨量減少のリスクファクターとされました。
喫煙者はアルコールを飲む量が多く、
運動量が少なく、食生活が乱れがちであるということも
関連しているのではないかと言われています。
禁煙すればリスクは減りますが、
喫煙量を減らすだけでも効果があります。
#3の前向きコホート研究の結果で 、
股関節骨折した人は骨折していない人に比べ
タバコに曝露されている人が多かったですね。
②アルコール
過度の飲酒は、骨の構造や量に影響を与える可能性があります。
米国国立アルコール乱用・アルコール依存症研究所が
発表した研究によると、
若い頃の慢性的な大量飲酒は骨の質を低下させ、
飲酒を止めた後でも骨量の減少や骨折の可能性を高める
可能性があることが示されています。
現時点では、飲酒が喫煙、運動、栄養などの
他の要因とどのように相互作用するかについて
正式な研究はほとんど行われていませんが、
1日3杯以上の過度の飲酒はビタミンDの代謝と
転倒のリスクに影響を及ぼすと考えられています。
1日3杯以上ってどのくらい?って思われた方へ:
ビールだと500mL缶で2.5本くらい
ワインだと450mLなので3杯くらい
アルコール度数40%以上の強いお酒だと120mLくらい
③カルシウム不足
骨といえばカルシウムと思われる方、たくさんいますよね?
体内のほぼすべて(98%)のカルシウムは骨に貯蔵されています。
カルシウムは実は骨を構造なだけでなく、
骨に強度や柔軟性を与えて、
体の様々動きを可能にしています。
また、カルシウムは骨を作っていることだけではなく
体の中で様々な役割があります。
血管の収縮や拡張させたり、筋肉を動かしたり、
血を固まりやすくしたり、
神経伝達をすることで脳を機能させたり、
心拍数を調整したり、
副甲状腺ホルモンというホルモンの分泌を仲介したり
心臓や筋肉、脳などを動かすためにカルシウムは必須なので、
血液中のカルシウムが足りないと、カルシウムをたくさん
保存している”カルシウムの貯蔵庫”である骨から
カルシウムを供給します。
このような状態が続くと、
貯蔵庫である骨のカルシウムも減ってしまいます。
なので、カルシウムを取らないと骨が弱くなると言われるわけなんです。
じゃあ血液検査で血中にどれくらいカルシウムがあるか
調べてもらえばいいの?と思う方もいらっしゃると思うのですが、
残念ながら、実はそう単純にはいかないのです。
日常の検査で調べられているカルシウムは総カルシウム濃度で
これは骨にどれくらいカルシウムがあるのかや、
骨から以上な速さでカルシウムが失われているかを
示すものではないからなんです。
④ビタミンD不足
よくカルシウム不足と一緒に話題になるのはビタミンDですね。
それはなぜかと言うと、
ビタミンDがカルシウムの吸収に必要だからです。
活性型ビタミンDの主な作用は、
腸からのカルシウムの吸収を促進することです。
なので、ビタミン D が不足すると骨量減少が起こり、
骨粗鬆症や骨折につながったり、
長期的には骨軟化症につながる可能性があります。
ビタミンDは血液検査で血中濃度を測ることができます。
サプリメントのお話をするときにもう少し詳しく書くつもりですが、
骨粗鬆症のリスクがある人、もしくは骨粗鬆症の人には
30〜60ng/mLが十分もしくは正常の範囲です。
それ以外の人は
20〜50ng/mLが十分もしくは正常の範囲です。
どうしても気になる方はビタミンDの血中濃度を調べてみる
のもありまもしれませんが、骨粗鬆症の診断がついていないと
保険適応ではないようです。
⑤運動不足
骨格の中にある骨組織の量は、骨量と呼ばれ、
定期的に運動している若い成人は、そうでない人に比べて
骨量のピークが大きくなります。
骨量は20代後半まで成長し続けることができます。
ピーク時の骨量が多く、骨密度が高いと
骨粗鬆症のリスクを減らすことができるので、
10代20代の骨の間に骨量のピークをあげておくことが
いかに大事か分かりますね。
30歳以上の女性および男性は運動することで、
骨量の減少を最小限にしていくことが大事です。
リスクファクター#1でお話しした、女性は閉経後に
骨密度が一気に下がるので、それまでになるべく
高い骨密度を維持しておくことが大切です。
ある研究では、
病気、運動不足、麻痺などの筋肉を使わないことで
筋肉が痩せ、筋力が低下した状態では、
筋肉を使っていない部位で骨量と骨密度に低下が見られました。
このことから、骨量の維持に筋収縮=つまり、運動が
重要であるこいうことを示唆しています。
⑥BMIが低い
BMIは体重と身長のデータを使って計算される肥満度のことです。
2006年に発表されたcross-sectional 研究にでは、
50〜84歳の女性のBMIと骨粗鬆症の関係を観察しました。
これによると、BMIの数値が1変化(上がる)することによる
骨粗鬆症へのリスクは①〜⑤の”変えられる”リスクファクターよりも
大きいのではないかと指摘されました。
このcross-sectional研究方法は、ある時点における特定のグループの
スナップショットを撮るような感じなので、BMIが1あがることと
骨粗鬆リスク軽減との関係は証明できません。
この2つ関係している可能性があるということです。
ですが、女性でBMIが低いことは骨粗鬆症のリスクファクターで
あることは、信頼性の高いメタ分析という手法を用いた論文で
確認されていることです。
*長期にわたる高用量のステロイドの使用
”変えることができるリスクファクター”に分類するのは
相応しくないかもしれないと思ったので*にしました。
ステロイドは、関節リウマチ、炎症性腸疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)など、慢性炎症性疾患の治療によく処方されるお薬です。
これらの疾患では多くの場合、ステロイドを
増量したり長期に渡って使用する必要があるため、
高頻度で骨量減少や骨折を引き起こす可能性があります。
副作用は使う量に依存して、骨の形成を妨げたり、
消化管でのカルシウムの吸収を抑制したり、
尿としてカルシウムの排出を増加させたりする
ステロイドの作用に直接関係しています。
まとめ
今日は”変えることのできる”リスクファクターを見てきました。
喫煙、アルコール、カルシウム不足、ビタミンD不足、運動不足の
5つでした。
#1のリスクファクターと合わせ、何個当てはまっていましたか?
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カルシウムや、ビタミンD不足は
骨粗鬆症のリスクファクターとお伝えしてきましたが、
むやみやたらとサプリメントを使うことを推奨している
わけではありませんのでご注意ください!
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最後に
ここまで読んでくださった方は、
どうやったら今から骨密度を上げられるのだろうか?
とか、今飲んでいるCaやビタミンDのサプリは意味があるのか?
など疑問に思っている方もいらっしゃると思います。
若いときのように運動をすればした分
骨密度が上がり”強い骨”になるとまではいきませんが(泣)
だからこそ、世の中にはBMD(骨密度)と運動の関連性や
BMDとサプリに関しての研究・分析している人たちがいます!
今後、これらをテーマにした質の高い論文を紹介する予定です。
ご興味のある方ぜひフォローして次の記事も
読んでいただければ幸いです。
いくつになっても自分の足で歩けるというのは
それだけで最強ですから!
最後まで読んでくださりありがとうございました。
Moet
参考文献
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https://www.bones.nih.gov/health-info/bone/osteoporosis/bone-mass