「東大式 世界一美しく正しい歩き方」を読んでみたが世界一は怪しすぎる
「世界一美しく正しい」に何の根拠もないので,そう書いてしまうセンスを疑うが,書いてあることは,インナーマッスルを鍛えることが大事であるとか,姿勢を良くすることが大事であるとかなので,まともだと思う.東大式となっているのは,東京大学名誉教授である著者の長年の研究成果に基づいているためだ.
東大式 世界一美しく正しい歩き方
小林寛道,日本文芸社,2018
本書で強く推奨されているのが「大腰筋ウォーキング」だ.
大腰筋ウォーキングとは,こうした負担や無理を除いて,体をできるだけ自然に,ニュートラルな状態にして歩く方法です.ボディ・インナーマッスルをはたらかせ,体幹を大きな支柱にして体を支えるためバランスがよく,安定して,体への負担が少ないのが特徴です.
大腰筋は,背骨の近くにあり,上半身と下半身を繋いでいるインナーマッスルで,姿勢維持のために最も重要な筋肉のひとつとされる.運動能力の高い人は大腰筋が太く,大腰筋が細い高齢者は寝たきりになりやすいそうだ.
あまり体を動かさずにいると,筋肉量が減少するサルコペニアになり,
・姿勢が悪い
・肩が上がらない
・足が上がらない(つまづきやすくなる)
などの症状が現れ,酷くなると,寝たきり老人になる.
大腰筋ウォーキングは,大腰筋を含むインナーマッスルを使うため,筋肉量の維持・増加,姿勢の矯正,肩こり・腰痛の解消に役立つほか,以下のような効果もあると書かれている.
・内臓の機能が高まり活発になる
・便秘の解消
・老廃物や疲労物質を排出する
・脳内の活性化がはかられ,認知機能の低下を予防する
ただ,本書中に根拠は示されておらず,参考文献も挙げられていない.「東大式」を謳うなら,参考文献くらいは挙げておいて欲しい.
「世界一美しく正しい歩き方」について興味がある人は本書を読んでもらいたい.私が実践するのは骨ストレッチだけどね.
この種の,実際に體を動かしてみないと意味がない系の本に共通しているのは,本を読んで実行してみても,正しくできているかどうかがわからなくて困るという点だ.その点,本書で推奨されている「大腰筋ウォーキング」については,全国20箇所ほどにあるジムで,トレーニング装置を使って体験できるようだ.近くにあるなら行ってみる価値はあるだろう.
一方,骨ストレッチは講習会が開催されている.京都講習会には私も参加しているが,直接指導を受ける効果は大きい.そこまでするか/できるかは人それぞれだが,とにかく,立つ・座る・歩くときの姿勢を良くすること,インナーマッスルや体幹をしっかり使うこと,體全体を滑らかに動ける状態に保つことは重要だ.オフィスワークで猫背な人,肩凝りの人,腰痛に悩まされている人など色々いるだろうが,放置していないで,早く対処した方がいい.
© 2021 Manabu KANO.