- 運営しているクリエイター
#逆噴射プラクティス
没噴射小説詰め合わせセット v2024
こちらは逆噴射小説大賞の没作品群となります。
お手すきの方はぜひ。
亡国の星条旗 燃え立ったキノコ雲を中心に広がる爆風が、万物を薙ぎ払った。
サウスダコタ州ラシュモア山。五人の大統領の巨像が、眼前に連なるキノコ雲の群れを見下ろしている。
その頭上に、巨鳥の如き翼を広げた巨人──白堊館󠄁が降り立とうとしていた。
「クソ!」
白堊館󠄁の執務室に座すエデンは悪態を吐いた。そして滑る操縦桿を
(没)BURN IT DOWN
『我が子威吹よ、汝を指したる凡ての預言に循ひて、我この命令を汝に委ぬ。これ汝がその預言により、信仰と善き良心とを保ちて、善き戰鬪を戰はん爲なり』
そう水瀧楓は紅威吹の耳殻に呪いを吹きかけた。
「ほらはやく」
楓は傍らに立つ威吹の手首を掴み、その指先をビルの一つに合わせる。
閃光がはためく。毒々しい赤紫色の花を開く大火球が眼窠の中で燃えた。生きとし生けるものを焼き払う劫火の嵐。眼前の超高層ビル
(没)DArkSide
パンドラによって遍く厄災が解き放たれた匣には、希望だけが遺った。
では拭えぬ闇に囚われたこの世界に遺ったものとは。
無明の闇に閉ざされ翳や陰が跳梁する末法の世にあって光を放つものに近づいてはならぬ。逢魔はそう教えられてきた。
それは人魂を薪に焚べた輝きであり、捕まれば最後、虚にされた肉体に闇を吹き込まれた幽鬼となって人を狩る末路を辿るからだ。
だが眼前のこれは違った。
何ともつかぬ奇
(没)廃業探偵の愁い
「探偵に最も必要な素質とは何だと思いますか?」
学生時代のことである。卒業記念にと単身乗り込んだシベリア鉄道の車輌内で、私は“探偵”と出会った。
自分の部屋で暇を持て余していた私は、ハバロフスクで乗り込んできた同じ日本出身の男と親交を深めることになった。
ややオーバーなデニムのボトムス、ゆるりとした白いシャツの上にスエードのベストを羽織り、中折れ帽をかぶっている。黒縁伊達眼鏡の向こうで狂気