【狡さとは】 映画 「君たちはどう生きるか」
この作品は、今度こそ本当に駿さんの最後の作品なんだな、と途中からしみじみしながら見終えた。
長野へ疎開した時は、「トトロ」や(駿さんでは無いけど)「思いでぽろぽろ」みたいだな、と軽く思う程度だったのだけれど、塔の中の冒険が始まってからは、毎場面毎場面、濃淡は違えども、これまでの作品を彷彿とさせるものばかりだった。
鈴木さんから駿さんへの愛とリスペクトとお疲れ様も感じた。こりゃ事前に何の広報も出せないわ。だって、この作品は、駿さんが見ている世界のコラージュなんだもの。
これまでも今も、駿さんに見えていた世界が、そのまま提示され、その上に今回の物語が乗っかっている感じがするのだ。
もちろん今回の物語にだって筋書きはある。あるのだけれど、それ以上に、そうか、駿さんには、鳥の群れはこういう風に見えているのか、とか。そこからの「飛ぶ」ことへの憧憬なのか、とか。世界はこんな風にあっち側と繋がっていると感じておられるのか、とか、世界の成り立ちをこう捉えているのか、とか。こういうことが、夢の断片のように紡がれていく。
夢の断片って辻褄合わないし、成立していなかったりするし、目覚めた直後は鮮やかなのに、しばらくすると綺麗さっぱり忘れてしまっていたりする。それと同じ感覚で、映画館を後にした。
世界の均衡を守ってくれていた人は、もういない。そんな混沌とした人間界で生きることを決めて、たくさんのわらわらと共に、生まれてきた私たちは、さて、どう生きようかな。
ここまでちゃんと後押ししてくれているのだから。
明日も良い日に。
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