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【王配とは】 エリザベス女王崩御で創訳者が思うこと

エリザベス女王陛下が崩御された。70年に渡る在位で、15人目の首相を任命したすぐ後のことだった。

エリザベス陛下の後を継ぐのは、チャールズ王。よって、国歌のGod Bless the Queen は、God Bless the Kingと変更になる。変更される国歌の歌詞はこちらの記事参照。

国歌の歌詞が変わるなどということがあるのか、と感銘を受けた。面白い。

さらに興味深いのは、王・女王の訳語である。

チャールズ王は、英語にするとKing Charles。ここまでは普通。面白いのは、奥様のCamilla夫人である。カミラ夫人は、王妃となる。だが英語だとQueen ではなく、Queen Consortとなる。Consortは、多くの場合は「王配」となるのだが、日本語の「王妃」であれば、「女王」と違い「伴侶感」があるから良いということか。

ちなみに、エリザベス女王の旦那さまの故フィリップ殿下の正式な肩書きは、フィリップ王配殿下。英語だと、Prince Consort。

そう、Prince(王子)なのだ。

King Consortの日本語は「王配陛下」となり、訳語もPrince Consort「王配殿下」と区別ができる。Kingという言葉を使ってしまうと、政治力が強くなったり、王位継承権の問題が出てくることを配慮してのことなのかも知れない。

例えば、王妃に息子さんがいた場合(この場合はチャールズ元王太子)、王配殿下(=フィリップ殿下)はあくまでも伴侶である。よって、息子さんよりも王位継承権が低くなるよう、Princeとしているのではなかろうか。

だとしたら、King Consort(王配陛下)が王位継承権2位になるということもあり得るのだろうか。そういう人が歴史上いたのだろうか。と思ったので...

調べてみた。

これこそが言語オタクの沼である。ズブズブ。

調べた結果、どうやら、イングランド史上、King Consortはとても少ないようである。検索しても、1人しか出てこない。16世紀のメアリー1世(ブラッディメアリー)の旦那さんのフェリペ2世である。

ただしこの方、殆どイングランドにいなかったらしい。また、王位もメアリーとの結婚期間のみに発生するもので、メアリー女王が崩御されたら王位継承権はお子様方に移る、と契約されていた為、やはり単独で王様になる機会はハナからなかったようである。契約でトラブルを未然に回避していたらしい。流石契約社会。

ちなみに初めから共同統治者となるべく結婚した場合は、そもそも王様扱いになるので「王配」とは呼ばれない。

なので、日本語で「王配」と呼ばれているか「王」と呼ばれているかで、元首としての立場の有無も分かるようになっている。言葉とは、なんと奥深いものだろうい。

さて、ここで疑問が湧いてくる。

愛子さまが女性天皇になった場合、結婚相手はどう呼ばれるのだろう?

まず、愛子さまご本人は、Empress regnantとなる。そしてお相手は、皇配(または皇婿)となるらしい。ちなみに殿下。陛下ではない辺りが、徹底している。英語だと、Emperor consort。ただし、歴史上、皇配は殆ど前例がない!

世界でも「天皇(Emperor)」という肩書きを持つ方が他にいないわけだから、もはや他国との比較すらできない。

令和に入ってから、天皇家のあり方に関する議論が再活性化している。日本国内でも初尽くしだが、世界的に見てもとても珍しい議論なのだということが、訳語の世界からも垣間見えてくる。

3年前、令和になった直後に調べて書いた以下のエントリーをやや修正して書いてみた。

フィリップ王配殿下が崩御された際の記事はこちら。



明日も良い日に。


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