【信頼とは】 銀河英雄伝説 The Neue These 「激突」第3章
民主主義の腐敗と、帝国の痛いほど純粋な成果主義との差が際立った回でした。
ケンプが功を急いだのは、2作目で丁寧に描かれた、自身のたたき上げの出自の所以だが、更に、ペアを組まされたミュラーの野心の剥き出し方も新鮮だった。
冷静沈着な「鉄壁」として今後名を馳せるミュラーも、そこに至る前は、若さ故の野心家だったのだ。そうでもなければ最年少の大将になれるわけがない。だからこそ、ポスターのミュラーも勢いのある人として描かれている。
老練な帝国軍人として言い慣れた「ファイエル」ではなく、同盟の客人大将として「撃て」と命じた一言に込めたメルカッツの覚悟や、彼を一人で支えてきたシュナイダーの涙。
上官に亡命を勧めたことが正しかったのか、シュナイダーはずっと悩んでいたのだろう。それがようやく、心から思えたのだ。あの時の選択は正しかったのだ、と。
言葉は交わさないが、2人の信頼関係がこれだけで伺える。
同盟と帝国の信頼関係の質の違いは他でも描き出されていた。
元敵であろうと、若輩者であろうと、まずは相手を受け入れ、信じる同盟。
ユリアンは、自分が教えたことを覚えていてくれるに違いないと信じたヤン。それに答えたユリアン。そのユリアンの言葉を信じた同盟首脳部。
情報が何もない中で、お互いへの信頼だけで皆が繋がり、結果勝利を得た。艦橋で、みんなが同じ方向を向いていた。
帝国はどうか。皆がラインハルトを向いている。お互いを感じてはいるが、それはライバルとして感じる相手だ。皆の前に立っているのはラインハルト一人だけ。彼だけ、視線の向きが違う。隣に立ち、視線を同じくした人は、もうここにはいない。
ロシアとウクライナが戦争をしている中で、このセリフがある本作が公開されることの共時性に唸ってしまう。
そんなことは、戦地を知らない寄生虫にしか言えないのだ。
平和なハイネセンにいるだけの政治家と、孤立無縁となったイゼルローンで交わされる会話の緊迫感の違いは、石黒版よりノイエの方が際立っていた。なんとかこの状況を打開しようと皆が知恵と力を出し合う関係が、丁寧に描かれていた。
そこに、流体金属の表面を波うたせたり、主砲同士を打ち合わせる等、技術的な映像美と合間って、石黒版とは全く異なる要塞vs要塞が展開されていた。
ただのリメイクではない、独自のノイエがそこにはあった。
民主主義とジャーナリズムの癒着と腐敗、そこに付け込んでいくフェザーンもしっかりと入れ込まれていた。ジャーナリズムが腐敗した時、人はすぐに易きに流れる。改めて、背筋を伸ばそうと肝に命じた。
そういや、ポプランの色男っぷりが、ノイエには出ていない。軽口は叩くが、女好き加減はそんなに強く感じない。
秋に公開予定の次に期待(ん?)
ここまでは、こちら。
明日も良い日に。
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