【鎖とは】 劇団イキウメ 「天の敵」
我々は、健康になりたいという病にかかっている
テレビでもラジオでも、「健康食品」「健康グッズ」などの健康情報は多く流れている。
飽食の日本に生きている者の多くは、どうにかして、できるだけ長く健康でいたい、という思いに駆られて、人は様々な行動を起こす。
だが、食料難の時代、栄養失調の問題に対峙するため、「完全食」を探し求めた男がいた。彼の名は、橋本卯太郎。
そして実際、その完全食はあった。だがそれに手を出すことは、地球の「食物連鎖」の鎖から、1人だけ逸脱する行為となった。
人間は、生まれながらに自由だ。でも、色んな鎖に繋がれているんだな
食う、食われるという、生物に基本的な鎖もそう。命が有限である、という鎖もそう。
そこから1人だけ抜けるとは、なんと孤独だろう。でも、彼は科学者として、その道を選んだ。これが何かに有益であればと祈りながら。
その間に、いくつもの大切な誰かの死を目撃しながら。
「死」と引き換えにして得る「永遠」とは、本当に永遠なのだろうか。
吸血鬼だから、血を吸うのではない。血を飲んでいたら、吸血人種になっただけだ。
因果が逆になることは、これに限らず、実際はよくあることなのかも知れない。
色んな思いがグルグルした。
冒頭、料理番組のシーンで、舞台上で実際に簡単な調理が行われた。本多劇場を満たすごま油の香り。「食べる」という行為は、五感の全てを刺激する行為だ。それが、舞台に持ち込まれていた。芝居を見ながら「香り」の効能を改めて感じられた。
こんな香りに日々囲まれながら、何も食べられないとは、生きているのか死んでいるのか分からない、という思いが強調された。
冒頭の香りに始まり、終盤の「カーテンから差し込む太陽の光」にも、「生きること」を感じた。
太陽に背を向けて生きることは、人間の鎖から逸脱する行為なのかも知れない。これは、イキウメの「太陽」にも繋がる。
浜田信也さん、安井順平さん、2時間ちょっと、出ずっぱりだった。一度も袖には入らなかった。
浜田さんの淡々とした言葉を、安井さんはひたすら受けていた。
すごいものを見た。
毎日当日券は出るらしい。機会があれば、ぜひ。
note上でのイキウメ作品エントリーは、以下に。そろそろ追っかけて10年弱。どれを見ても、毎回「’%%R&>*+*{?!?!?」みたいな脳みそになる。グルグルと何かがかき混ぜられる。
来年は、新作公演があるそうだ。今から楽しみ。
明日も良い日に。