見出し画像

秋季愛知大会ベストナイン2024

愛知の高校野球を彩る次世代どえりゃーず


投手 長塚陽太(杜若)


捕手 井口睦丈(至学館1年)


一塁 牧村典明(中京大中京)


二塁 船橋幸多(至学館)


三塁 勝田悠斗(杜若)


遊撃 浅井太介(名古屋たちばな)


左翼 森島光星(中部大春日丘)


中堅 淀川綾太(中京大中京)


右翼 澤野天(中京大中京)


DH 林優翔(豊川)


救援 田中太久哉(中京大中京)


私学四強ほぼ倒壊の下剋上

  • 東邦(本選不出場)

  • 享栄(初戦敗退)

  • 愛工大名電(3回戦敗退)

  • 中京大中京(準優勝)

愛知伝統の私学四強のうちベスト4に残ったのは、今夏の甲子園に出場した中京大中京のみ。

今大会ノーシードながらセンバツ2024で耳目を集めた愛工大名電は、“享栄撃破”で勢いに乗る中部大春日丘に惜敗している。

享栄はエース小山で完敗

春の愛知チャンピオン校として夏に臨んだ享栄は15年ぶりに初戦敗退を喫し、この秋も同様に初陣で散った。

春の優勝に貢献した長身エース左腕の小山隼和は、夏の名古屋たちばな戦で好投を見せるも、2番手の失点で涙を飲んだ。

今大会は注目投手に上げられながらも、初陣となった中部大春日丘を相手に2被弾を含む11安打5自責点で、打者あと1人を残してマウンドを降りている。

ちなみに予選は享栄まずまず好スタート

詳しくは後述するが、名古屋地区二次予選での享栄は3位通過だ。

一次予選でトップ通過し、二次予選では名古屋たちばなに敗れたが、3位決定戦で名城大附属に打ち勝っている。

東邦は予選で2度の敗北

愛知夏準Vの東邦は、秋の一次予選でトップ通過を決めていれば、仮に二次予選のトーナメント初戦敗退でも、本大会には確実に出場できていた。

ところが一次予選のファイナルで天白に敗れ、まさかの2位通過に。1位通過での二次予選とは異なり、2位通過は負ければ一発アウトだ。

東邦は二次予選のシードに入ったことで、1勝すれば本大会に駒を進められたところ、栄徳との激しい打ち合いを制することができずに姿を消している

「名古屋 秋の陣」至学館が初制覇

こうした波乱含みのなか幕を切り、大会中盤には群雄割拠の状況に様変わりした“下剋上愛知”は、最後まで劇的だった

至学館が大本命の中京大中京を相手に、試合序盤から主導権を握る展開で逃げ切り、秋季大会では初の愛知チャンピオンに輝いている。

至学館は名古屋地区の一次予選でトップ通過し、二次予選は2回戦敗退

この強豪ひしめく名古屋地区二次予選で優勝=1位通過しているのが中京大中京だ。なお中京大中京は、予選では至学館と当たっていない。

名古屋たちばな&名城大附属の台頭

さらに中京大中京に次ぐ2位通過の名古屋たちばなが本大会で3位決定戦を制し、秋は初めての東海大会出場を果たしている。

この3位決定戦の相手は、二次予選で至学館が惜敗した名城大附属だ。名古屋たちばなと1点差の接戦を演じたが、あと一歩およばなかった。

ベスト4で名城大附属を倒した中京大中京を、今度は決勝で至学館が撃破するという、まさに下剋上の戦いを最後の最後まで繰り広げている。

群雄割拠アナザーストーリー

そんな名古屋地区には、もう1校による見どころもあった。この秋デビュー組の中川壮亮を擁する、古豪の私立愛知高校だ。

名古屋たちばなを苦しめた『ベスト16の愛知』

本大会の初陣は、前出の東部大春日丘を一次予選で撃破した県立向陽を相手に、ロースコアの接戦を制している。

続く2戦目も競り合いの末、夏4強の日本福祉大付属を退けた。

日本福祉大付属は夏ベスト4の主力である、武内閃ら数人の経験組を擁していただけに、この一戦で愛知は評価を上げている。

勢いづくなかでの3戦目は、名古屋地区二次予選で力の差を見せつけられた名古屋たちばな。結果は敗れはしたものの、いわゆる初回に与えたスミ2のみ。

2継投で2失点に抑えた投手陣に、打線は無得点と応えられなかったが、古豪復活の片鱗を伺わせるだけの爪痕を残してみせた。

春ベスト4戦士を擁する中部大春日丘

そうした一方、崖っぷちの名古屋地区二次予選を快勝した中部大春日丘は、享栄と愛工大名電を立て続けに撃破。

次戦の準々決勝でも至学館と壮絶な投手戦を繰り広げたが、僅差で涙を飲んだ。秋の本大会はノーシードからの出発となったが、実は春ベスト4戦士が多く残っている。

中軸に座る二刀流の水野拓海とエース右腕の服部圭真、1年生ながら春4強に貢献した横田鉄伸に加え、この秋デビュー組の森島光星を4番に据える布陣で臨んだ。

愛知本塁打キング&1年生二刀流

森島は2打席連発を含む、2試合連続アーチの3本で一躍、秋季愛知大会のホームラン王に輝いている。

この2打席連続弾を放った相手投手が、前述で触れた享栄のエースナンバーを背負う小山隼和だ。小山は森島の2発目によって、引きずり下ろされる形で降板している。

まさに群雄割拠の一幕といえるが、それとは別に1年生の横田が二刀流デビューを果たし、チームも計4試合で5失点という層の厚い投手陣を形成できた点が大きい。

最強の左右ダブルエース擁する杜若

同じくベスト8まで進んだ杜若も、西三河予選のトップ通過校として、名古屋勢に善戦している。本大会初陣では、噂の栄徳を相手に夏ベスト4の地力を見せつけた。

名古屋地区予選で東邦を沈めた栄徳打線を、杜若が誇るダブルエースにして、県内を代表するサウスポーの西脇光世が前評判通りの快投で封じている。

本大会2戦目のvs安城では、ダブルエースの速球派右腕で、同じく大会注目の長塚陽太9回2被安打14奪三振という圧巻の完封劇を披露。

続く名城大附属とのベスト8決戦は、試合序盤に西脇が与えた3点を終始援護できずに僅差で涙を飲んだ。

それでも西脇からロングリリーフに回った長塚は、またしても6回2被安打10奪三振の無失点という安定感ある成績を残している。

杜若も夏ベスト4戦士多数

打は強力とまではいかないが、旧チームの時から不動の4番に座る勝田悠斗を中心に、つなぐ野球で粘りを見せた。

杜若は夏ノーシードからの準決勝進出で話題をさらい、その時のメンバーにはダブルエースや勝田のほか、正捕手の北本祐規、パンチ力のある杉浦颯真ら複数が残る総合力の高いチームだ。

されども私学四強の愛知

総じて秋季愛知大会2024は動乱と化したが、ここ数年に見られる甲子園出場校を振り返ってみると、やはり私学四強は揺るがない

  • 夏の甲子園2024 中京大中京

  • センバツ2024  愛工大名電 豊川

  • 夏の甲子園2023 愛工大名電

  • センバツ2023  東邦

  • 夏の甲子園2022 愛工大名電

  • センバツ2022  当確なし

  • 夏の甲子園2021 愛工大名電

  • センバツ2021  中京大中京

  • 夏の甲子園2019 誉(春夏通じて初)

  • センバツ2019  東邦

過去5年のうち(コロナ禍で中止の2020年開催を除く)、私学四強が甲子園出場を果たせなかった年は1度もない

それどころか享栄を除く、3校の私学四強によるほぼ独占状態にある。何だかんだ言って「結局は私学四強が甲子園に出てくる」が、愛知の高校野球事情といえるだろう。

だからこそ21世紀枠は狙い目

とはいえ今回の愛知勢からは、2つの代表校が初となる秋の東海大会に進出を決めている。

愛知チャンピオンとして臨む至学館は、夏も春もともにベスト8と善戦。名古屋たちばなも、夏と昨秋の愛知大会でいずれもベスト8に進出している。

そして今大会のベスト8組である中部大春日丘と杜若も前述した通りなので、愛知高校も含めた21世紀枠の行方に注目だ。

愛知勢からの21世紀枠出場は過去2校豊橋工業の2015年が最後で、今度のセンバツに出場できれば10年ぶりとなる。

どうなんだ高野連

21世紀枠の最多出場は北海道の5回、そこに和歌山・島根・徳島の3県が4回と続く。私立の出場は、徳島の土佐高校の1度きり(2013年)

至学館と名古屋たちばなは東海大会での自力出場が残っているものの、中部大春日丘・杜若・愛知を含めた、これら5校は全て私立だ。

圧倒的に公立優位の21世紀枠だが、初戦敗退が目立つ傾向を踏まえると、そろそろ私立の門戸を広げる転換期といえるだろう。

ベストナインの選考について

そんな訳で、ここから先は今回の愛知ベストナインによる特別打線に沿いながら、各選手の大会成績や特徴などを見ていこう。

ちなみに今回は8強以上の進出校3試合以上かつ10打席以上という線引きから、ドラ穴独自によるベストナインを選出している。

さらに大会全般を通して投高打低とまではいかないが、とりわけ投手勢の活躍が目立った。

優勝した至学館の1年生エースにして、準決勝のマダックス達成で話題を振りまいた尾崎陽真を皮切りに、名古屋たちばな自慢の投手3本柱、中部大春日丘のエース服部圭真らが代表格だ。

彼らはいずれも好成績を収めているが、ベストナインに選出したのは防御率0.00の長塚陽太と田中太久哉。

投球回数などの兼ね合いもあるなか、突出した数値を残した長塚と田中を選んでいる。

長塚陽太や田中太久哉らの貴重なプレイバック動画はもちろん、髙橋宏斗2世としてプロから注目されている宮内渉吾らの特別映像も置いてあるので、ぜひ最後まで読み進めてくれ。



愛知どえりゃあ打線を組んでみた件


1番ショート 浅井太介(右投左打)

打率.563 OPS 1.542 出塁率.667 長打率.875
得点圏打率.333(6-2)

愛知が誇る天才肌

東邦の朝倉大空、後述する中京大中京の牧村典明に並ぶ、愛知の左打者ビッグ3の1人。

この秋は、巧みなバットコントロールで大会トップタイの9安打をマーク。そこまで上背はなく、スリムな体型ながら、持ち前の足を生かした長打も量産している。

2つの敬遠を含む5四死球と覇王色ばりのオーラも放出した。

1年夏からスタメンに名を連ね、今夏から不動の4番を張る、名古屋たちばなの至宝として東海大会での活躍が注目されている期待のショートストッパーだ。


2番サード 勝田悠斗(右投右打)

打率.500 OPS 1.000 出塁率.500 長打率.500
得点圏打率10割(2-2)

シュアな打撃かつ名手

杜若で不動の4番に座る勝田は、派手さこそないが、鋭い打球で勝負どころに強い三拍子プレーヤー。今大会無失策と守備面も光る。

この秋は右打者が不利とされる右腕(3人)としか対戦していないにも関わらず、しっかり4番の仕事を果たした点も大きい。


3番ファースト 牧村典明(左投左打)

打率.389 OPS 1.151 出塁率.429 長打率.722
得点圏打率.600(10-6)

愛知打点王

本大会は不発だったが、予選では場外弾を含む2試合連続アーチを放ち、名門の新4番打者としての凄みを発揮した、愛知の左ビッグ3こと牧村典明。

左腕キラーのクラッチヒッター

この秋は全試合で打点をマークし、大会最多の10打点と予選通りの活躍を見せている。

対左も3投手と少ないながら、3打数2安打のうち得点圏2打数1安打と強い。

名古屋たちばなの浅井同様、東海大会での奮闘はもちろん、センバツ切符も掴めば、間違いなく来年のドラフト戦線に名前が浮上するスラッガーだ。


4番DH 森島光星(右投右打)

打率.571 OPS 1.839 出塁率.625 長打率 1.214
得点圏打率.333(3-1)

尾張の新大砲

ミラクル中部大春日丘の4番を担い、大会序盤に放った合計3発で秋季愛知2024のホームラン王に輝いた森島。

そのうち2発が、前述した享栄の好左腕・小山隼和からの2打席連続アーチだ。

続く愛工大名電戦と、ベスト8の至学館では不発に終わったが、森島はチーム全4戦で安打を放っている。

センバツでの一発も期待大

悲願のセンバツ出場は、まだ21世紀枠での望みが持てるだけに、待望の聖地弾も充分に有り得るぞ。


5番ライト 澤野天(右投右打)

打率.500 OPS 1.247 出塁率.533 長打率.714
得点圏打率.250(4-1)

中京大中京の右腕キラー

大会序盤は代打での登場ながら、チーム2戦目でホームランを放ち、中京大中京の5番打者として新たにスタメンに加わった澤野。

対右腕が9人と続いたなか(左腕は1打席のみ)、毎試合安打で打率5割超をマークした点は大きい。東海大会でも注目のキーマンだ。


6番セカンド 船橋幸多(右投左打)

打率.409 OPS 1.000 出塁率.409 長打率.591
得点圏打率.286(7-2)

至学館のリーディングヒッター

2年春からセカンドのスタメンで出場し、この秋からショートに回った至学館の中心選手の1人。

後述する淀川と名古屋たちばなの浅井に並ぶ、大会最多の9安打をマークしている。

この秋は4人の左腕と対戦し、8打数4安打1打点。対右・左に偏ることなく打ち返せる順応力の高いタイプで、2盗塁を記録している点にも注目だ。


7番センター 淀川綾太(左投左打)

打率.474 OPS 1.177 出塁率.545 長打率.632
得点圏打率.400(5-2)

名門のシン・安打製造機

至学館の船橋と名古屋たちばなの浅井に並ぶ、大会トップタイの9安打をマークした、中京大中京で新たに2番を担う俊足のバットコントローラー。

チーム最多の3盗塁にとどまらず、その足を生かし長打に繋げられるのも淀川の武器だ。

左腕との対戦は少ないが、3打数2安打1打点1盗塁。長打はないものの、総じて対右・左を問わずにシュアな打撃で好成績を残している。


8番キャッチャー 井口睦丈(右投右打)

打率.353 OPS.765 出塁率.353 長打率.412
得点圏打率.333(3-1)

至学館「扇の要」

今回のベストナインで唯一の1年生ながら、打って走って守れる至学館期待の正捕手。

この秋からマスクを被り、同じく1年生エースの尾崎陽真と黄金バッテリーを築き上げている。

打順は下位を担うが、不利とされる右腕(4投手)を相手に8打数3安打1三振のみと苦にしないタイプだ。

準決勝の名古屋たちばな戦でも魅せた、持ち前の強肩も光る。大会を通じて2つの盗塁刺を記録している。


9番レフト 林優翔(左投左打)

打率.500 OPS 1.038 出塁率.538 長打率.500
得点圏打率.500(2-1)

センバツ豊川のスピードスター

旧チームから不動のリードオフマンとして、センバツ2024でもシュアなバッティングを見せた愛知屈指の巧打者。

センバツではプロ注目のモイセエフ・ニキータが特大ホームランで脚光を浴びたなか、実は林も好投手の吉岡暖から2安打を放ってのけたほど。

今大会はベスト8敗退で全3戦にとどまったが、2盗塁と50m5.9秒の俊足も健在だ。

旧チームの時から課題であった投手陣も、この秋は決して悪くない。林と同じくセンバツ組の中西浩平平野将馬が、夏の悔しさを糧に、まずまずの投球を見せている。

この二枚看板が冬場の向上で充実すれば、来春は優勝戦線に食い込んでくるに違いない。

吉岡暖とのセンバツ対決

ここから先は

1,848字 / 2画像

¥ 1,111

基本「有料記事はソースに金かかってるから売れる」がドラ穴流。金は天下を回らず、身銭が天下を回って我に帰る、が正解。