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みじかいお話

6
日記のような、手紙のような、夢のような
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みじかいお話 #6

久しぶりの晴れ間だった。「晴れた日においで」と彼が言っていたから、こんな日を待っていた。
初めて会った時、彼は「森で暮らしているよ」と言った。それを聞いてから、僕はもうウズウズして仕方なかった。なぜって、僕は森に住みたいからだ。二度目に会った時は、どんな家なのか聞いてみた。すると彼は「今度、おいでよ」と言って、その日はそのまま帰っていった。
それからも、彼は「気が向いたから」「なんとなくね」と言っ

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みじかいお話 #5 ~あくびの朝~

不思議な朝だった。曲がり角のあたりから霞がかかって、その先は何も見えない。白い霞はすぐそばの山も遠くの山も隠してしまって、見えているのは自分のまわり数十メートルだけ。まっすぐな道に出ても広い道に出ても変わらず、霞を抜けてきた人や車が、また霞の中へ潜っていく。
いつも静かな道なのに、ずっと何か音がしている。頭の上を飛行機が飛んでいくときは、こんな音だった気がする。でもそうだとすると、この飛行機は頭の

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みじかいお話 #4

みじかいお話 #4

ここでは
何をしたっていい。
一緒にやってもいいし
一人でやってもいい。
何をしたっていいし
何もしなくたっていい。

誰かと来てもいいし
一人で来てもいい。
誰か、が
人でなくてもいいし
一人、も
人でなくてもいい。

一人で
喋ったっていいし
みんなで
昼寝もいい。
一緒に、しずかに
それぞれ、にぎやか

じつのところ
ここでは
どうしたって
何もしていない
ことは、ない。
例えば

じっと座

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みじかいお話 #3 ~雲時計~

「ほら、山に陰が落ちているよ。」
「あぁ、あの緑の濃いところだね。ゆっくり動いているね。」
「あの陰を作っているのは、どの雲だと思う?」
「真上にある、あの雲かな?それにしては、あの陰は大きいなぁ。」
「きっと、あっちの雲だよ。あの横に広がった形、陰と似ている気がしない?」
「たしかにそうだ。うん、きっとその雲だね。」

「今日みたいによく晴れた日は、歩きながら、陰と雲を探すんだ。慣れてくると、ど

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みじかいお話 #2 ~耳のはなし~

みじかいお話 #2 ~耳のはなし~

君の耳は大きくて、クルクルまわる。僕はその動きを、飽きずにいつまでも眺めていられると思う。勝手に動くのかな、それとも君が動かしているのかな。

大きな音がすると、君はまず全身で受け止める。それから一人で落ち着く場所へ向かい、そこでしばらく過ごす。その間もきっと、君の耳はひょこひょこ動いているのだろうな。じっとしていても、いつも耳だけは動いているから。

その耳には、どんな音が聞こえているんだろう。

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みじかいお話 #1

ある冬のはじまりのこと。
窓から光が射す束の間を
部屋の中で過ごしていた。
すると、ドアを叩く音がして
ふたりが立っていた。
どこから来たのかも
名前も知らないけれど
初めてではないような気がした。

 ふだん、何をしているの?
と尋ねると、ひとりは
 森で暮らしているよ
と言い、もうひとりは
 穴を掘っているよ
と言った。

そのあとは
みな、黙って
ストーブの前で
ただ、ぼんやりとして
外が暗

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