
『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと(花田菜々子)』【読書記録#42】
人に本を贈った経験はあるだろうか?
私は学生時代の友人に向けて本を選んだことがいくつかある。
大学を卒業するときや、大きなイベントを成し遂げたとき、就職で広島を離れるとき。
タイミングこそ様々だったが、誰かのことを想像して本を選ぶのは、非常に楽しい。なんとなくこういうの好きそうだよな…というのがわかる間柄であればなおさらだ。
私自身も学生の時に本をいただいたことがあったが、嬉しいものだ。
その時は誕生日ということもあり、この星座の人はこんな感じの星の元に生まれているよ~というような占星術?みたいなものがまとめられたものだった。こういうのを最後に目にしたのは実家で母が細木数子にはまっていたとき。普段絶対に自分が買わない、読まないジャンルだったのでより一層面白さと嬉しさを感じた。
受け取った本をきっかけに、こういう気持ちが湧いてくる。
「あの人、私のことをこの本が似合うような人だと思っているんだ」
書籍を受け取った瞬間、その本が相手の心を映す鏡のような存在になってゆく。本の重みが手に伝わる。電子書籍では味わうことのない、紙の本だからこそ起こりうる感覚。タイトルや本の内容だけでなく、表紙の装丁や質感、そういった本が纏う雰囲気をも贈られているのだなと。
ここで、最近のことを振り返ってみる。
学生の時にやっていた、節目での書籍の贈り物。
妻に対して、できてなくないか?
これは非常に由々しき事態である。
この本を読んだことで、やらなければならないことを思い出せた気がする。
今では一番身近にいる存在となった妻。
妻に合う本を選ばずして、何が読書記録を残す社会人かと。
自分のことだけでなく、相手のことを考えて、本を選ぶ。
これ以上贅沢な本屋での過ごし方を、私は知らない。
よく知る(と勝手に思っている)妻に対して、今の一番の本を贈りたい。
ちなみに本書は実話をもとに作られたもの。人に本を贈るということの楽しさ、難しさを感じ取れる本なので、ぜひ一度読んでみて欲しい。