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記事一覧
君と出会い、青を駆ける 《第1話》
第1話 君と出会い
舞い落ちた一片のサクラが、川に流れるカーペットに加わり、街を彩る。
住宅街を歩く少年少女たちは、それぞれ制服こそ違えど、みなその制服は真新しく、期待と不安が入り混じった感情を抱きながら新たな学び舎へと歩みを進めている。
「おはよ~」
「おはよ!」
期待と不安。
真新し制服と言えば俺たちも例外ではない。
向かいの家から出てきた、眠たそうに小さくあくびをした彩と朝の挨拶
君と出会い、青を駆ける《第2話》
第2話 くやしい
「勝負するんだよ!弓道で!」
「…….え!?」
「何言ってるんすか。負けるわけないんすけど」
「やってみないとわかんないじゃん。じゃあ、掛川くん。弽を貸し出しのやつから選んできて」
井上先輩が指をさした先。
道場の壁沿いに、乾燥させるために並べられたグローブみたいなやつ。
どうやらあれが弽というらしい。
俺は自分の手のサイズに合いそうなやつを見繕って、井上先輩の所に戻
君と出会い、青を駆ける 《第3話》
第3話 正鵠を射られ
夜の弓道場。
真っ白な明かりと、夜空に瞬く星々。
たった一人、弓を押し開いた矢巾が長い間を取って矢を放つと、糸を引いたようにまっすぐ、闇を切り裂くように鋭く。
乾いた音とともに、それは的のど真ん中を射抜いた。
「ふぅ……。まあまあか」
的に刺さった矢は六本。
安土に刺さった矢は無し。
矢巾は、矢取りに行くまでの六射すべてを的中させているのだということがわかる。
君と出会い、青を駆ける《第4話》
第4話 ベタ踏み、足踏み
入学から一週間がたち、ぼちぼち授業にも部活にも慣れてきて、クラスでもそれなりに話せる人も増えてきた。
そんなある日。
「おーし。それじゃあ、今日のホームルームは委員会決めるぞ~」
六限目のホームルーム。
担任の先生が黒板に書きだしていく委員会。
「所属しないはなしだからな~。全員、どれか一つは名前書くこと。それと、男女の縛りとかはないから、適当に決めちゃってく
君と出会い、青を駆ける《第5話》
第5話 はるかぜ
花壇に植えられた花々がかすかにその香りを風に乗せて、水を浴びた花びらがきらきらと輝く。
春らしく暖かな日差しはを浴びて、それらはより一層鮮やかに咲き誇る。
「矢巾くん……だよね?」
「うす……」
委員会ごとに分かれて最初のオリエンテーション。
園芸委員になった私と矢巾くんは、昇降口付近にある花壇の前に集められていた。
「えっと、一年生の二人であってる?」
「はい!」