南野尚紀@文学イベントウェブマガジン「フィレンツェ買い出し紀行」👜📝

文学イベントウェブマガジン「フィレンツェ買い出し紀行」、村上春樹ファンクラブサイト「羊…

南野尚紀@文学イベントウェブマガジン「フィレンツェ買い出し紀行」👜📝

文学イベントウェブマガジン「フィレンツェ買い出し紀行」、村上春樹ファンクラブサイト「羊をめぐる冒険をめぐる冒険」代表。 ピサで文学・マンガ喫茶Nattruna Indiaを経営する予定。 https://kotonoha-writingschool.com/

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記事一覧

評論 ヴィスヴァワ・シンボルスカ 『瞬間』 恋の情熱には、なぜ最高の価値があるのか

   1.イントロデュース  シンボルスカが『瞬間』という詩集において、投げかけた問いや答えは古今東西を見渡しても偉大な問いであるし、詩というのは本来、実在…

評論 石原慎太郎 「暴力計画」――世代を超えて、個性やリーダーの価値を問い続けることの意味について――

   1.イントロデュース  石原慎太郎は、日本の作家では僕が中上健次の次に尊敬している作家で、政治家としても、故郷を愛した湘南人としても尊敬しているし、イ…

1+1と1+1=1+1の違いーー小泉進次郎、にこるん、プラトンの『メノン』の抱える問題ーー

 1+1と1+1=1+1は同質のことを言っているが、実際は持っている影響力や哲学的な訴求の力はまったく違う。  1+1は単に、問題提起しかしてない。  しかし、1+1=1+1…

東ヨーロッパの美学は、なぜ美学的、倫理的に正しいのか

 イスタンブールに滞在する最後の日の夜明け頃に、ある美学的、哲学的事実に辿り着いた。  一つは無というのは存在がないということなので、たくさん存在することを示す…

文学的な恋愛、エンタメ的な恋愛――村上春樹、アントニオ・タブッキ、シンボルスカ、ダンテ――

 恋愛にも文学とエンタメの違いというのはあると思ってて、日本人でよくヨーロッパでは文学とエンタメをわけないっていう人がいるけど、どこから出てきた決めつけなのか、…

ジョアン・ジルベルトで目覚めるイスタンブールの朝、エミチカさんの逢いたくなる人メモ

 ジョアン・ジルベルトのアルバム『Corcovado』を聴きながら、少しアクセルを踏みすぎた自分のアクセルペダルをゆるめる午前の終わり頃。  ジョアンのこのアルバムは、し…

オルハン・パムク「無垢の博物館」、イスタンブールねこ、クルージングで見たベリーダンスの美女の涙 in イスタンブール

 イスタンブールには、単に旅行で来ただけじゃなくて、オルハン・パムクの無垢の博物館に行きたいとか、本屋とか図書館がどんな感じか知りたくて来たのもある。  イスタ…

村上春樹ミュージック辞典 秋の最初のセーター No.6 Julie London 夜は衛生中継、僕は彼女のこと覚えてる

 村上春樹が1回だけ、ラジオでジュリー・ロンドンの曲を流したことがあった。僕は村上春樹のラジオをすべて聴いてるわけではないので、その回だけで流したかはわからない…

村上春樹ミュージック辞典 秋の最初のセーター No.5 The Modern Jazz Quartet

 The Modern Jazz Quartetの名前は、『ダンス・ダンス・ダンス』の冒頭で、「月世界の女性と結婚しなさい」という女性と、主人公の僕がベッドに入る少し前のテーブルで話…

にゃーにゃーねこ語と美人の裸の心--イスタンブール編--

 イスタンブールのねこはとても人懐っこい。  家やお店の扉の近くにちょこんと座ってて、夜になると、お店やホテルの人にご飯をもらうために、店の中のあかりを眺めなが…

村上春樹ミュージック辞典 秋の最初のセーター No.4 The Beach Boys 「California Girls」 結婚は運命の人じゃなくて、3番…

 村上春樹の『風の歌を聴け』の中盤には、主人公の僕にラジオ番組から突然、電話がかかってくるシーンある。  そこで僕は、ラジオのDJからいろんな質問をされるが、途…

村上春樹ミュージック辞典 秋の最初のセーター No.3 セロニアス・モンク 生きてりゃいいことあるぜ

 『ポートレート・イン・ジャズ』に登場するセロニアス・モンクは、だいぶ世の中を美化して捉えてるような感じを演奏から受け取れるし、実際に村上春樹のモンクのエッセ…

不思議ね No.1――南ヨーロッパの女性らしい美はなぜ美学的にすぐれているのか?――

 僕はなぜ女性らしい女性を愛したんだろう。それも南ヨーロッパ伝統の女性らしい女性の美を愛する女性を。もちろん、それに寄り添ってる男性も嫌いじゃない。なのになぜか…

旅行と文学 夢のヒッピーデイ Part15 村上春樹の通ったレストラン・ピノッキオと古本屋 in 神戸

 京都の村上隆展に行った日の夜、突然、村上隆がクラブにゲスト出演するっていう告知をインスタで見たから、行くことに。  クラブでは、村上隆の展覧会で写真を撮ってく…

村上春樹ミュージック辞典 No.2 秋の最初のセーター Chet Baker だれもが振り向くスウィート・プリンス

 僕がはじめてチェット・ベイカーを知った時の印象は、恥ずかしながら、「こんなスカしてるヤツのジャズは、深みがないに決まってる」だった。  ところがある日、村上春…

村上春樹ミュージック辞典 秋の最初のセーター No.1 Sheryl Crow 夜の地図を探す旅に出る時に、聞きたい音楽

 『騎士団長殺し』の冒頭に、主人公の男が車で高速などを乗り継いで、東北をあてもなく運転し続けるシーンがあるけど、その中で、彼はシェリル・クロウをカーステレオで流…

評論 ヴィスヴァワ・シンボルスカ 『瞬間』 恋の情熱には、なぜ最高の価値があるのか

   1.イントロデュース  シンボルスカが『瞬間』という詩集において、投げかけた問いや答えは古今東西を見渡しても偉大な問いであるし、詩というのは本来、実在しないとされがちな、イデア界への問いかけや探究の結晶であるべきだ、ということはシンボルスカの詩を読むとよくわかる。  イデア界への問いかけや探究は、果たして意味があるのかと疑問に思う人もいるだろう。  イデア界というのは、生前に善を働き、美を追求した人間たちが天上から、地上を見て伝令を送っているような世界で、地上界

評論 石原慎太郎 「暴力計画」――世代を超えて、個性やリーダーの価値を問い続けることの意味について――

   1.イントロデュース  石原慎太郎は、日本の作家では僕が中上健次の次に尊敬している作家で、政治家としても、故郷を愛した湘南人としても尊敬しているし、イタリアに来てからもたまにだけど、石原慎太郎のことを考える瞬間がある。  彼は湘南高校にいる時、引きこもって絵ばっかり描いていたが、父親に死に際して、復学し、作家、東京都知事にまでのぼりつめた人でもあり、多彩でありながら、多難なひとだったと僕は思う。  90年代、文化的には繁栄していた日本だったが、失われた世代とも呼

1+1と1+1=1+1の違いーー小泉進次郎、にこるん、プラトンの『メノン』の抱える問題ーー

 1+1と1+1=1+1は同質のことを言っているが、実際は持っている影響力や哲学的な訴求の力はまったく違う。  1+1は単に、問題提起しかしてない。  しかし、1+1=1+1は、1+1と1+1が同質であるという結論を出しているし、問題提起が公式に含まれてもいる。  それ以上に重要な問題は、1+1=1+1は結論を出しているがゆえに、周囲に及ぼす問題提起の力と言うのが大きい。  クリスチャーノ・ロナウドの奥さん・ジョルジョーナが、「1+1」と突然、Instagramに、ポストした

東ヨーロッパの美学は、なぜ美学的、倫理的に正しいのか

 イスタンブールに滞在する最後の日の夜明け頃に、ある美学的、哲学的事実に辿り着いた。  一つは無というのは存在がないということなので、たくさん存在することを示す量よりも、質に近いと普通なら考えそうだが、不思議なことに実際には量という概念の方が無に近いことがほとんどだという事実だ。  インドや中国のことを考えると、すぐにわかるだろう。  インドは世界最大の人口を抱える国だが、0の概念というのを発見した国だし、存在論的な無にこだわる仏教発祥の地だ。  中国も人口は世界で2番目に多

文学的な恋愛、エンタメ的な恋愛――村上春樹、アントニオ・タブッキ、シンボルスカ、ダンテ――

 恋愛にも文学とエンタメの違いというのはあると思ってて、日本人でよくヨーロッパでは文学とエンタメをわけないっていう人がいるけど、どこから出てきた決めつけなのか、イタリアでは実際に本屋に行くだけで一目でわかるくらい文学とエンタメはわかれてる。  わけ方をエンタメとしてないだけで、ヤングアダルトとか、見るからに表紙が文学作品じゃなさそうだなっていうのとか、ラブロマンスだけど文学作品ではなく、軽い読み物として書いてるなとかっていうのは、ほとんどだれが見ても違う。  そういう意味で、

ジョアン・ジルベルトで目覚めるイスタンブールの朝、エミチカさんの逢いたくなる人メモ

 ジョアン・ジルベルトのアルバム『Corcovado』を聴きながら、少しアクセルを踏みすぎた自分のアクセルペダルをゆるめる午前の終わり頃。  ジョアンのこのアルバムは、しっかりブラジリアンをやってるし、「E Luxo So」はなんとなくだけど、曲からは世界の広さを感じさせるし、歌詞も「全身が揺れてる」、「贅沢でしょ」、「こんなブラジリアンビートは見たことない」っていうように、サンバを踊ってる人の気分を表現した曲で、聴くだけでおおらかになれる。  朝は雨が降ってたけど、9時過ぎ

オルハン・パムク「無垢の博物館」、イスタンブールねこ、クルージングで見たベリーダンスの美女の涙 in イスタンブール

 イスタンブールには、単に旅行で来ただけじゃなくて、オルハン・パムクの無垢の博物館に行きたいとか、本屋とか図書館がどんな感じか知りたくて来たのもある。  イスタンブールは個人経営の3畳間くらいの本屋はよくあって、絵を売ってるついでに、本も売ってるお店もあるんだけど、トルコ語はわからないから、絵を買った。  この本屋には、『Kafuka』っていうタイトルのビデオとかもおいてあったりしたし、お店の人に「アートが好きなんですか?」って聴いたら、「フリーダ・カーロが好き」って言ってて

村上春樹ミュージック辞典 秋の最初のセーター No.6 Julie London 夜は衛生中継、僕は彼女のこと覚えてる

 村上春樹が1回だけ、ラジオでジュリー・ロンドンの曲を流したことがあった。僕は村上春樹のラジオをすべて聴いてるわけではないので、その回だけで流したかはわからないけど、僕が知る限り1回きりである。  なぜ村上春樹がジュリー・ロンドンについて、『ポートレート・イン・ジャズ』などで書かないかはなんとなくわかる気がするが、今回は敢えて彼女について書いてみようと思う。  ラジオで紹介された時は確か、「魅惑のセクシーボイス特集」みたいな回に紹介された彼女。  いつ田舎に帰ってしまうかもわ

村上春樹ミュージック辞典 秋の最初のセーター No.5 The Modern Jazz Quartet

 The Modern Jazz Quartetの名前は、『ダンス・ダンス・ダンス』の冒頭で、「月世界の女性と結婚しなさい」という女性と、主人公の僕がベッドに入る少し前のテーブルで話しているシーンで出てくる。  村上春樹は相当、モダンジャズ・カルテット好きみたいで、『ポートレート・イン・ジャズ』でも、彼らをほめてた。  今となっては、あまり名前も出てこなくなったピチカートファイブの小西康陽も、モダンジャズ・カルテットは好きだったみたいだけど、僕もこのバンドは大好きだ。  60

にゃーにゃーねこ語と美人の裸の心--イスタンブール編--

 イスタンブールのねこはとても人懐っこい。  家やお店の扉の近くにちょこんと座ってて、夜になると、お店やホテルの人にご飯をもらうために、店の中のあかりを眺めながら、ぼーっと待ってる。  写真を撮ろうとすると、ねこはたいてい、逃げない。  逃げないどころか、その空洞の心と気まぐれなやさしさで、僕に擦り寄ってきてくれる。  みゃーん、みゃーん。  ご主人様じゃないから、好きなわけじゃないけど、気まぐれにじゃれてみるみゃん。  そんな声が聞こえてきそうなじゃれかたで、緑のストライプ

村上春樹ミュージック辞典 秋の最初のセーター No.4 The Beach Boys 「California Girls」 結婚は運命の人じゃなくて、3番目に運命に人がベスト

 村上春樹の『風の歌を聴け』の中盤には、主人公の僕にラジオ番組から突然、電話がかかってくるシーンある。  そこで僕は、ラジオのDJからいろんな質問をされるが、途中、「The Beach Boyの「California Girls」をリクエストした女の子がいる」と言われ、「名前を答えられれば、Tシャツをプレゼントする」と言われ、すんなり正答することに。  ビーチ・ボーイズはずいぶん、古いバンドなので、僕は聴いたことがなかったけど、ビートルズに似てるというのが第一印象だった。  

村上春樹ミュージック辞典 秋の最初のセーター No.3 セロニアス・モンク 生きてりゃいいことあるぜ

 『ポートレート・イン・ジャズ』に登場するセロニアス・モンクは、だいぶ世の中を美化して捉えてるような感じを演奏から受け取れるし、実際に村上春樹のモンクのエッセイもまるで新宿の街を歩いてジャズ喫茶に入っただけの情景とは思えなくくらい、きらびやかで、哀愁がある。  昔、シエナで好きだった女性に、「プラトンの言うように、運命の人に会い、お互いに言葉を交わし続けると、精神的に成熟するっていう話を僕は信じています」って言ったら、「哲学は物事を美しく捉えがちですね。科学も世界を客観的に

不思議ね No.1――南ヨーロッパの女性らしい美はなぜ美学的にすぐれているのか?――

 僕はなぜ女性らしい女性を愛したんだろう。それも南ヨーロッパ伝統の女性らしい女性の美を愛する女性を。もちろん、それに寄り添ってる男性も嫌いじゃない。なのになぜか、男性はすごく暴力的で、厳しく感じる。僕の女性好きは並大抵じゃないだろう。それも明らかに、男性の立場から女性の美学や美意識を学びたいという姿勢からの女性への愛だし、ZARDの坂井泉水や、Leyonaみたいな知性があり、強い人に共感的で、包容力のある女性を見るとふわっと魂が宙に浮かぶみたいに心が軽くなるのは、きっと僕の中

旅行と文学 夢のヒッピーデイ Part15 村上春樹の通ったレストラン・ピノッキオと古本屋 in 神戸

 京都の村上隆展に行った日の夜、突然、村上隆がクラブにゲスト出演するっていう告知をインスタで見たから、行くことに。  クラブでは、村上隆の展覧会で写真を撮ってくれたCesayと再会し、写真を撮って、Instagramを交換。  村上隆は12:30過ぎにステージに上がって、海藻が揺れてるような謎のダンスをしながら、ラップと共演してたが、結果として、直接会って話すことはできなかった。  次の日、一睡もせずに、神戸へ。  ホテルでチェックインした後、パソコン作業をして、村上春樹が昔

村上春樹ミュージック辞典 No.2 秋の最初のセーター Chet Baker だれもが振り向くスウィート・プリンス

 僕がはじめてチェット・ベイカーを知った時の印象は、恥ずかしながら、「こんなスカしてるヤツのジャズは、深みがないに決まってる」だった。  ところがある日、村上春樹の『ポートレート・イン・ジャズ』を読んで、一方的な決めつけなんじゃないかと感じて、オススメされているアルバムを聴くことに。  実際に聴いていると、風采そのまんまスカしすぎてるくらいスカしてるんだけど、そのスカしてるところが実は、自分にない憧れの部分なんだと気がついた。  チェット・ベイカーはジェイムズ・ディーンに似

村上春樹ミュージック辞典 秋の最初のセーター No.1 Sheryl Crow 夜の地図を探す旅に出る時に、聞きたい音楽

 『騎士団長殺し』の冒頭に、主人公の男が車で高速などを乗り継いで、東北をあてもなく運転し続けるシーンがあるけど、その中で、彼はシェリル・クロウをカーステレオで流し、「シェリル・クロウはいい」って考える。  シェリル・クロウはアメリカのケネット生まれのアーティストで、現在62才。  1993年にデビューアルバムを出すんだけど、その前には、マクドナルド、トヨタのCMのジングルを作ったり、カリフォルニアに移住して、ミュージシャン活動を行いながら、マイケル・ジャクソンのライブのコーラ