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パーティーが終わって、中年が始まる【中年クライシス!?】
"中年クライシス"
"ミッドライフ・クライシス"
"中年の危機"
という言葉はご存知でしょうか?
定義は様々ありますが、簡単に言うと40~50代頃に見られる悩みや不安、葛藤を指します。
この年代に差し掛かると、良い意味でも悪い意味でも、だいたいのことが何となく分かるようになり、それによって
「自分の人生は本当にこれでよいのか?」
「もっとできることがあるのではないか?」
「今の人生に疲れてしまった……」
といったように感じてしまう方が多いようです。
一説では、約80%が陥るとも言われています。
「まだ20~30代だから関係ないや~」と思っているそこのアナタ!
多くの先輩方が陥りやすい症状を事前に知っておけば、いざ自分が当事者になった時に慌てなくなりますし、そもそも回避できる可能性だってあります。
私もまだアラサーなので年齢的には、すぐでは無いですが、自身の考えすぎてしまう性格上、ほぼ間違いなく、中年クライシスに陥ってしまうだろうなと思い、最近関心を持つようになりました。
さて、前置きが少し長くなりましたが、今回ご紹介する『パーティーが終わって、中年が始まる』は、私の大好きな"元日本一のニート"と呼ばれるphaさんが書かれた1冊です。
phaさんは、日本で"普通"とされている生き方モデルと比べると、だいぶ変わった生き方をしており、彼の書籍を読むと優しい文体も相まって、気持ちが楽になるというか、「もっと肩の力抜いてみてもいいのかも」と前向きになれます。
しかし、そんな彼も40代を迎え、ついにやつと対峙する時が来たようです。そう、中年クライシスです……
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○著者
pha
1978年生まれ。大阪府出身。
京都大学総合人間学部を24歳で卒業し、25歳で就職。
できるだけ働きたくなくて社内ニートになるものの、28歳で退社。
上京後は定職につかず「ニート」を名乗りつつ、ネットの仲間を集めてシェアハウスを作り、以来毎日ふらふらしながら生活。
現在は、一人暮らしをしており、文筆活動を行いながら、書店で勤務している。
○ジャンル
エッセイ
○あらすじ
著者紹介でも触れたように、日本で"普通"とされている生き方モデルと比べると、だいぶ変わった生き方をしているphaさん。
そんな彼も40代を迎え、色々なことが分かるようになってくる。
そうか、人生はすべてが一回きりの本番。
世の中の仕組みがようやくわかってきた
「すべてのものが移り変わっていってほしいと思っていた二十代や三十代の頃、怖いものは何もなかった。何も大切なものはなくて、とにかく変化だけが欲しかった。この現状をぐちゃぐちゃにかき回してくれる何かをいつも求めていた。喪失感さえ娯楽のひとつとしか思っていなかった。」
○感想
【phaさんの変化】
・待望のphaさんの新刊。いきなり本書を読んでも面白いが、彼の本を数冊読んでからの方が、彼が20代でニートを始めてから中年を迎えた現在に至る考え方や、生活の変化が垣間見れてより楽しめる。
(本記事の最後の「関連記事」でも数冊ご紹介していますので参考にしてください)
・phaさんの文章に惹かれてから数年が経ち、彼のような生き方や考え方に魅力を感じていた。が、そんな彼でも40代半ばに差し掛かり、考え方が変わっている。
・昔と比べて"普通化"してきたと言うか、20~30代の時のことを恥ずかしく思う場面もあり、「phaさんですら、こうなるのか……中年クライシス恐るべし…」と感じた。
・自分が思っている以上に、中年に差し掛かると、体力、気力、向上心、野心、精神といった類のものは低下し、それらが考えや価値観に与える影響は大きそうである。
・しかし、時間が経てば考えや価値観が変わるとことは当然のことであり、それらが自分の中で変化したとしても、当時(変化する前)の自分が感じていたことは紛れもない事実であり、それは決して、間違っていたとか、誤っていたとか、そういう訳ではないと思う。
【phaさんの文章】
・phaさんの文章は難しい表現が少ない。優しさがあり、自分が感じていたモヤモヤや曖昧な感情を言語化してくれているような安心感がある。
それが私が、彼の作品が好きでよく読んでいる理由の1つ。
(オードリー若林正恭さんの文章もそのようなところがある。)
・"曖昧さ"、これがphaさんの中の1つのキーワードな気がする。phaさんの文章ではこの言葉がよく登場する。
「曖昧さを曖昧のままにしておく」、「二者択一にしない」、「断定しない」といった、この"ゆるさ"は何かと忙しい現代社会には必要なことなのかもしれない。
・自分より少し年上の方が書いたエッセイを読むと、行動や考え、価値観を先取りしてくれている感じがして、「フムフムそうだよなあ」、「こう言う感じになっていくのかあ」と道標のようになってくれる。
【ファンにはちょっと切ない】
・phaさんファンの自分には、「これがリアルだよなあ」と思いつつも、ちょっとだけ切なくなるエピソードもある。
・今までアイデアや創作を重視してきたが、アイデアが湧かなくなってきて、孤独を感じ始める著者。しまいには会社勤めも普通にできそうと言う。
・昔好んでいた、高速バス旅やシェアハウスへの関心が薄れてしまってたり、定職に就いたり、普通のことを考えるようになってしまったりしているのが少し寂しいがリアルな感じもする。
・「phaさんが、そんなこと言わないでー」という場面もあるが、でも、(読者の自分に対するイメージも分かっているうえで)そういうところを正直に隠さず書いてくれるところもまた、phaさんの良さ、優しさでもあると感じた。
【私の思うとりあえずの"中年クライシス"対策】
「働くor働かない」
「ダラダラ過ごすorシャキッと過ごす」
「人生設計を入念に立てるor行き当たりばったりにする」
など、人生の指針や考え方は、個々の性格や環境によって違うし、さらに時間がたてば、知らぬ間に徐々に変わっていく。
そのため、その時々の「自分がこうなりたいと思う姿」、「やりたいと感じるやり方や生き方」に身を委ねてもいいんじゃないかと感じた。
働きたくないと言っていたphaさんですら、働くようになっているわけなので(笑)
○印象に残ったこと
彼の考え方や生活の変化はどれも興味深かったですが、その中でも特に"死"や、書くことに対する考えは印象に残りました。
たまに死のことが頭をよぎると、シッシッと、猫を追い払うように頭の中から追い出してしまう。そうすると死は寂しそうな表情をする。僕の中での死のイメージは、不定形の小さな黒いスライムで、目がひとつだけある。
今までは、ひとりで本を読んだり、散歩をしたり、旅行をしたりするのが好きだった。誰かといるよりもひとりでいるほうが、いろんなことを思いつくから楽しい、と思っていた。
それが、創作へのモチベーションが減ったとたん、楽しくなくなってしまった。
以上です!
中年を迎えたphaさんの考え方や生活の変化を垣間見れて、自分の今後の生き方についても考えさせられる1冊でした。
現在は、東京・高円寺の書店『蟹ブックス』で勤務しているそうなので、いつかその店に行って、お会いしたいです!
phaさんがいつ飽きて辞めてしまうか分からないから、早めに行った方が良さそうです(笑)
○関連記事
phaさんの考えは昔から好きで、読書大学の初期の頃にはphaさんの本をよく紹介していました。
今回ご紹介した本を読む前にこちらの本を読んでおくと、phaさんの考えの変遷が分かり、より楽しめると思います。
こちらはphaさんが働いている『蟹ブックス』で店主を勤めている花田菜々子さんの書籍紹介記事です。
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