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二木先生【きみ、結構いやらしいよね。】

黄色の背景と目が隠された少年。
そして、びっしりと書かれたセリフやコメント。

この表紙に見覚えのある方はいると思います。

今回ご紹介する『二木先生』は、一言で言うならヤバい小説
刺激が欲しい方、必読ですよ!


○著者

夏木 志朋

○ジャンル

・(強いて言えば、少しとがった)青春小説
・2019年ポプラ社小説新人賞受賞作

○あらすじ

どうすれば「普通」にみえるか。

高校生の田井中は、自分が周囲とは何だか違うと感じており、普通を演じてようとするが、返って仇となり、周囲からは「変」と言われる始末。

そんな彼は、生徒から人気のある担任の美術教師・二木のある重大な秘密を知っていた。
そして、ある事件をきっかけに、田井中は二木に対し、「取引」を持ち掛ける。

取引に翻弄される田井中と二木。
スリリングな駆け引きの先に彼らが見つけた答えとは……?

○感想

・青春小説、社会派小説、ある意味自己啓発。
 ジャンルが絞りにくく、それだけ、内容が盛りだくさんということ。

・誰にも言えない秘密や悩みを抱える人、多数派に属さない人がどうやって生きていくかが書かれている。

・「普通」や多数派、マジョリティー、世間の風潮といったものに対する違和感や、そこから漏れている人に焦点を当てた小説は最近結構多い気がする。
 このような小説では、生きにくかったり、生きるのに面倒くささを感じている人にとっては、心に響きやすいというか、ある種の心の拠り所になる。
 しかし、この本はそんな甘ったれたものではなく、登場人物たちの言葉の殴り合い、駆け引きがとてもスリリングで面白い。

・二木との駆け引きによって、熱中、没頭、変化していく田井中の様子は、ある意味で人間らしさを感じる。

・多数派や世間に対して違和感を持つときに、声をあげて真正面から抗うのもアリだし、仮面をかぶって世間に同化するのも選択肢のひとつ。
 どっちが良いも悪いも言い切れないよなあと思った。

・『コンビニ人間』(著:村田沙耶香)や『正欲』(著:朝井リョウ)のような小説が好きな方は、ドハマりすると思う。

・感想ムズイ……

○印象に残ったセリフ

田井中(高校生)と二木(教師)の会話の中には、印象深いセリフが数々登場します。一部を紹介します。

「きみは前に、自分は内面を掘り下げて生きてるタイプだとかどうとか言ってたな。結構なことだけど一人じゃ限界があるぞ。下手な自己修正を重ねた紛い物の自分を信じ込む前に、他人を反響板にしてみたらどうだ。(略)」

「あのね、勘って、オカルトじゃないよ。目とか耳とかから入ってきた情報で、確かに気付いているんだけど、それをまだ言葉にできないのを、勘って言うんだと思う」

以上です!
少し刺激的ですが、心に響くセリフや行動も多いです。
言葉の殴り合いをぜひ味わってください!
そして、読後はおそらく、「感想ムズイ……」と感じると思います(笑)



○関連記事

芥川賞受賞作『コンビニ人間』(著:村田沙耶香)の紹介記事です。

こちらでは、『正欲』(著:朝井リョウ)について書いています。

こちらは小説でないですが、生きにくさを感じたり、周囲と合わせるのがしんどいと思っている方にはオススメの1冊です。


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