等身大の言葉こそ救いーミニ読書感想『大学教授、発達障害の子を育てる』(岡嶋裕史さん)
ネットワークやプログラミングの専門家(研究者)岡嶋裕史さんが、ASDの息子の子育て記をまとめた『大学教授、発達障害の子を育てる』(2021年2月28日初版、光文社新書)が面白かったです。大学教授と銘打っていますが、だからといって特別ではない。悩み戸惑う等身大の言葉。暗夜航路を行く言葉。でも、研究者だけに物事を調べながら、コツコツと進む日々。胸に染み入ります。
たとえばこんな文章。
めちゃくちゃ分かります。そうなんです、悩みます。しかも著者は、「悩みますよね」という以上の速さや角度でボールを投げない。「そんな時はこれ!」と処方箋を示すわけではない。それが心地よいのです。
発達障害、またはその疑いに目を向けた時、十中八九言われるのが「様子を見ましょう」とか「大丈夫」という言葉。あるいは、こうしたらいいという助言。でも本当は、疑う親自身が本当に欲しいのは、この問い、この疑念に付き合ってくれることだったりします。
その上で、著者はこんな語りを続ける。大学教授ならではの、冷静な分析です。
著者は、当事者でありながら、妙なくらい「引いている」面もある。それが面白い。ここでは、発達障害はその子によって成長幅が異なり、未来予測は困難だという話をしていますが、「それって大学教育で見るプラトーと似てるなー」と冷静に重ね合わせている。ウェットにすぎない。
実は著者自身も「その気があった」(p6)というように、ASD的(自閉的)な特性がいくつもあるそう。それが文章に独特のリズムを生んでいます。
発達障害の子育てって、どんな風だろう。それが知れると同時に、いい意味でちょっとズレた感覚を味わえる。親として、肩の力が抜ける。読めてよかったなと思います。
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