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フィンセント・ファン・ゴッホ / メトロポリタン美術館
簡単ではないと分かっていても胸に残したい金言ーミニ読書感想『子どもの心の育てかた』(佐々木正美さん)
児童精神科医、佐々木正美さんの『子どもの心の育て方』(河出書房新社、2016年7月30日初版)が胸に残りました。実践するのは簡単ではないけれど、心に留めておきたい金言の数々がありました。
たとえば「はじめに」のこの言葉。
どうぞ子どもを甘やかすことを決して恐れず厭わず、一生懸命にかわいがって育ててあげてください。いい子にしているときにかわいがるのではなく、どんなときにも愛してあげてください。
子どもは愛されることで、いい子になるのです。
いい子だから愛する、という風に親はなりがちです。これは子育てに限らず人間関係全般に言えるかもしれません。自分にとって都合が良い、快適である人に対して、人は好意を向けがちである。
しかし実際、いい子だから愛するという条件付きの愛は愛でしょうか?著者はここで、むしろ逆であり、愛するからこそ満たされた子はいい子になり得るんだと指摘しています。
これはもちろん、だからと言って「悪い子は愛されていないからだ」という断定として受け取るべきではない。そうではなくて、愛することと(大人にとって)いい子であることの順序関係として、倒錯しないようにする戒めとして胸に刻むべき言葉です。
あるいは、いい子の捉え方に関するこの言葉。
学校で忘れ物をけっしてしないというのは、親から見ても先生から見ても長所でしょう。たしかに忘れ物の少ない子は、注意深く用心深いという長所をもっているといえますが、神経質で臆病で、強い不安感という短所をあわせもっているともいえます。
長所は、大人にとって都合の良い長所として表れやすい。しかし、著者の言うように、「けっして忘れ物はしない」と硬直的になっているとしたら、その子は強い不安感に苛まれ、その長所を維持するために強いストレスを抱えているかもしれない。
長所と短所は裏返しの関係にあるというのは、大人の都合ではなく子どもの内心まで想像を膨らませようという指摘です。
本書は挿絵付きで140ページ程度の小著。でも、このような金言が盛りだくさんです。
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