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「東京に原子力発電所を誘致する」いまこそ観たい『東京原発』(2004年公開、2011年舞台化)反原発(?)映画

※ 重要な大道具・小道具として『東京原発』に登場するMOX燃料の輸送に関連した記述は一つ後の記事『【付記】「東京に原子力発電所を誘致する」東京原発に登場したMOX燃料輸送船・平成ガメラ第1作(1995年公開)に登場したプルトニウム輸送船と巡視船』へ分離しました。


シナリオ 2004年3月号
シナリオ 2004年3月号
シナリオ 2004年3月号

Q 原子力発電所が都市部から離れたところにあるのはなぜですか?

A 原子力発電の建設においては
・広い敷地を確保できること。
海岸または大規模河川沿いに位置することにより大量の冷却水を確保できること。
事故の誘因となる可能性のある地震を考慮し、堅固な岩盤を有すること。
・地元の方々からのご理解。
等が必要であり、それら条件を満たす場所に建設しております。

震災が発生した元日から4週間が経ちましたが、有史以来稀な規模の地震で被災した住宅や水道や道路の復旧作業は捗らないようです。心よりお見舞い申し上げます。

少し前の記事『珠洲原発(計画凍結)と志賀原発』でもふれましたが、原子力発電所で重大事故が発生した原因が自然災害(特に地震)である場合、避難計画等は絵に描いた餅に過ぎない(避難経路や避難予定先も被災し、屋内退避も困難になる)ことが東日本大震災以来、十数年ぶりに露見しました。

念のため書き添えますが、大都市圏へ電気を供給するために建設された福島第一原子力発電所、福島第二原子力発電所、柏崎刈羽原子力発電所や福井県に所在する多数の原子力発電所とは異なり

4原発が集中立地 福井・若狭湾沿岸部の今

元日に震災が発生して以来、度々話題に上る志賀原子力発電所(計画された当初の名称は能登原子力発電所)は北陸電力管内(60Hz)へ電気を供給するために建設されました。

北陸電力の発電設備の推移(箇所数・認可出力)

さて、大きな地震が起きる度に発電所の一覧図を眺めますが、大量の電気を消費する大都市周辺には原子力発電所は存在しません。危険でなければ、東京湾岸や湘南海岸や九十九里浜の地盤の強固な場所にも原子力発電所がありそうなものですが、誰も危ない橋は渡らないようです。

揺れる「原発発祥の地」東海村 村長が反旗

元日以来続くマスメディアの偏向報道(?)や原子力発電に反対する様々なインターネット上の発信を目にして怒り心頭に発していらっしゃる右派の論客の方々も原子力発電所を大都市圏に建設して、送電ロスを削減しながら、電気を地産地消する(排熱も有効活用する)ことは考えていらっしゃらないようです。

週末に、ふと思い出して、『卓球温泉』で知られる山川元(やまかわげん)監督が脚本も担当し、物語の大半が都庁の会議室(のセット)で進行する低予算映画『東京原発』(2004年公開)を久しぶりに観ました。

東日本大震災が発生し福島第一原子力発電所が事故に見舞われて以来、日本中が原子力発電所や放射性廃棄物に詳しくなった結果、公開から20年近くを経た作品の内容には若干甘い部分もありますが、広瀬隆氏、他によって展開された活動のエッセンスを日頃社会問題に関心のない市民にもコメディータッチで届けた歴史的意義の大きい作品です。

お時間があれば、是非、配信サービス等でご覧ください。(また、この映画は東日本大震災が発生した8ヶ月後に劇団むさしの座によって舞台化されました。公演の様子は YouTube で公開されています。)

尚、広瀬隆著『東京に原発を!』と同様に、東京原発の中では新宿中央公園が建設候補地として挙げられています。

なかでも理想的なのは、地下に大きな変電所を持つ"新宿中央公園"である。

東京に原発を!

泉  「だから、どこに建てるかって聞いてるんじゃないの!」
天馬 「そこだよ」
一同 「えっ」
佐伯 「そこと言いますと?」
天馬 「見りゃわかるだろ、新宿中央公園だ」

東京原発

別表第1(第9条関係)

公園の占用料

新宿中央公園変電所 1平方メートルにつき 1か月

   地上露出部分 2,778円
   地下部分   1,389円

東京電力パワーグリッド 新宿変電所



能登半島地震と志賀原発 再稼働リスク検証し直せ 社説

1月29日

地震多発国で原発を動かす危うさを日本社会に改めて突きつけたと言えよう。

能登半島地震に見舞われた石川県にある、北陸電力の志賀原発である。敷地内で震度5強の揺れを記録し、変圧器の破損による油漏れや、使用済み核燃料プールの水漏れをはじめトラブルが相次いだ。

深刻なのは、外部電源の一部喪失だ。1号機、2号機とも長年、運転停止中で、事故には至らなかった。もし原子力規制委員会の審査を終え、再稼働していたら、どうなっていただろう。原子炉の緊急停止といった困難な作業が強いられた恐れがある。万一の際、安全は確保できるのか。リスクの再検証が必要だ。

今回の地震で、原発が立地する志賀町の最大震度は7に達した。敷地内で観測された揺れ(加速度)は想定を一部上回り、防潮壁や港湾施設などではコンクリートの沈下や最大35センチの段差が生じた。使用済み核燃料の冷却などの基本的な安全機能は維持できたとはいえ、高をくくることは許されない。

外部電源の一部喪失の原因となった変圧器の破損は、想定外だったという。なぜ、変圧器を含めた原発施設の全てに、原子炉並みの厳しい耐震基準を設けていないのか。

敷地内外で放射線を監視するモニタリングポストは、一部で測定できなくなった。放射能が漏れたとき、詳しいデータが収集できなくなってしまう。監視システムにも高度な耐震性が求められる。

浮き彫りになったのは、施設の問題に限らない。緊急時の住民避難が、計画通り進まないことが明らかになった。

大量の放射性物質が放出された場合、原発5~30キロ圏内は屋内退避が原則だ。ところが、マグニチュード7・6を記録した震源を中心に広い範囲で家屋が破損した。倒壊すれば家にはいられない。壁などが壊れたら、家の中にいても被曝(ひばく)しかねない。屋内退避は不可能ではないか。

道路の寸断で、想定されている住民避難先の能登町や白山市への移動も、できなくなった。避難の在り方の根本的な見直しは当然である。

事業者には、トラブルや事故発生の際、正確な情報を素早く出すことが求められる。北陸電力は、トラブルを巡る情報を小出しにした上、訂正を繰り返した。例えば油漏れの量。2号機の分を当初は約3500リットルと発表したが、その後、5倍超に訂正した。

2007年、臨界事故の発生を8年間も隠蔽(いんぺい)していたことで強く批判された。体質を変えると誓ったはずだ。なぜ訂正を繰り返す事態に陥ったのか、説明が欠かせない。

避難計画の実効性や情報伝達のあり方など、他の原発にも共通する課題だ。各原発は今回の震災を自分ごとと考え、安全確保策について、点検し続けなければならない。


〈社説〉志賀原発と地震 「想定外」では済まされぬ

2024/01/12

悪条件が重なれば大事故につながっていたのではないか。不安が拭えない。 能登半島地震の震源に近い北陸電力志賀原発(石川県志賀町)である。最大震度7を観測した元日以降、原子力規制委員会は「大きな異常はない」としている。 放射性物質の漏えいなどはないようだ。だが現場では、施設の設計上の想定を上回る加速度の揺れが起きていたほか、外部電源を受けるための変圧器が破損し、油漏れまで起きていた。

志賀原発は1、2号機とも運転停止中で、2号機は再稼働の審査が進む。規制委は表面化した問題を審査に反映させる方針だ。審査は長期化の見通しとなった。 北陸電力は経営改善を狙い再稼働に固執しているが、抱える課題の解決はあまりに難しい。断念も視野に入れるべきだ。

想定を上回る揺れが実際に起きたということは、その想定自体が甘かったことになる。今回は安全上問題はなかったと強調しているが、次もそうとは限らない。 志賀原発では2016年、敷地内の断層について、活断層である可能性が否定できないとする規制委の評価が確定。新規制基準は活断層上の設置を禁じており、再稼働が困難になっていた。

北陸電力はその後も諦めず、活断層ではないとの独自の調査結果を提示。規制委は昨年3月にこれを妥当と判断。再稼働へ進む可能性が出ていたところだった。

今回の地震は、能登半島の北部や沿岸を走るいくつかの活断層が、150キロにもわたって連動して発生したと考えられている。

真下を走る断層に注目するだけでは不十分だ。大きな地震が起きやすい地域に立地し、想定以上の揺れが起きた事実を深刻に受け止めねばならない。

北陸電力は今回、情報発信でも課題を残した。変圧器からの油漏れについて当初、実際の量より大幅に少ない量を発表していた。同社は07年に臨界事故の隠蔽(いんぺい)が発覚し、批判を浴びた経緯もある。事実の正確な発信を欠いていては信用を失うだけだ。

被災地の現状を見ると事故時の避難の難しさも明らかになったと言える。半島という地理的にアクセスの限られた地域で道路が寸断され、多くの集落が孤立状態になった。危険性を知るための放射線監視装置も各地で故障した。 全国ではほかにも、四国電力伊方原発(愛媛県)など半島に位置する原発がある。避難計画の実効性を問い直す必要がある。


(社説)地震と原発 幅広い視点で教訓導け

2024/1/18

能登半島地震は、原子力防災にも多くの課題を突きつけた。電力会社や政府、自治体は幅広い視野で検証し、何が教訓か考える必要がある。

北陸電力志賀原発では、使用済み燃料プールの水がこぼれ、冷却ポンプも一時止まった。外部電源を受ける変圧器が損傷し、油が漏れた。周辺に自治体や国が設けている放射線量の測定設備の一部は、データが送れなくなった。いずれも原因や影響を詳細に調べなければならない。

地震による津波の影響について、北陸電力は当初、敷地内に海水を引き込んでいる水槽の「水位変動は確認できなかった」としていたが、約3メートル上昇していた。変圧器から漏れた油の量も最初の発表の5倍以上だった。相次ぐ訂正に、経済産業省から正確な情報発信を指示された。

慎重になるあまり発表が遅れてはならないが、誤情報は住民に不安を与え、被害の過小評価は重大な結果を招きかねない。他の電力会社も含め、教訓にすべきだろう。

志賀原発は、敷地内の断層の評価をめぐり、2号機の再稼働の審査が長引いている。2016年に有識者会合が「活断層と解釈するのが合理的」と評価したが、北陸電力が反論し、原子力規制委員会が昨年、同社の見解を認めたところだった。

一方、規制委は10日に、今回の地震の知見を収集するよう原子力規制庁に指示した。地震の審査を担当する委員は「いくつかの断層が連動して動いている可能性がある。専門家の研究をフォローし、審査にいかす必要がある」と発言しており、丁寧な分析と検討が求められる。

活断層や地震の連動、揺れの想定や施設への影響など、今回の地震が浮き彫りにした課題は、志賀原発にとどまらず全国の原発に多かれ少なかれ共通する。今回の震源の近くには、かつて珠洲原発の立地も検討されていた。教訓を引き出し、規制や防災に役立てなければならない。

今回の地震では、道路の寸断による半島の孤立も改めて問題になった。四国電力伊方原発や東北電力女川原発なども半島にある。原発事故が起きた場合に、避難や救援を妨げかねない。家屋の激しい損壊状況をみれば、放射線を避けるための屋内避難もできない恐れがある。

規制委は原子力災害対策指針の見直しを検討するというが、緊急対応や避難対策の課題を掘り下げてほしい。

地震大国での原発のリスクが、改めてあらわになった。政府は、原発の活用に前のめりの姿勢を改めるべきだ。


<社説>志賀原発不具合 福島の教訓に背く対応

2024年1月18日

能登半島地震の震源に近い石川県の北陸電力志賀原発(停止中)でトラブルが相次いでいる。

変圧器が破損して外部電源の一部が使えず、油が漏えいした。使用済み燃料プールの冷却ポンプは一時停止し、水があふれ出た。

放射線量の監視装置も一部測定不能となったが、すべて対応済みで安全確保に影響はないとする。

原子力規制委員会は10日の会合で、原発で観測した揺れの加速度が設計上の想定を一部でわずかに上回っていたことに言及した。

北陸電は「暫定的な評価による速報値」として自治体に説明していなかったという。漏えいした油量なども訂正が続き不安が募る。

志賀原発では臨界事故を約8年隠蔽(いんぺい)した過去もある。一連の対応は迅速かつ正確な情報公開を求めた福島事故の教訓に背くものだ。

原発のある志賀町は1日に震度7を観測して津波が発生、死傷者や家屋被害が報告されている。

北陸電は2日に原発で津波の海面変動は観測されなかったと発表し、油漏れはあったものの、外部への放射能の影響もないとした。

だが当初約3500リットルだった2号機の油量は後に2万リットル近くに拡大した。一時あった火災発生の情報も打ち消す混乱ぶりである。

国は北陸電に正確な情報発信を指示したが厳しく対応すべきだ。深刻な事態に陥った場合、道路や通信が寸断された半島での避難は難しく一刻の猶予も許されない。

全電源を失った福島事故を教訓に、各原発は電源多様化を進め、送電鉄塔倒壊などで途絶えても原子炉の冷却は維持できるという。

ただし施設内の変圧器が先に壊れて受電できない状態まで想定していたか。早急な検証が必要だ。

2014年に再稼働を申請した志賀原発2号機の審査は敷地内活断層の有無を巡り長期化していたが、昨年3月に規制委が活断層でないと認めて議論が進んでいた。北海道電力泊原発と似た流れだ。

北陸電は26年1月までの再稼働を目指す。だが今回の地震は従来と違い、複数の海底活断層が関連した可能性も指摘されている。

国内の原発は核燃料を冷やす大量の冷却水確保のため海岸線沿いに位置する。地震大国の日本では想定外の被害は常に起こりうる。

規制委では「研究結果を今後の審査に生かす必要がある」との意見が出たが、他原発も含めて地震の影響を分析し直すべきである。

岸田文雄政権は昨年、原発積極活用に政策転換したが、国民の安全を最優先にして再考する時だ。


社説:能登地震と原発 日本海側の施設点検を

2024年1月19日

改めて各地の原発の地震リスクを精査する必要がある。

最大震度7を観測した能登半島地震で、震源に近い北陸電力志賀原発(石川県志賀町)には強い揺れに加えて高さ3メートルの津波が襲来した。変圧器が一部破損して大量の油漏れが発生、外部電源の一部も使えなくなり、核燃料プールからは水があふれ出た。

揺れが設計時の想定を超えていたことも原子力規制委員会に報告された。放射性物質の漏出はなく、使用可能な外部電源によって安全確保に問題はないとしている。

原子炉が2基ある志賀原発は2011年の東日本大震災以降、長期停止している。北陸電は原発敷地内の断層について「活断層ではない」とする独自の調査結果を原子力規制委員会に示し、2号機の再稼働に向け準備を進めていた。

しかし、今回の地震では、海底活断層も含めた複数の断層が150キロ以上にわたり連動して動いた可能性があるとみられている。

そもそも陸域に比べ海底活断層については、政府の地震調査委も詳細な調査や評価をしてこなかった経緯がある。規制委は「(海底断層について)新知見として審査に取り入れなければならない」と指摘し、志賀原発は評価の見直しが不可欠になった。

山中伸介委員長は「調査や評価には年単位の時間がかかる」とする。日本海側に並ぶすべての原発について、リスク評価を再点検すべきではないか。

東京電力福島第1原発事故を踏まえた原発の新規制基準は、原発内に非常用電源などを整備するよう求めているが、志賀原発では原発内部の変圧器が破損した。「想定外」では済まされない。規制委は今回の地震で得た新知見を他の原発にも適用することを示唆している。厳格に運用してほしい。

北陸電は地震直後、変圧器の破損や冷却プールの水があふれたことを明らかにせず、その後の発表でも訂正を重ねた。

同社は1999年に臨界事故を起こし、その後8年間も伏せていた。情報隠ぺい体質が今も続いていると疑わざるを得ない。

原発事故時の住民避難にも厳しい現実が突きつけられている。

避難計画では、15万人が車で県南部へ避難することになっているが、現実には道路が寸断され、各地の集落は孤立した。多数の家屋倒壊で屋内退避も困難だった。

避難は本当に可能なのか。日本海側の原発に隣接する京都や滋賀にとっても重要な課題である。

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