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視点の自由研究No.029「視点_ハックするという思考」
これまでのコラムでも書いてきたように、映像技術は広く一般的になり民主化されたと思います。そんな世の中で映像のプロとしてどう生きていくのか?今回は、広告映像を職業として、これからいかに次の未来を模索するかのお話です。
「枯れた技術の水平思考」
この言葉は任天堂の技術者横井軍平さんが残された言葉です。一見すると難しい感じにも捉えられますが、その趣旨としては、テクノロジーが発展し世の中にありふれた状態の技術、すなわち枯れた状態を、そのテクノロジーの分野、すなわち縦に見て使うのではなく、世の中を平らに見て他の分野で使うということだそうです。
任天堂はテレビをファミコンという技術で、単なる映像受信機としての機械からユーザーが自ら操作してモニター内で遊ぶ機械へと変えました。まさにこれこそが、その言葉の真髄だと思います。
「映像業界の芳醇」
今の映像業界は冒頭でも書かせて頂いた通り、誰もがスマホですぐに作ることができるほど一般化されたテクノロジーになりました。これまではプロとして専門技術が必要なものがここまで一般化し、まさに枯れた技術となったのが今の世の中と考えることもできると思います。もちろん、映像のプロとして素人では再現できない撮影機材の技術、きめ細やかな演出、見る者をしっかりと意識した編集など、その分野での蓄積された技は、これからも素人にはできない映像を作るためには必要だと思います。しかし、大雑把に言えば映像を作るということだけで考えると、難しくもなく一般的になったと言っても過言ではありません。
まさに技術が熟成され、芳醇を迎えた世界で映像のプロとしてどう立ち回るのか?今、目の前に迫る課題の一つと言えると思います。
「映像のプロとして何ができるのか?」
こうした現状の中で、しかもローカルというニッチな世界でどう立ち回るのか?それこそが冒頭で書かせて頂いた「枯れた技術の水平思考」にあります。私たちが培ってきた技術は、機材のみの力だけでは決して成り立ちません。映像化するまでにどう企画を作っていくのか、映像化していく中で予算をどう使い、どうスタッフィングしていくのか、納期までにどう制作していくのか、何に重きを置いて撮影していくのか、見せたいメッセージをどう編集していくのか、その全てはうまく使えば他でも充分通用する技術だと思います。
プロとして磨かれた技術を、他の世界でどう運用していくのか?今後の私たちの大きな課題です。
「水平にスライドし、他をハックする」
私たちのような企画プロデュース主体の会社は、なおさら水平にスライドすることを今、意識しています。今の言葉で言えば、それはまさに「ハックする」という言葉に集約できると言えます。
自分達が持っている技術、人脈を縦に深ぼってクオリティを上げていくだけではなく、どう横にスライドさせて他のジャンルで生かしていくか、この勝負がいよいよ始まりました。
映像を流すスクリーンはこれからさらに拡大していき、ライブ配信が様々な業種で行われ、映像の捉え方次第では無限の使い方が出てくる、なんとも恐ろしくもあり、そしてワクワクさせてくれる時代になりました。
そんな時代だからこそ、ハックすることで新たな映像の進化を模索できる気がしています。世の中を水平に見て、次はどう展開させていくのか、楽しみでもあり試行錯誤は続きます。
そんな我々の苦悩から何かのきっかけが生まれた時には、ここで皆さんとシェアしていきたいと思います。
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