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1on1は本当に必要か?──「甘やかし」と「成長支援」の境界線
2020年前後くらいから多くの企業で「1on1ミーティング」が導入されるようになりました。
主に部下の成長支援やエンゲージメント向上が目的とされいますが、実際の運用では形骸化し、逆に生産性を低下させるケースも少なくありません。
特に、日本企業では上司が「部下の悩み相談役」や「精神的なケアをする存在」になりがちで、本来のマネジメントから逸脱することが多いです。
上司は「部下のママ」ではなく、ビジネスを前進させる役割を担う存在です。
1on1の問題点と本来あるべき上司と部下の関係について一緒に考えてみましょう。
1. 1on1の目的は何か? 形骸化する日本企業の実態
1on1ミーティングの導入目的は、一般的に以下の3つとされています。
部下の成長支援 – 定期的なフィードバックを通じ、キャリア形成をサポート
エンゲージメント向上 – 部下の意見を聞き、モチベーションを高める
組織の活性化 – 上司と部下の関係を強化し、オープンなコミュニケーションを促す
しかし、日本企業においては、これらの目的が適切に機能していないケースが多く、むしろ、次のような問題が生じています。
1on1が「部下の悩み相談会」になり、業務とは関係ない話ばかりになる
上司が部下のモチベーション管理に時間を割きすぎ、本来の意思決定が遅れる
「傾聴」が強調されるあまり、厳しいフィードバックができず、部下が成長しない
このように、本来は成長支援のためのツールである1on1が、単なる「甘やかしの場」になってしまっているのが現状です。
2. 1on1は不要? 上司が部下のママになってはいけない理由
2-1. 上司の役割は「成果を出すこと」
上司の最も重要な仕事は、 チームとしての成果を最大化することである。
そのためには、個々のメンバーの強みを引き出し、適切な目標を設定し、業務を遂行できる環境を整えることが必要です。
しかし、日本企業における1on1の運用を見ると、 上司が「部下のママ」になり、精神的なケアばかりに時間を割いている ケースが多い。
「最近、仕事が大変そうだけど、大丈夫?」
「プライベートの悩みはない?」
「どんなキャリアを歩みたい?」
もちろん、部下のメンタルケアやキャリア支援は重要だと思います。
しかし、 それは上司の主業務ではありません。
心理的安全性を確保しつつも、ビジネスに貢献するための話し合いを優先すべきではないでしょうか?
2-2. 本来の1on1は「具体的なフィードバックと目標管理の場」である
1on1は「部下の話をひたすら聞く場」ではない。
本来あるべき1on1は、次のような要素を含むべきである。
KPIの進捗確認: 具体的な業務の成果をチェックする
フィードバックの提供: 良かった点と改善すべき点を明確に伝える
課題解決のサポート: 業務上の問題を共有し、解決策を一緒に考える
次のアクションの明確化: 次回までに達成すべき目標を決める
このように、 ビジネスの成果に直結する会話 を中心にすべきであり、単なる「お悩み相談」になってはいけません。
3. 「マイクロマネジメント」と「放置」の間にある理想の関係性
1on1を形骸化させないためには、上司と部下の適切な距離感を保つことが重要ですが、実際に実行するには線引きが難しいと感じる方もいらっしゃるでしょう。
3-1. 「過干渉」になりすぎると部下の成長を阻害する
1on1を頻繁に行いすぎたり、部下の小さな悩みに過度に対応しすぎると、部下は自ら考え、行動する力を失います。
「上司に相談すれば何とかしてくれる」という依存体質が生まれる
自己決定の機会が減り、成長の機会が奪われる
責任感が低下し、「指示待ち社員」が増える
上司の役割は、 部下に適切なフィードバックを与えつつ、自ら考え行動できる環境を作ること であり、「過干渉」は逆効果です。
3-2. 「放置」もダメだが、「自律的に働く環境」を整えることが重要
1on1を全く行わず、部下を放置するのも問題です。
しかし、だからといって 毎週1on1を設定し、強制的に話をする必要はありません。
代わりに、 部下が自律的に働ける環境を整えることが重要です。
目標と役割を明確にする → 1on1で毎回確認するのではなく、最初にしっかり合意を取る
フィードバックを適宜与える → 週1の1on1ではなく、日常業務の中でフィードバックを行う
必要なときに相談できる文化を作る → 定期的な1on1よりも、必要に応じて対話する柔軟性が大事
4. 1on1を効果的にするための新たな考え方
4-1. 1on1を「義務」ではなく「手段」として捉える
1on1はあくまで「手段」であり、「目的」ではありません。
重要なのは、 1on1を通じて部下の成長や業務成果が向上するかどうかです。
全員が週1で1on1を行う必要はない → 必要なタイミングで実施すればよい
会話の質を重視する → 「何を話したか」よりも「どのような行動変化が生まれたか」を評価する
チーム全体の成果を最大化する視点を持つ → 1on1は個人のためではなく、組織のパフォーマンス向上のためにある
4-2. 「コーチング」ではなく「パフォーマンス管理」としての1on1
最近の1on1では「コーチング」の概念が取り入れられることが多い印象を受けます。
しかし、 上司の役割は「コーチ」ではなく「マネージャー」 である。
「部下が自由に話す時間」ではなく、 業務成果を最大化するための議論 を行う
コーチングよりも 具体的なフィードバックと目標管理を重視する
5. まとめ:1on1は不要ではないが、運用方法を見直すべき
1on1を「お悩み相談」ではなく、「フィードバックと目標管理の場」とする
定期実施にこだわらず、必要なタイミングで柔軟に行う
上司は「部下のママ」ではなく、「成長を促すマネージャー」として機能する
1on1は目的ではなく、手段です。
上司が「部下のケア役」ではなく、「成果を最大化する存在」になることで、組織のパフォーマンスをより向上させることができるのではないでしょうか?
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